人間達の常識
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします!
「いらっしゃいませ〜!」
宿に入った瞬間、カウンターにいた10歳ほどの少女がアビトとルミアに向けてそう言った。
「俺とこいつ、それぞれ一部屋ずつで泊まりたいんだが、今は空きがあるか?」
アビトはその少女にそう問いかけた。
「申し訳ございません、今空いてる部屋はひとつしかなくて……お二人は同じ部屋になってしまいますが……」
「…そうか、ルミア、お前は俺と一緒の部屋でもいいか?嫌なら違う宿を探すが?」
「えぇ、別に構わないわよ?」
「分かった。じゃあ、一部屋で、そうだな……2泊で頼む」
「はぁーい!それじゃ、はい、これが部屋の鍵です。あと、この宿には食堂もあるから、そこでご飯を食べるのをおすすめするよー!」
「あぁ、お金は宿を出る時でいいんだな?」
「うん!」
「分かった」
そしてルミアは話が終わったと思い、部屋に向かおうとしたが、アビトが少女にお金を渡しているのを見て、不思議に思った。
「ありがとうございます〜!」
お金を受け取った少女はお礼こそ言うものの、さも当然のようにしていることにルミアはさらに疑問を覚えた。
「ねぇ、どうしてお金を渡したの?お金を払うのは宿を出る時じゃないの?」
部屋についてから、ルミアは先程の疑問をアビトにぶつけた。
「あぁ、あれか…こっちの大陸ではあれが普通なんだ。どんな小さなことでも、それに対してお金を払う。魔族の大陸ではそんなことないもんな」
「そ、そうなのね…こっちの大陸はそれくらい貧乏なの?」
ルミアはどうしてそこまでしてお金を欲しがるのか理由を知りたくなった。
「いや、貧乏じゃないぞ。まぁ、住む家すらないやつもあるにはいるが……ここではお金が全てなんだよ。だから、些細なことでもお金を貰う。まぁ、俺がこの大陸を離れた理由の1つでもあるな」
「そう……アビトが人間をあまり好いてない理由が少し分かった気がするわ…」
「あぁ、これからもっとそれを目の当たりにするだろうな」
アビトはこれから起こりうることを考え…
「はぁ…」
ため息をついた。
「あっ、他にも質問いいかしら?」
「ん?あ、あぁ、構わないぞ?」
「どうして宿を二泊も取ったの?」
「あぁ、それか。理由はこの街を見て回るためだ。今日はほとんど見て回れないし、もし明日にこの街を出るのなら、あまり街を見ることが出来ないからな。それに、お前は人間の街を見に来たんだろ?だからだ」
「つまり、私のためってことね………ありがと」
「…」
「…どうして黙るのよ…恥ずかしいじゃない」
ルミアは先程、チンピラから助けて貰った分も含めて、アビトにお礼を言ったが、返事が返ってこなくて、ついそう言ってしまった。
「…いや、どう返したらいいのか分からなくなってだな……お前からお礼を言われるなんて…」
「ちょっと!それじゃ、まるで私がほとんどお礼を言わないみたいじゃない!」
「いや、事実だろ…」
「うっ…」
ルミアは魔王の娘というプライドからか、あまり人にお礼を言わないのだ。
そんなルミアにお礼を言われたのだ。アビトもルミアにお礼を言われたことがほとんどなかったため、ちゃんとした返答ができなかったのだ。
「あ、あれは…」
「…まぁ、言いにくいのなら気持ちだけで十分だ。そこまで顔を赤らめた状態で言われたら、俺も返答しにくいしな」
「う、うるさいわよ!」
そう言うルミアの顔は未だに真っ赤だった。
「アビト!あれは何かしら!」
「あぁ、あれは教会だな」
「教会?教会ってあの神様を崇めたりするやつ?」
アビトとルミアは街の観光と夕食を食べるため、街を歩いていた。
「そうだ。あっちの大陸では宗教なんてないから、初めて見るかもしれないな」
「えぇ!本でしか見た事なかったけど、本当に存在してたのね……ねぇアビト、アビトが良ければなんだけど…入ってみても…」
「あぁ、別に構わないぞ?というか、なぜ俺に聞く?」
「いや、だって…アビトは神と……」
「ん?そんなことを気にしてたのか?」
