復讐
「す、須羅浜くーん」
「こっちだ」
矢田義に手を挙げてこちらに呼ぶ。
今俺は自分の教室にいる。
昼休みだ。
もう復讐するとしたらこのタイミングしかない。
「えと、来ましたけどどうしたんですか?」
俺は事前にメッセージで昼休みに来てくれと矢田義に頼んでいた。
「ちょっと待ってくれ、多分もう少しで来るから」
「誰か来るんですか?」
矢田義が首を傾げながらそう聞いてきた。
「あぁ、きっと、いや、絶対にあの2人は来る」
2人、と言うのは言わずもがな。
浮気をしていたあの2人である。
復讐すると言っても相手が居ないんじゃ意味が無い。
ならあっちから来てもらえばいい。
「はっなと!」
来た。まずは1人目だ。
もう1人と後数分もすれば・・・
いや、もう大丈夫みたいだ。
「美優莉、こんな所で何してたんだ?」
よし、この2人が揃った。
これから起こることを想像すると自然と口角が上がる。
「須羅浜君?」
「なぁ、雪菜、志摩」
「ん?なんだ?」
「どうしたの?」
俺はわざとらしく大きな声でこう言った。
「お前ら浮気してただろ?」
その瞬間、教室内にいる生徒全員が俺たちに視線を向けた。
「は、はぁ?何言ってんだ?そんなわけないだろ」
「そ、そうだよ!なんでそんなこと言うの?!」
明らかに挙動不審じゃん・・・
「え、なに?あいつら浮気してたの?」
「まじ?キモすぎ」
「須羅浜と矢田義かわいそ」
いい感じだ。
いい感じにあいつらに注目が集まっている。
「ッ!な、なんだってそんなこと言い出したんだ?」
志摩がそう聞いてくる。
確かに俺はこのままだと突拍子もないただの変人だ。
「見たんだよ、お前らが隣合って歩いてるところ」
「そんなの友達だったら普通のことだろ?」
「休日に彼氏の俺になんの連絡も無く?どうなんだよ雪菜」
さっきからずっと黙っている雪菜にそう問う。
「そ、それは・・・あ、そう!忘れてたんだよ!連絡するのを!」
なんだコイツ、こんなにバカだったっけ?
「へぇ?確か俺がお前らを見た日って俺が雪菜を遊園地に誘った日なんだよなぁ」
「!!!」
「その時はどうしても外せない用事があるって断われたの、覚えてないか?」
「そ、そんなの覚えてないよ!」
「ま、お前が覚えてなくても記録は残ってるんだけどな」
そう、スマートフォンの中にあるメッセージアプリ。
その中にはしっかりと会話内容が残っていた。
「・・・」
「いやいや、君の勘違いかもしれないだろ?」
志摩がそんなことを言ってくる。
きっとこいつはこれから俺が何を言おうとこんなふうに誤魔化すのだろう。
だったら切り札を使うまでだ。
「はぁ、そこまで認めないのなら分かったよ」
「わ、分かってくれたか?俺と雪菜はそんな関係じゃないってこと・・・を」
俺は志摩にスマートフォンのディスプレイを突きつけた。
そこには雪菜と志摩がキスをしあっている所が写真として残されていた。
それを見た志摩はみるみるうちに青ざめていった。
「じゃあこれはどうやって言い訳するんだ?」
クラスの全員に聞こえるような声で言う。
そのときにスマートフォンのディスプレイをクラスメイトに何気なく見せる。
それを見た生徒は勝手に広めてくれるだろう。
この2人がクズなんだってことを。
「うわ、キスしてるじゃん」
「結局あの2人が浮気してたの?」
「そうなんじゃね?」
クラスメイトが口々に喋っている。
「・・・」
雪菜がまた黙っている。
黙って居れば終わると思っているその考え方が鬱陶しい。
「おい雪菜。なんとか言えよ」
「ねぇ、花登。もうそんなことよくない?」
は?そんなこと?
「私、前までの花登に飽きてたの。でも最近の花登は変わってかっこよくなった。だったら私はもう浮気する必要なんてないし、ずっと花登の傍にいるよ」
こいつの言っている意味が理解できなかった。
こいつ、浮気を悪いことだと思ってないのか?
気持ち悪い。
素直にそう思った。
「なに、言ってんだよ。もうお前と付き合ってられるわけないだろ」
「え?どうして?」
どうして?どうしてだと?こいつ本当にイカれてやがる。
「俺がお前のことを嫌いだからだよ」
「・・・え?なん、で?嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!私は花登のこと好き!」
「お前の感情なんてどうでもいいんだよ。俺を裏切ったことには変わりないんだから。いや、俺たち、か。なぁ、矢田義」
「え?あ、うん。そうだよ、志摩君。私と別れてください」
いきなり話を振られた矢田義は少し驚いた様子だったが、すぐに志摩に話しかけた。
「はぁ?別に俺は元々お前のことなんて好きじゃなかったしどうでもいい」
「・・・へぇ、志摩君は好きでもない相手に無理やりキスを迫るんですね」
「ッ!お、お前・・・」
「え、志摩、無理やりしようとしたの?」
「無理なんだけど。気持ち悪」
「あいつ元々罰ゲームで告白したらしいぜ?」
「まじ?それで本気で好きになっちゃったのか。好きになられた矢田義が可哀想だな」
どうだ?
居心地悪いだろ?
「ね、ねぇ花登。お願い、私と別れないで」
目尻に涙を浮かべた雪菜が俺に縋ってきた。
鬱陶しい。
「別れないでだと?浮気なんてしたのに?」
「だ、だからそれは!」
「俺に飽きたんだったよな?じゃあもう良いだろ。俺たちはこれで終わりだ。もう二度と話しかけてくるなよ」
キッパリとそう言った。
「い、いや!イヤイヤイヤ!花登!お願い!私、花登のことが本当に大好きなの!別れるなんて耐えられないよ!」
はぁ、うるさいな。
ここで相手をしてしまったら押し切られてしまうかもしれない。
無視だ。
「志摩君。そういうことだから私と別れてください」
「ふ、ふざけんなよ!何勝手に・・・」
「振られて当たり前でしょ」
「あいつ、あんなやつだったんだな」
「見ろよあの顔、真っ赤だぜ?」
いたたまれなくなったのか志摩は教室から飛び出した。
「ねぇ!花登!花登ってば!」
「うるさい。どっか行け」
「う、うぅ」
ようやく諦めたのか雪菜も教室から出ていく。
あぁ、なんて清々しい気分なんだろう。
めちゃくちゃ眠たい時に書いたのでどこかおかしいかも知れません・・・
ついに復讐!
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