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暗殺術師の異世界秘録  作者: 五輪亮惟
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いざ大きな都市へ


「あっぶな……っ!!」


 盗賊が持っていたのは、拳銃だった。とは言え最近のハンドガンやリボルバーではなく、大航海時代のフリントロック式。


 放たれた銃弾を奇跡的に回避し、僕とルシェルは飛び込むように左右の木々へ隠れた。その数瞬後、バンバンとした炸裂音が響き、凭れた木の樹皮が割れて飛び散る。


「おいおいおい……っ!? 丁度いい《青魔法》の実験相手になると思ったのに……! この世界に銃があるなんて聞いてないって……っ!」


 どうせルシェルが軽く盗賊たちをひねり、僕が適当に《青魔法》を放って知見を広めるだろうなぁと楽観的に考えていたら、こんなことになってしまった。現実は非情である。


「えー………うぉ!? っぶね」


 ちらっと盗賊たちの姿を見ようとしたら、銃弾が飛んできた。にしても今、よく回避出来たな、僕。絶対に当たるタイミングだったんだけど。この異常な反射神経はなんなんだよ。異世界転生の特典かなにかか? 随分今更感があるんだけど。


「1人が拳銃2丁で、後ろの2人がライフルだな。連射は出来ないっぽくて、精度はバツグンときた。さてどうするか……」


 急募、銃で狙われた時の対応。

 相手が近接武器じゃなくて遠距離武器を持ってるのは初めてだな。対して僕は近距離武器と攻撃力ゼロの《青魔法》。ここは、お隣のルシェルド大先生と協力しないといけない。


 けど、どうやってだ?

 隣にいるとはいえ、連絡手段がないぞ? 聞こえるように喋れば、盗賊達にも筒抜けになるし、スマホなんてあるわけない。身振り手振り、ボディーランゲージでいけるか? 上手く伝わればいいんだけど……。


「オラオラどうした! 大人しく出てこいよガキども!」


 ………よし、反撃手段を練ろう。

 僕は近距離武器しかない。ということは、近づかないと行けない。けどその間に撃たれてしまう。ならどうすればいいか?


 んー………。

 バレずに済めばいいのだから、単純に目眩しってとこか? 相手の視界を奪う方法と言えば、よくあるのが閃光弾。閃光なら、ルシェルの得意分野だな。僕はその間に………なにか、視線を遮られるものを。


(ルシェル……お、目が合った)


 偶然だが目が合った。

 どうやら、彼女も攻撃出来ずにいるらしい。両手には光の塊が存在するが、どうも攻撃する様子はない。


 ってかこれ、伝わるのか? 《白魔法》で光を出して彼らの目を潰してください。これどうやったら伝えられる? 目、めをこうぶすってするジェスチャーで………よし、どうだルシェル!


(おー………困惑顔ですな)


 コミニュケーションに失敗した。

 しゃーない、じゃあ僕だけで奴らの目を遮るか。本当はルシェルの閃光で目を焼き付けてから僕の《青魔法》で視界を遮りたいんだけど、致し方なし。そろそろこの木も倒れてしまいそうだ。


「よし………《青魔法(アグアズド)》」


 右手に展開した魔法陣を、盗賊達に撃たれないように少しだけのぞき込みながら、一瞬の隙をついて発動した。


 イメージしたのは、霧だ。僕らがいるこの極めて小さな空間を、視界が全く見えないほどの濃霧が覆う様子。僕が日本の富士山に登ったとき、遭遇した光景を思い出し、その再現をイメージした。


 瑠璃色の魔法陣から手のひらサイズの水の塊が現れ、ぷよぷよっといった様子で盗賊達の頭上まで登った。そして、パシュッと何かが破裂するような音とともに、モクモクと白い煙が地面に降ってきた。


「っ……《白魔法(ルミナディア)》!」


 と、ここで。

 ルシェルが《白魔法》を放った。次の瞬間、僕らの背後で強烈な光の爆発が巻き起こる。盗賊団の瞳に真っ白な光が移り、彼らの後ろに真っ黒な影が現れた。


「ぐぁぁぁあ!」


(おお………目眩し、やってくれた)