「そ、そんなことって言っても…アビトは…」
ルミアはアビトが神のことを毛嫌いしているのを知っているため、教会に入ることをアビトが嫌がるのではと思ったのだ。
「今の俺はお前の護衛だ。お前が行きたいと思ったところに行けばいい。俺はそれを守るだけだ」
「……分かったわ、それじゃ、行かせてもらうわね」
「あぁ」
アビトとルミアは教会の扉を開けた。
「わぁ………綺麗……」
教会の内部は日本と同じような感じだったが、ルミアにとっては初めて見るもので、その光景に見とれていた。
「……」
「……あっ!ごめん!ついつい…」
「いや、別に構わない。俺だって、綺麗な建物だと思うしな」
「そう…よね!」
ルミアは目を輝かせながら、アビトにそう答えた。
「確かあそこでお祈りをするのよね?」
「あぁ」
夕食前ということもあり、人は誰もおらず、幻想的な光景が広がっている。
ルミアはその光景の中心に位置する場所を指さし、そう言った。
「何か祈りたいことでもあるのか?」
「え?い、いえ、そういうことじゃないけど…だって、祈ったところで何か変わるものなの?」
ルミアは素朴な疑問をぶつけた。
「まぁ、そうだよな。祈ったところで、結局どうなるかなんて分からないしな。特にあっちの大陸の考え方は、自力でやっていくことこそに意味があるって感じだからな」
「えぇ、それに、アビトを殺そうとするような神様を信じても何もならないと思ってるしね」
「あぁ、事実何もならない」
「なら、お祈りするまでもないわね。それじゃ、別の場所に行きましょ!」
「分かった」
二人は教会の内部を見ただけで、特に何もせず、街をぶらつき始めた。
「これで大丈夫かしら?」
魔王城をあとにしたミレウスは自分の格好に変なところはないかと何度もチェックしながら街を歩いていた。
まぁ、何度も何度も自分の体を確認しているわけで、それはそれで不審者なのだが……
「にしても、全く情報が掴めませんね……勇者様は一体どこに…」
ミレウスはそんな独り言を呟きながら、街を歩いている。
するとミレウスの方に走ってくる二人の姿が…
「見つけましたよ!急にこんな量のお金を渡してどこかに行っちゃうもんだから…」
「え?あっ!あなた方は!」
「さっきぶりですね。はい、このお金はお返ししますね」
ミレウスに話しかけたのは先程ミレウスにアビトのことを話した子連れの女性だった。
「え?」
「え?じゃありませんよ。少し話したくらいでお金なんて貰えませんよ」
「あっ…そうか…ここは魔族ですもんね……」
ミレウスはここに至って気づいたようだ。この大陸では人間達のようにチップのやり取りをしないことを。
「どうかしましたか?」
「い、いえ!なんでもありませんよ!」
「そうですか、ならいいのですが……」
ミレウスはその事を聞かれなでほっとした。
「それじゃ、お金は受け取りますが、せめて何かお礼をさせてください」
「いえいえ、結構ですよ。私はここにいる人なら知ってて当然のことを言っただけですし」
「そうですか?分かりました。そこまで言うのなら…」
「はい。それで、勇者様は見つかりましたか?」
「い、いえ……魔王城でも聞いたのですが、誰も知らないとのことで…」
「そうですか…まぁ、そのうち見つかりますよ!」
「そうだよ!どうにかなるよ!」
「そう…ですかね……」
ミレウスはアビトを見つけれる気がどんどんしなくなってきていて、女性とその子供にそう言われるが、気は重いままだ。
「はい!だからそんなに落ち込まないでください」
「お気遣いありがとうございます。そうですよね、落ち込んでても仕方ないですよね」
「はい!私たちも応援してますので、勇者様のお話ができたらぜひ私たちにも読ませてくださいね」
「え?あっ、はい!」
「それじゃ、また」
「お姉ちゃん、またねー!」
「色々とありがとうございました」
ミレウスは1度気持ちを切り替えて、アビトをまた探し始めるのであった。
久しぶりに書いたので、前以上に文章がおかしくなってる思いますが、優しい目で見ていただければ…