街に到着
遅くなりました!ごめんなさいっ!
「あら〜バレちゃったかしら〜」
「バレちゃったじゃないですよっ!」
魔王城では戻ってきたミレウスと四天王であるキュリアが先程の部屋で話していた。
「どうして嘘を言ったんですかっ!」
「怪しい人物にそう易々本当のことを話す従者がどこにいるか聞きたいですねぇ〜」
「っ!」
そう言われたミレウスは先程のことを思い出し、何も言えなくなった。
そりゃそうだ。
事前に連絡もなくここに来たのだから。
「…」
「まぁ、嘘を教えたことは悪いと思っているわよ。でもね、勇者がどこにいるかは本当に知らないわ」
「…そう…ですか……それは信じていいのですか?」
「さぁ?どうかしらねぇ〜でも、魔王様に誓って、知らないと言えるわ」
目の前で急にルミアと消えたのだもの。知るはずがない。
「…分かりました。あなたを信じます」
ミレウスは知っていた。魔族が魔王に誓ってなにかを言うことに嘘はないということを。
なので、一度は嘘をつかれたが、今回も信じることにしたのだ。
「では…どの辺りに行ったのかは分かりますか?」
ミレウスは思った。もしかしたら何かを知っているかもしれなかったからだ。
「さぁ?知らないわ」
キュリアはここでも嘘をついた。いや、厳密に言えば嘘ではないのだ。
キュリアはルミアが人間の大陸に行くことを知っている。だが、人間の大陸と言えど広い。それに、もしかしたらまだこの大陸にいるかもしれないからだ。
「……分かりました…」
ミレウスはそれを聞き、自分は本当に勇者様を見つけられるのかと思った。
人間の大陸では死んだと思われていて、こっちの大陸では居たのはいたが、どこにいるかは分からないと言う。
その状況でどうしろと言うのだ。
ミレウスは自分に勇者様を見つけるように言ってきた最高神を少し恨んだ。
「まぁ、もしかしたらほかの魔族が知ってるかもしれないから、聞き込みをしていくことをオススメするわ」
「そう…ですね。はい」
ミレウスもそうせざるを得ないと思っていた。
「そう言えば、あなたは魔王様に会いたいとも言ってませんでしたか?」
「え?あっ、はいっ!」
そう。ミレウスがここにやってきた理由はそれが本命なのだ。
アビトのことを考えすぎて、その事を忘れていたのだ。
「もしかしたら勇者様のことを知っているかと思いまして。魔族とここまで親しい勇者様ですから、魔王様と何か交流があっても不思議ではないかと。」
ミレウスは魔族とアビトが仲が良いことを知り、それならば、ルミアと何らかの交流があってもおかしくない!
そう考え、ここまでやってきたのだ。
事実、アビトとルミアは現在進行形で一緒にいるのだから。
「なるほど。確かに魔王様と勇者様は交流がございますよ」
「本当ですかっ!」
「はい。しかし、先程も言ったように、現在、魔王様がどこにいるのか分からないのですよ」
「あっ…そうでしたね…」
結局、手詰まりだった。
「分かりました…」
「はい。お力になれず申し訳ございません。ですが、私から一つ忠告を」
「はい、何でしょうか?」
「せめてもう少し普通の人に見えるようにした方がよろしいかと」
「え?ど、どうして?」
ミレウスはそう言われて焦った。
もし自分が神だとバレたら凄いことになるのは分かりきってたからだ。
まぁ、キュリアはミレウスが神様であることを知っているのだが…
「いえ、あなたの立ち振る舞いや格好は何かがおかしいのですよ。釣り合っていないというか……簡単に言うと、不審者…危ない人に見えますね」
「っ!?」
「普通、そんな風の人はお城に入ることすらできませんよ?」
「そ、そんなにおかしいですか?」
「はい」
「そ、そうですか…」
ミレウスは神様であることをバレたのかと思ったが、ある意味、それより酷いことを言われたのだが、少しほっとした。
「分かりました。以後気をつけます」
「はい」
何を気をつけるというのか…
キュリアはそう思ったが、あえて口にしないようにした。
「では、そろそろ行きます」
「はい。もし魔王様が戻ってきたら、あなたが魔王様に会いたがっていたということを一応伝えておきます」
「はい、ぜひお願いします!ではっ!」
ミレウスは魔王城を後にした。
「さて、それでは地道に聞き込みを始めましょうか。」
ミレウスは街に繰り出した。
「……そんなに私の格好と振る舞いはおかしいのですかね…?」
そんなことを呟きながら。
「…しっかりと録音は出来ましたか?」
「ん……大丈夫」
