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暗殺術師の異世界秘録  作者: 五輪亮惟
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2度目の邂逅


 ボロ頭巾は両手に携えた光の剣を振りかざし肉薄する。変幻自在の攻撃が僕を襲い、反撃する隙を与えてくれない。恐ろしいほどの精度と密度だ。


「おいおい……!」


 全身に命中しそうな攻撃は銀の盾により受け止め、それ以外は体を捻ったり逸らしたりで回避する。めちゃくちゃ鋭い攻撃だけど、見極められないほどではないな。


 ただ問題は、反撃できないことだ。双剣スタイル、相手にしたことがないのももちろんだが、左右の手からの攻撃がなかなかに苛烈で押されっぱなし。


「攻撃、してこないのかな?」


「ちょって立て込んでてね」


 話しかけてきた目の前のボロ頭巾。思い出したぞ、コイツ隣の村へ行く途中にすれ違った奴だ。あの時は何の武器も持ってなさそうに見えたから魔法タイプだと思ったのに、まさかこんな肉体派だったとは。


(肉体派……? まて、なんでコイツは魔法使いの格好をして、武器も持ってないのに魔法の剣で戦ってるんだ?)


 見た目は、完全な魔法使いだ。使い古したヨレヨレのローブに継ぎ接ぎだらけの大きなフード。完全に顔が隠れており、この姿の上に杖やロッドでも持とうものならステレオタイプの魔法使いそのものだ。


 だけどこいつは、何故か剣を振っている。普通そこは、魔法で炎とか雷とかで攻撃するものじゃないのか? 魔法使いなら。


「随分と変わった魔法使いだね。その姿で肉弾派だとは恐れ入った」


「その奇妙な魔導具もね。初めて見たけど、なかなか便利そうじゃん」


 戦闘中だというのに、のんきに話し合う僕たち。いきなり斬りかかって来る割には、話はできるらしい。


 さあ来るぞ。

 相手が再度構えを取った。スピードは相手が上だけど、対応は出来るから焦らずに行こう。多分この強度の攻撃、当たれば致命傷になる。


「はっ!」


 ボロ頭巾は、両手に握った光剣を振りかぶって思い切り投げつけてきたのだ。迫り来る2本の剣に対し、横にズレると同時に体を捻り何とか回避する。


 姿勢が崩れてしまった。相手がこの隙を逃すとは思えない。近接タイプの相手だから、次にくるのは、格闘か。


「《破城槌》」


「ぐおっ!」


 ボロ頭巾の右腕が一瞬光ったと思ったら、とんでもない威力のパンチが飛び出してきた。今のは魔法なのか? いや、魔法を使うにはカッコイイ横文字を言う必要があったはず。ということは、《才能》か?


 強烈な拳を、腕当てを盾の形にして何とか防御する。しかしその衝撃は防ぎきれず、数メートルほど後ろに飛ばされてしまった。


「《白魔法(ルミナディア)》っ!」


 そして追撃とばかりに、純白の魔法陣から先程と同じような光の塊が、弾丸のように飛び出した。僕の体を貫こうと、正確に発射されたそれを、《縮地》を使って横に後ろに回避する。


「………《暗殺術》」


「ん、なんだ。なんて言った?」


「いや、なんでもない」


 ボソッと何か言葉を発したようだが、聞き取れなかった。しかしアイツは首を振る。なんだなんだ、僕の集中を乱す気か?


「しっかし《白魔法》か。《白魔法》と言えば回復や支援が主な役割だと思ってたけど、まさかこんな使い方があるなんて」


 初めてこの世界に来て、成り行きで遺跡探検をした時。隣にいたルシェルドさんは《白魔法》を主に回復に用いていた。一緒に行動した時間は限りなく短いが、攻撃していたところは見た事がない。つまり、目の前の魔術師は特異なタイプなのか?


「……確かに、わたしもそう思ってたよ」


「………?」


 イマイチ要領を得ない返答だな。何言いたいのか分からないが、まあ誰かに新しい《白魔法》の使い方を教わったのかね。


「《白魔法(ルミナディア)》」


 また来た、純白の弾丸。

 今度は出現した魔法陣が2つだ。先程の倍の射撃を避けながら、反撃の一手を伺う。こちらにも遠距離攻撃があればいいんだけど、そんなものは無い。何とかアイツに近づきたいんだけどな。


「んー………あ、やばっ!」


 段々と射撃の密度が低くなってきた。疲れてきたのかと疑い、突進する準備をしていたところで、左肩に1発貰ってしまった。


「ぐっ………ん? なんだ?」


 当たった瞬間、体の内側にあるナニかが吸い取られるような感覚があった。今のはなんだ? MPかSPが吸い取られたのか? 少なくとも、HPが削られたような感覚はない。


「ぐっ! がっ!」


 銀の盾により弾丸を弾いていたが、立て続けに2発喰らう。しかし、少し痺れたような感覚とともに、吸い取られるような感覚しか残らない。この弾丸は、物理的なダメージは一切ないらしいな。


 とはいえ、このままじゃジリ貧だな。

 避けてばかりじゃ何もならないし、攻撃しないと。一瞬の隙をついて《縮地》で近づき、一太刀浴びせる。


「喰らえ……っ!」


 《縮地》を発動し、弾丸を避けながら剣の間合いまで接近する。そして銀の半剣を小さく振りかぶり、コンパクトに振り抜いた。


「……《黒魔法(グレムディア)》」


 現れたのは漆黒の魔法陣、そして黒い光を放つ剣だった。銀の剣と黒光の剣が交差する。火花のようなものが飛び散り、バチッと鋭い音が響いた。


「ぐ、ぐぐ……っ!」


 こいつ、物凄い腕っ節だ。こちとら銀のパワードアーマーで右腕を強化してるってのに、それを押し返す勢い。見た目は完全に魔法使いなのに、筋肉は教官のそれ以上なのかもしれない。