 意思が通じ合ったようでなによりだ。両目を押えて絶叫する3人の盗賊。そしてその姿を真っ白な霧が覆っていく。


(これで、両目に魔力を流したら………よし! ちゃんと見える! やっぱり自分の魔力で作った霧は透けるみたいだ)

 

 そして、両目に魔力を流し込んで強化を施した。するとどうだろうか。視界が僅かに紫色の光を帯び、視覚から得られる情報量が倍増した。モクモクとした霧のせいで全く見えなかった3人が、強調されたように僅かに光りその姿が確認できるようになった。


「まずは、1人……っ!!」


 2丁の銃を持つリーダー格の後ろに控える男の背後から、腕当てを短剣の形にして襲いかかる。


「うぐ───っ!!」


 首元に探検を突き刺し、そのまま地面に引きずり倒す。ちらっと横を見れば、同じく光の剣を握ったルシェルが男の腹に突き刺していた。


(ふぅ………さ、てと。じゃあこのリーダー格の奴には《青魔法》で色々と試してみようかな。まずは………武装解除を)


 《青魔法》を発動し、銃を持つ右手に向ける。そして思い描いたのは、右手と銃に向けて伸びていく触手。ギュッと手首を握るように押し潰し、手から離れたところで回収し僕の手元に戻ってくる。


「よしっ、上手くいったぞ」


 男は未だに《白魔法》の影響があるのか全くの無防備だった。抵抗無しに手首を水の触手で押し潰され、簡単に銃を奪われる。


 バキュンバキュン!

 せめてもの反撃だろうか。あらぬ方向へもう片方の銃を乱射する男。僕はそんな男を尻目に、奪った銃の引き金に指をかける。


(おっ……? いまMPが吸い取られたな。なるほど、この銃は使う人のMPを用いて使うみたいだな。さしずめ魔法銃ってとこか)


 いや、初めて銃を持ったな。

 日本じゃ考えられなかった。いや、というか異世界でも考えられなかったな。まさか銃があるなんて。飛び道具は、精々クロスボウかパチンコが関の山だと思っていた。


 ま、そんなことはいい。

 問題は、今僕の手に銃が握られていて、そして目の前には悪党がいるということだ。これは撃つべきか否か。模範解答としては、捕縛が正解なんだろうが、コイツは僕を殺そうとしたやつだ。やり返してやりたい。


「うーん………《青魔法(アグアズド)》」


 とりあえず、《青魔法》で先程のような触手を作り盗賊の体に巻き付けておいた。これでまともな抵抗はできまい。もう片方の銃も、落としたみたいだ。


「んー、そうだな……」


 撃っちゃっていいのかなぁ。

 この世界の法律に違反してるところは無いだろうか? いやでも、普通に考えて盗賊を返り討ちにしただけで何も悪いことはしていない。となれば、僕がやろうとしていることは悪では無い。


 ………よし、やろう。

 どうせ盗賊だ。罪なき者を殺すわけじゃないし、彼自身も死ぬ覚悟が出来ていたはずだ。ならば殺しても問題あるまい?


「うわ!………っと」


 バガンっ!

 鋭い音と、激しい反動が右腕を襲う。堪えきれずに声が漏れてしまった。銃を持つ腕がぷるぷると震える。そして目の前には、心臓を貫かれて地に伏せた男。すごい威力だな、即死だ。


「よし、剥ぎ取りだ」


 倒れた男3人から金目の物を奪い取る。後ろに控えていた男2人は大層なものは持ってなかったが、リーダー格はネックレスや指輪、あとポケットに宝石が入った袋をもっていた。財布ももちろん、忘れるに回収する。


(これじゃあどっちが盗賊か分かんねえな)


