確信
雪菜を遊園地に誘うことに失敗してから一週間が経った。
・・・そろそろリベンジするか。
最近、ずっと雪菜のことばかり考えている。
遊園地に行ったらどんな顔をしてくれるのか、どんな反応をしてくれるのか、どんな服装で来るのか。
そんな妄想が止まらない。
誰もいない家で1人ニヤニヤしている男がいたら気持ち悪いな・・・
そんな自虐を入れながらスマートフォンを手に取る。
そして慣れた手つきでパスコードを入力し雪菜の連絡先を開く。
そして電話ボタンを押す・・・前に深呼吸をしてから、今度こそ押した。
前と同じように数回のコール音の後に雪菜が電話に出た。
「どうしたの?花登」
前とあまり変わらないセリフで雪菜が話しかけてくる。
「いや、前行けなかった遊園地、今日はどうかなって思ってな」
すました感じで言っているが実際は緊張しまくりだ。
スマートフォンを持っている手はカタカタと震えて手汗が凄い。
「あぁっと、えぇっと、その、本当に申し訳ないんだけどさ、今日も外せない用事があって・・・」
・・・またか?
そんな連続で被ることなんてあるのか?
いや、そんな雪菜を疑うようなことは考えないでおこう。
「そう、か。分かった」
「ほんとに、ほんとにごめん!」
「いや、いいよ。気にしないで」
そう言って電話を切る。
なぜか頭に雪菜と隣合って歩いていたあのイケメンの顔が浮かんだ。
それを振り払うように頭横に振る。
「前買えなかった小説でも買いに行くか」
そう思い立ち、前と同じ服装に着替えて家を出た。
なんだか普段より足取りが重たい。
意味もなくため息が出てしまう。
そして俺の目は釘付けにされた。
雪菜とあのイケメンがまた隣合って歩いていたのだ。
・・・い、いやいや、無いって。そんなこと。
そうは思っても足が勝手に動いて2人をつけるような形になってしまう。
2人は何かを楽しそうに話しながら笑いあっている。
俺と買いに行ったワンピースを雪菜が着ながら笑っている。
それは俺が妄想していた雪菜の姿と重なっていた。
ズン、と鉛のようなものが心に重くのしかかる。
違うはずだ。
2人はなぜか人通りの少ない通路に入っていった。
そんなわけない。
俺もその2人を追って通路に入る。
そんなことあっていいはずがない。
そしてそれを見てしまった。
雪菜と名前も知らないようなイケメンがキスをしていたのだ。
それも絡み合うような熱いキスを。
それを見た瞬間、俺は目の前が真っ白になった。
「え?ゆき、な?なん、で・・・」
理解できない、理解したくない。
1秒でも長くその光景を見ていたくなかった俺は思いきり走り出した。
息が荒れてきた。
息苦しい。
それでも俺は走るのを辞めない。
酸欠気味になってからようやく俺は走るのを辞めた。
そこは川の流れる河川敷だった。
「雪菜・・・なんで、なんでなんだよぉ!」
周りには誰もいない。
その事を確認した俺は大声で叫んだ。
「くそっ!くそっ!」
自然と涙が頬を伝う。
「俺のどこがダメだったんだ!どこが不満だったんだ!」
ダメな点を指摘されたら治していたし、不満点があったのならそれを無くそうと努力した。
なのに雪菜はなんの話し合いもしないで他の男と浮気していた。
辛い、悲しい。
もちろんその感情はある。
だが、今俺が抱いている感情はもっと別のものだった。
どす黒くて醜い。
そんな感情。
憎い、恨めしい、復讐したい。
そんな感情が俺の感情の大半を占めていた。
あのクソ男とクソ女に復讐してやる。
その日から俺は自分でも知りえなかった自分をさらけ出していくことになる。
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