電話
家に着いた俺はスマートフォンを取り出した。
そして連絡先から矢田義を探し出し電話をかける。
数回のコール音の後に声が聞こえてきた。
「あ、えっと、須羅浜君?ですか?」
「あぁ、そうだ」
「どうしたんですか?電話なんてしてきて」
「いや、順調かなって思ってな」
やべぇ、俺今矢田義と電話してる・・・
超嬉しい!
「順調、って程ではないんですけど前よりはいい感じになってます!」
「そうか、俺の方は順調だ」
「流石ですね!ちゃんと褒めることを忘れてはいけませんよ?」
「分かってる。お前も姿勢と目線、気をつけろよ」
「はい。もうそんなの余裕ですよ」
電話越しでも伝わる矢田義のドヤ顔を想像して少しだけ笑みが浮かんでしまった。
「でもほんとにびっくりした」
「何がですか?」
「まさか矢田義と一緒の学校だったなんてな」
「本当ですよ!クラスが違ったからと言って今まで気づかないなんてことあるんですね」
「ほんとだよな」
あぁ、こうやって他愛もない話をするのも楽しいな。
やっぱり俺は矢田義のことが好きだ。
「絶対に見返してやろうな」
「はい!」
電話が切れた後も俺は意味もなくスマートフォンのディスプレイを眺めていた。
・・・矢田義ともっと話したかった!
くそ!なんでクラスが違うんだ!
クラスが一緒だったら矢田義のことを眺めておけるのに!
は!ダメだダメだ!
こんな気持ち、絶対に伝えられない。
俺たちはあくまで協力関係にあるだけだ。
それ以上でもそれ以下でもない。
・・・ただ、この関係が終わっても友達でいたいと思うくらいは許して欲しい。
ただ隣で笑い合えるくらいの関係でありたい。
それだけで十分だ。
俺はベッドに横たわりながら浅くため息をついた。
「報われない恋、か」
辛いと言えば辛いが、雪菜に浮気された時程ではない。
まぁ比べるものがおかしい気もするが・・・
大丈夫、そのうちこの気持ちは無くなる。
きっと無くなる。
それから1週間が経った。
そんなある日、矢田義から電話がかかってきた。
「もしもし?どうした?」
「す、須羅浜君・・・」
電話からは少し怯えたような矢田義の声が聞こえてきた。
「なんだ?何かあったのか?」
「・・・」
矢田義は何も言わない。
次第にすすり泣くような声が聞こえてきた。
「わ、私!きょ、今日志摩、志摩君に、そ、その!」
かなり混乱している。
「矢田義、大丈夫。落ち着け。ゆっくりでいいから」
俺は矢田義に落ち着くように促す。
「は、はい。すいません」
「大丈夫だ。自分のペースで話してくれ」
「・・・私、今日志摩君と一緒に帰ってたんです」
相槌をうちながら話を聞く。
「それで、着いてきて欲しいって言われて人気のない所に連れていかれたんです」
おいおいおい、ふざけんなよ?
「そこで私、無理やりキスされそうになって・・・怖くて逃げてしまったんです」
頭に血が上るのを感じる。
今すぐ志摩を殴ってやりたい衝動に駆られる。
これが普通のカップルの恋愛相談のようなものだったら怒ることも無かっただろう。
だが、あいつは浮気した上に矢田義が可愛くなってから急に態度を変えやがった。
そういうのが1番腹が立つ。
「ごめんなさい、私、もっと頑張らないといけないのに・・・」
「いや、もう十分だ。無理やりキスしようとする程にはあいつはお前のことを好きになってる」
だったら後はもう復讐を実行に移すだけだ。
雪菜はもう完全に俺のことが好きだろう。
そう断言できるほどにはベッタリだった。
「よく頑張ってくれたな。矢田義」
「う、うぅぅぅ」
あいつら、絶対に後悔させてやる。
復讐を明日決行する。
ついに決行決定!
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