重課金しなければ食べられない秘宝グルメ〜すべてが「ガチャ」の浮き島に挑む〜
次回作の候補として考えていた話の一部を、超短編にしてみました。なろうラジオ大賞、応募作品です。
どうぞよろしくお願いします。
空に浮かぶ小さな浮き島、ガーチャリン島。自然豊かなこの島には、一軒の小さな洋食屋がある。
この島には通貨はない。島の住人が働いた給料は、すべてガチャ券で支払われる。買い物をするにも食事をするにも、すべてがガチャの島なのだ。
「ガーチャリン島の洋食屋に行きたいんだ」
浮き島へ向かう飛行船乗り場で、俺はある男に声をかけた。その男は、うんざりしたような顔をするだけで、手でシッシと俺を追い払おうとした。
「金は持っている」
その男は、俺が出した革袋の中身を確認した。俺が冒険者をして貯めた全財産だ。
「すべては運次第だ。この金すべてを失っても、当たるとは限らない」
「わかっている」
「そんなに、あのシチューが食べたいのか」
「あぁ、どうしても食べたい。もう俺には時間がない」
その男は黙って紙袋を、俺の目の前に差し出した。
俺は中身を確かめた。レア以上確定のガチャコインが入っていた。
「島に入ったら、ガチャ玉に交換しろ。運が良ければ、レジェンドレア確定の、虹色のガチャ玉が手に入るかもしれない」
「わかった」
取引は成立した。
俺は飛行船に乗り、ガーチャリン島へと向かった。
島に着くと、交換所でガチャコインをガチャ玉に交換した。10枚のコインで1個の玉が出てくるガチャだった。
だが、無色ばかりだった。
「くそッ、虹色なんてあるのかよ」
「おっさん、地上の人?」
「えっ? あぁ、そうだ」
「レインボーガチャすれば?」
「ん?」
「何かを狙ってるんでしょ?」
「あぁ」
「高価な物を狙うときは、虹色が出なくても無色よりはマシだよ」
「そうなのか」
俺は再び、ガチャに挑んだ。
無色のガチャ玉10個で、1回引ける。様々な色のガチャ玉が出てきたが虹色はなかった。
「ダメか…」
「おっさん、本番はこれからだろ?」
「あぁ、そうだな」
俺は、数個のガチャ玉を見た。これに俺の命がかかっている。
そして、あの洋食屋の食事券が入っているガチャの前へと進んだ。俺の全財産だ…。
「飲食ガチャでよろしいですか?」
「あぁ」
そして、そのときが来た。ガチャを回す手が震えている。
「おめでとうございます!」
高級店の食事券や宿泊券だった。あの洋食屋の食事券は当たらなかった。
俺は……俺の命は…。バタン!
ふと、芳しいシチューの香りで目が覚めた。俺は生きているのか?
目の前には、交換所で会った少年がいた。
「これ、やるよ」
渡されたのは、パンとシチュー。
まさかの、不治の病を治すあのシチューだった。




