埋められた赤ん坊
庭の柿の木を掘り起こすよ。
家の者が言った。
庭の木を全部根元から掘り起こし、庭を
芝生に変えるそうだ。
私は真っ青になった。
やめて・・だってあの柿の木の根元には
私が埋めた赤ん坊の白骨が出てくるはずだから。
そうしたら警察が来るだろう。
調べればすぐに誰が埋めたかわかってしまう。
そうしたら私の罪だとわかってしまう。
捕まってしまう。今の生活が壊れてしまう。
やめてやめてやめて
誰かがもう掘り出してしまっている。
もうダメだ、終わりだ・・。
ここで目が覚めた。
夢だった。汗をかいている。
何故、こんな夢を見たのだろう。
そうだ。
思い出したくないことだから、記憶の奥に埋めていた。
二十歳くらいのこと、飲み会で知り合った男とお酒の
勢いで一夜を共にして、その挙句。
妊娠してしまったのだ。
当然男は逃げてしまい、私は薄暗い路地の奥の病院に
駆け込み、そして・・
あの時私が殺した赤ん坊は、男の子だったのか、女の子
だったのか、生きていれば今いくつになっているのか。
毎日罪の意識もなく生きている私に、思い出せときっと
夢に出てきたのだ。
ごめんなさい。
許してください。
記憶の奥に埋めた私の赤ん坊。
一生後悔する。
それが私の償いだ。