 ま、異世界はこんなもんだろう。奪い奪われ、弱肉強食。強いものか上に行く世界。そんなステレオタイプなイメージが僕にはある。

 それを地で行くスタイルだ。


「これ、仗銃ってやつだよ。初めて見た」


 ルシェルがもう一丁の拳銃を拾い上げて呟く。ほほん、仗銃っていうのか、こいつ。至近距離とはいえ無傷の男を即死させる威力があるし、拝借させて頂こう。


「じゃあ一丁ずつね」


「う、うん………」


 どうやら彼女は、あまり仗銃に乗り気では無いらしい。この世界では良くないイメージがある武器なのかな。だとしてもこの医療があるのは魅力だが。


「さて、ウォールランドまであとどれくらいで着きそう?」


「もうすぐだね。思ったよりペースがよくて、今日中には到着できそうだよ」


 そりゃこの人の歩くペースがかなり速かったからな。後ろを歩くのが大変だった。しかしそうは言っても、そろそろふかふかのベッドでゆっくり休みたいところだ。村を出てからまともに休んでないし、両足がバキバキになってしまっている。


「キミは、ウォールランドに着いたらどうするの?」


「うん? そうだな………まあ、この世界を堪能したいって感じ? 食べ物とか、文化とか、魔法とか。適当にお金を稼ぎつつ、観光ってところ」


 お金に関しては、盗賊から拝借した宝石類や貴金属を売り払ったりして食事代や宿泊費を賄うつもりだ。それから足りなくなれば、薬草とか集めながら生活だ。


「へぇー、いいじゃん。ウォールランドは交易の中継地点として有名だから、世界中の色んなものが置いてあるんだ」


「よく知ってるね。何回か行ったことが?」


「もう何回も行ってるよ。パーティーメンバーが、というかケルストさんのお気に入りの街なんだ」


 なら、もしかして彼ら4人と鉢合わせするかもしれないな。面倒くさいことになる予感しかしないが、まあ僕には関係ないか。


「ふーん。ルシェルはどうするの? もっと大きい都市に行く? それとも、もう冒険者引退?」


「いやぁ、引退は流石にしないよ。けど、わたしも具体的な目標は決めてないんだ。一応、いつかデウス公国に行くつもりではあるんだけど」


 デウス公国?

 どっかで聞いたことある名前だな。どこで聞いたんだっけか…………あぁ、ゲルだ! そうそうゲルが言ってたやつだ。というかその時に魔法学院大学のことも言ってたな。全く覚えてなかった。


「デウス公国って、どこにあるの?」


 僕がそう聞けば、彼女は丁寧に教えてくれた。

 曰く、公国は僕らが暮らす大陸の中心にある湖に浮かぶ大きな島で、島全体がひとつの大きな国家なのだそう。

 そこは世界で最も人が集まり、技術が進み、生活が豊かな国で、王国、帝国、連邦全ての要素を上手く取り込んでいるらしい。名実共に世界の中心としての役割を果たしており、最高法定院や魔法大学、冒険者ギルド本部、連合軍司令本部などがあるらしい。


「なんか凄そうだね」


「わたしも行ったことないからどんな感じなのかわかんないけど、とにかく凄いみたいだよ」


 世界の中心か。

 僕も一度は行ってみたいな。最新の技術なんかも見てみたい。銃があるなら、次はレーザービームかね。それに三国の要素を取り入れた、と言っていた。ならば気になるのが、芸術と料理だ。元いた地球でいうトルコみたいな感じになるのかな。何にせよ非常に楽しみだ。


「……あ、見えてきたよ!」


「おぉ……っ!」


 そうこうしている内に、僕らの目的地が見えてきた。壁に囲まれた土地、ウォールランド。その名前の通り、遠くから見た姿は壁一面だった。


 ってか、なんで壁張ったの?


「世界最大級の軍事要塞だったんだって。それで、理由はわかんないけど難民が押し寄せて、人が住むようになって300年」


 はぁーなるほど、要塞ね。

 確かに言われてみれば要塞だ。ステレオタイプな要塞そっくりだ。これで動いたら百点なんだけどなぁ。流石に動かないか。


「さて、並ぼっか」


「並ぶ? どこに」


「あそこ。入国審査」


 ルシェルが指さした先には、老若男女様々な種族の人々が長蛇の列を形成していた。その先頭では、猫男? みたいな人が鎧を身に付けた衛兵と掴み合いの喧嘩をしている。


 うーん、これは長くなりそうだな。


 評価コメント誤字報告よろしくお願いします。

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