「ありがとうございます。しかし、あそこまでオーラがダダ漏れとは……思わずアドバイスをしちゃったわよ……」
「仕方ない……あれは……うん……」
ミレウスが去った魔王城では、キュリアとミルスが話していた。
「あれじゃ、実力者にはすぐに神様ってバレるわよね〜まぁ、人間達じゃ難しいと思うけど〜」
「魔族なら………四天王じゃなくても……強い人なら…分かると思う……」
「そうよね〜まぁ、魔族は人間ほど神に対して信仰が深いわけじゃないし、大丈夫でしょう」
「うん……」
「それよりも……」
「だね……」
キュリアとミリスはルミアがいなくなったために、これから書類の山と向き合わなければならないのだ。
「頑張りましょう…か……」
「……」
キュリアとミルスは重い足取りで自分の部屋に向かった。
「着いたーーー!」
その頃、アビトとルミアは街に到着していた。
「ねぇねぇ、ここの街には何があるの?」
「そうだな……ここは食べ物が色々とあったな」
「へぇ、何か美味しいものもあるかしら?」
ルミアは子供のように、いろんな方向を見ながら歩いている。
「ねぇねぇ!あれはなに?」
「ねぇねぇ!あの人は何してるの?」
「ねぇねえ!」
アビトは少しずつ嫌そうな顔をしていきながらも、ルミアの質問に答えて言った。
そんな感じで歩いていると、ルミアが周りをちゃんと見ていなかったため、人にぶつかってしまった。
「いてぇ!」
「え?あっ、ごめんなさいっ!大丈夫……ですか?」
ルミアは慣れない丁寧語を使った。
「大丈夫じゃねぇよ!あぁ、こりゃ冒険者としてもうやっていけねぇな」
ぶつかった男は大したこともなかったのに、そう嘘をつく。
「い、今のでそんなに……い、いえなんでもないです!今、回復魔法をかけますね」
「え?」
男は驚いた。いくら嘘だったとはいえ、それだけのために回復魔法をかけられるとは思っていなかったのだ。
「どうかしました?」
「お、おう!なんでもねぇぜ!ほら、さっさとしな!」
「はい」
ルミアはそんな男の心情など知らず、その男に回復魔法をかける。
「これで大丈夫なはずです」
「お、おぉ?」
男はさらに驚いた。
実は男には古傷があり、全く治らなかったのだ。しかし、ルミアの回復魔法でその古傷までもが治ったのだ。
が、ここでそれを言ってしまうと、当初の目的であるお金をふんだくることが出来なくなってしまう。
「こ、こりゃぁダメだなぁ〜まだ治っていないなぁ〜」
男は嘘をついた。
「そ、そんなはず……」
「こりゃ慰謝料を貰わないとなぁ〜冒険者として活動できなくなるんだから、それなりの料金になると思うがなぁ〜」
「…」
「お金がないのなら、体で払ってもらうしかねぇがな」
「なっ!」
ルミアがどうしたものかと思っていると、それを眺めていたアビトが…
「嘘をつくな」
そう言った。
「あぁ?なんだてめぇ?」
「そんな嘘をついてお金を稼いで嬉しいか?」
「な、何を…」
「それともなんだ?お前は冒険者としてお金を稼ぐような実力がないのか?」
アビトはその男を挑発していった。
「な、なんだと!」
「まぁ、こんなことしてる時点で、まともなやつじゃないのは確かだがな。事実、少女とぶつかっただけで、冒険者としてやっていけないような怪我をするやつは冒険者に向いてないと、俺は思うがな?」
「っ!」
そりゃそうだ。
一連のやり取りを聞いていた通行人たちもそう思った。
「う、うるせぇ!てめぇは黙ってろ!」
男はそう言い、アビトに殴りかかった。
そしてアビトはあえて、その攻撃を受けた。
「あ、アビトっ!」
ルミアは思わず、そう言ってしまった。
が…
「人を殴れるほどの力があるのなら、冒険者としてもやっていけるよな?」
全くの無傷で、アビトは男にそう言った。
「え?あっ…」
男はそう言われ、自分がしたことによって、嘘だというのが公になってしまったことに気づいた。
「お、覚えてろよ!」
そう言うと男は走ってその場をあとにした。
「……変わらないな…」
「…」
なんとも言えない空気が流れた。
「…行くぞ。ずっとこの場にいても仕方ない」
「わ、分かってるわよ」
ルミアはアビトに助けてもらったお礼を言うのが恥ずかしい気持ちと、少女と言われ、否定したい気持ちと、人間にはあんなやつがいるのかという落胆の気持ちと、色々混ざって、なんと言えばいいか分からなくなっていた。
「とりあえず、宿に向かうぞ。いいな?」
「…うん…」
ルミアはこの気持ちをどうしようかと考えていたが、そんなことはお構い無しに、アビトはルミアの手を引き、宿に向かった。
次は宿に行きます!