朝
少し時間が空いたせいか、書こうとしてたことを忘れてしまい、軽い内容になってしまっています……
アビトがミレウスを通して最高神であるシリアに伝言を伝えたその数時間後……
「……朝日が綺麗ね」
ルミアは窓から入ってきた朝日により目が覚めた。
「おはよう」
「おはよう、アビト」
そしてすぐ近くにいたアビトに朝の挨拶をする。
「……顔が赤いが大丈夫か?」
「うっ……」
アビトにそう言われたルルアの顔は真っ赤だった。
「だ、だって、朝起きたら男が近くにいるのよ?恥ずかしいじゃない。なんか、こう、け、けけ……」
「……そうか」
「…」
ルルアは緊張で噛み噛みだった。結婚という単語も一文字目で詰まってしまうほどに。そして二人の間に沈黙が流れる。
「……朝食を食べに行くか」
「そ、そそ、そうね!」
アビトはルルアにこの空気に耐えれないであろうと考え、ルルアに助け舟を出した。そしてルルアはまた噛んだものの、アビトの意見に賛成した。
「お待たせ致しました〜!朝食セットです!」
「ありがとね」
「いえいえ、仕事ですから〜」
二人は部屋から出て一階の食堂に向かい、空いていた席に座り、少ししてから店番をしていた女の子が朝食を持ってきてくれた。
「…」
アビトは慣れた感じで少女にお金を渡している。
「ありがとうございますっ」
「……それにしても、あなたは朝から元気ね〜」
その様子を何とも言えない表情で見ていたルルアはその少女に話しかけた。
「はい!その方が人受けもいいですし、せっかく起きているのなら元気な方がお得な感じがしませんか?」
「うーん……確かに分からなくはないけれど、それを実行できる人は少ないと思うけど……」
少女はそう言ったが、ルルアからすればそれは簡単にはできないことだった。まぁ、ルルア程の実力者になれば、別に当分の間寝なくても大丈夫だが、余裕のあるときには寝るようにしている。
そしてルルアはどちらかと言うと寝起きがあまり良くない方だった。まぁ、だからこそあまり寝ないようにしているのだが……
今日に限っては起きてすぐ目の前にアビトが居たため、一瞬で目が覚めたのだ。
「えぇ、そんなんですか?お父さんもお母さんもそんな風には見えないですけど……」
「それは多分、あなたのご両親がこの仕事に慣れてるからじゃないかな?だいたいの人は朝起きてすぐに目が覚めないから」
「ふむふむ、勉強になりました!」
「う、うーん……それなら良かったけど……」
「はい!それじゃ、お仕事が残っていますので!失礼します!」
「えぇ、頑張ってね」
「はぁい!」
ルルアは思った。若いなぁ、と。
「……どこかの誰かさんは普段、二度寝三度寝はしているからな」
「う、うるさいわね!今日はちゃんと一発で起きたじゃない!」
「それは俺がいたおかげだろ?」
「そ、それは……ううう!」
ルルアはアビトにそう言われるが、全て事実のため何も言い返せなかった。
「そんなことより!早く朝食を食べるわよ!」
「はいはい」
なので、話を変えることにした。そしてアビトはそれに乗ってあげた。
「……そう言えばミルスも朝に弱かったわよね?」
ルルアは朝食を摂りながら先程の話を掘り返す。
「あぁ、修行中も寝起きが悪かった」
「ふ〜ん」
「まぁ、強制的に目が覚めるようにしたがな」
「うわ……ミルス可哀想」
「……お前にもしてやろうか?」
「断固拒否するわ」
ルルアはミルスのことを哀れに思いながら、自分は即座に拒否する。
「……そういえば、アビトってミルスには結構甘いわよね?」
「……その根拠は?」
「え?だってちゃんと教えたことがあるのってミルスだけじゃない?それに他にも色々とミルスには甘い気がするわ」
「……まぁそうだな。その通りだ」
「やっぱり。どうしてミルスにだけは甘いの?他の人にもそうすればいいのに」
ルルアはアビトにそう質問した。
「……面倒」
「うわぁ〜出た〜アビトの悪いところ〜」
「仕方ないだろ?事実なんだから」
「でも、ミルスだけ修行するにしても面倒なのには変わりないんじゃないの?」
ルルアの言う通りだ。面倒だと言いながらもミルスには修行と称して、色んなことを教えているのだから。
「……まぁ、そうだが……」
「なら他の子達にも教えてあげなさいよ」
「……面倒」
「……はぁ……ならどうしてミルスには修行をしてあげてるの?」
「……ミルスは他のやつとは違う、とだけ言っておこうか。あとついでに言うと、お前もだな。他の奴らよりも少し甘めに接しているな」
「え?そ、そうなの?」
ルルアはまさか自分がそんな扱いを受けていたとは思っておらず、アビトのその言葉に驚いた。
「ということは、他の子達と喋る時は今以上に喋ってないの?」
「あぁ。これくらい喋っているのはお前とミルスくらいだな。……あっ、ロシェアもだな」
「ん?ロシェア?ロシェアともよく喋ってるの?」
「あいつはいじりやすいからな」
「うわっ、あなた最低ね」
「よく言う。お前の方がよくロシェアをいじっているだろうに」
「……このパン美味しいわね」
「…」
ルルアはアビトにそう言われた瞬間、何事も無かったかのように朝食の感想を言った。
「…」
「…」
そして無言が続く。
「……分かったわよ!私もロシェアをいじっているのは認めるわよ!」
その空気に耐えれなくなったルルアが折れた。
「……だ、だって……い、いじりやすいし……」
「やはりお前もそう思っていたんじゃねぇか」
「…」
「……まぁ、あいつはそういう位置だからな」
「そ、そうよ!ロシェアはそういう立ち位置なのよ!」
「……一応お前の部下なんだよな?」
「え、えぇ……」
「……最低の主人だな」
「うるさいわね!あなたも同罪よ!同じことしてるんだから!」
ルルアはアビトにそう言い返す。
「いや、俺はあいつの主人じゃねぇし」
「し、知らないわ!でも、やってる事が一緒なんだから!あなたも同罪!」
「…」
アビトは思った。『いや、主人であるお前が部下をいじる方が悪質だろう』と。まぁ、口には出さないが。
「……今、良くないことを思ってない?」
「……気のせいだろ」
「うわぁ、怪しさしか感じないわ」
「…」
そんなたわいもない話をしながら、二人は朝食を食べていった。
「…それで、今日はどうするの?」
朝食を食べ終わった二人は一度部屋に戻り、この後どうするかを話し合っていた。
「俺は別にこれといっては。お前がしたいことをすればいい」
「そう言われてもね……また昨日みたいな事が起きたら嫌だし……」
もちろん、昨日のこととはあの爆発のことだ。
「いや、それなら大丈夫だろう。昨日今日でまた爆発事件が起こるとは思えない」
「あれ?私、今何かが立った気がするのだけど……?」
「……気のせいだろ」
ルルアにそう言われて、アビトはその事に気づいたが、気づいてないことにした。
「うーん、まぁ、もし起きてもアビトがいればどうにかなるし、そうね!今日こそはちゃんとした観光がしたいわね!」
「……分かった。俺はお前の後をついて行くだけだし、好きにすればいい」
「えぇ、そうするわね」
「…」
そして二人は宿屋を後にした。