「《白魔法(ルミナディア)》」


 唐突だった。背中に、光の剣が刺さったのだ。するりと全身から力が抜け、立っているのがやっとになる。まるで全身の筋肉が動きを停めたように、動きたいのに動けない。


「《破城槌》」


「ぐあっ!?」


 そして、強烈な後ろ蹴り。

 全く動けない、受け身すら取れないガラ空きの胴体を貫くような一撃に、僕の体はくの字に折れ曲がり吹き飛ばされる。


「く、うぅぅぅ……っ!!」


 いたい、ガチで痛い。

 あまりの衝撃に一瞬呼吸を失い、全身からものすごい量の汗が吹き出す。脳内でとんでもない警告音が鳴り響くが、僕の両手両足は金縛りにあったように全く動かない。


 遠距離攻撃、あんな使い方があるのか。近接格闘中に背後から一撃。攻撃の気配すら感じ取れなかったし、仮に気付いても対応出来なかっただろう。


「………くっ」


 視界の端で、漆黒の剣を握る人影が動いた。ボロボロのローブとフードを被り、鈍い輝きを放つ剣を握ったその見た目は、まさしく死神そのものだった。本能的に恐怖を覚えるその姿に、僕は無意識に息を呑む。


 こりゃ、死んだな。

 このボロ頭巾がなんで僕を攻撃したのか分からないが、多分殺される。せめて一撃くらいは報いてやりたいが、それも叶いそうにない。


「………ねえ」


 しかし、徐々にだが全身の痺れが落ち着いてきた。まだ手や足の末端は感覚がないが、それでも少しなら何とか動けるかもしれない。いや、まだ我慢だ。この状況じゃ大したダメージは与えられない。


「キミは、例の盗賊の仲間?」


「は、は………? なに……?」


 ん?なんか喋ってるな、コイツ。

 だけど頭がガンガンしてよく聞こえない。もうちょっと大きな声で喋って欲しい。そう伝えたいのだが、口が上手く回らない。


 とはいえは、段々と力が戻ってきた。目の前のコイツが1番近づいた時。多分動きはかなり遅いから、間違いなくその手に持った黒の剣で刺し殺される。けど、それでもパンチかキックは喰らわせてやりたい。


「………ねえ、聞いてる?」


 また1歩、ボロ雑巾が近づく。もう少し、もう少しだ。段々と体の力が湧いてきた。倦怠感のような感じが引いていき、頭の中がクリアになっていく。


「……あの遺跡での出来事、覚えてる?」


「い、せき……? 」


 遺跡って、あの遺跡か?

 この変な銀の腕当てを見つけた遺跡のことか? なんでその事を知ってるんだ? 僕は口に出したことは無いから、あの5人の冒険者の誰かが吹聴して回ったのか?


 というか思い出せないでくれよ。あの裏切られた恐怖は未だにこの胸の中で燻ってるんだ。思い出すと昼も眠れない。夜はよく眠れる。


「おぼえてる、けど……」


「……そっか」


 ……え、なになに。

 ただ思い出させただけ?

 なんだそれ、新手のいじめか? それはちょっと悪質なんじゃないの? 僕の恐怖をほじくり出してそんなに楽しいかね。


 クソ腹立つな。


「その時のこと、なんだけど───」


 力の限り、全力で立ち上がった。すると目の前のフードの奥に隠れた口元が、驚愕に変わる。想定していなかったのか、ぐらっと後方へ体重をかけ後ろに下がろうとした。


 しかし、僕はその隙を逃がさない。

 右足に力を込め、全身全霊で回し蹴りを放った。遠心力により威力が上昇した右足が、ボロ頭巾の頬を捉えた。あまり痛くなかったかもしれないが、ひとまずはこのムカつく野郎に一矢報いてやれた。


「………ふっ」


 もう今の僕に、コイツの攻撃を回避できる力は無い。大人しく倒されようと思い相手を見据えたところで、想定外のことが起こった。


 なんと、ボロ頭巾が地面に倒れたのだ。それも、全く受け身すら取らず、どさっと音が鳴るほど豪快に地に伏せた。そして、さらに驚くことが起こる。


「この人………ルシェルドさんじゃん」


 例の冒険者5人組の1人。

 僕にこの世界のことを色々と教えてくれた人だ。絵本の中から飛び出してきたのかと疑うほどの整った顔立ちに、やや癖が酷い煌めく銀の長髪。見間違うはずもない、ルシェルドさんその人だ。


 ただ1つ、記憶と違うところがあるとすれば、彼女の美しい銀髪のうち、左右にある髪の一束ずつが、《黒魔法》と同じような漆黒に染まっている事だ。光を反射する銀の髪と、全てを吸い込むような漆黒の束。あまりに不自然な2つの対照的な髪色が、酷く似合っていた。


「訳が分からん……」


 一応知り合いのルシェルドさんに後ろから斬り掛かられる。全く訳が分からないな、それともこの女は、誰彼構わず後ろから斬り掛かるような物騒な人間なのか?


 ………やばっ。

 急な立ちくらみにより、ぐたっと尻もちを着いて頭を押さえた。めちゃくちゃズキズキする、痛い。かなり無理が集ったようだ、頭がぐわんぐわんする。

 すると僕の体は、先程の光の剣で貫かれたのを思い出したかのように、急激に全身の力が抜け、気絶するかのように意識を手放した。


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