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俺の姉妹は問題あり  作者: とぅるすけ
21/22

22話

こんにちは! 今日もよろしくお願いします!

今回が最終話全話ということで、終わりが近づいてまいりました!

最後までお付き合いよろしくおねがいします!



結局咲矢が目を覚ましたのは夕飯前の6時半ちょうどだった。


「…いたた…って、あれ? ここ…は俺ん家?」


あたりは薄い赤色に照らされ、どこか寂しさを感じさせる


「ん…いい匂い」


次に咲矢が気がついたのは家の中に漂ういい香りだった。

当てるなら姉の夢流が作るキーマカレー。


「夢流姉帰ってきてくれたのか…」


重い体を起こし、部屋を出て行こうとしたその時。


「ん?」


自分の枕元に濡れた布巾が落ちていることに気がつく。


「…?」


立江か夢流が置いてくれたものだろう。

咲矢はそう思ってその布巾を持って下の階に降りる。


「お、おはよう…」


時間的には合わないが、気分的に合っている挨拶をかわしながらリビングに入る。

台所には当たり前のように夢流が夕飯の支度をし、立江はいつも通り度々テレビに視線を送って手元のスマホでゲームをしていた。


「…おはよう。夕飯の支度してるから手伝って」


「うん」


何事もなかったかのように夢流は咲矢を台所に引き入れ、洗い物をするように催促する。


「め…夢流姉?」


「ん?」


「…おかえり」


「…た、ただいま…」


「あのさ、なにが起こったのか夢流姉は覚えてる?」


咲矢の記憶は夢流と喧嘩していた時のものまでしかない。

その後、夢流に負けて気を失ってしまったのか、大勢の不良たちにやられたのか覚えていない。

後者はあり得ないとして、いったい誰が咲矢を気絶させたのだろうか。


「いや? あぁ、そうそう、『学生戦争』のことだけど、もう忘れていいから。私も忘れる」


「え?」


「咲矢のおかげっ」


と言って夢流は咲矢の鼻に洗剤の泡を乗せてきた。


「うわっ」


「ふふっ。運んでくれる?」


「…わかった」


なんだかよくわからないが、夢流の表情が明るいことから言っていることは本当のことらしい。

だとすると、一体なにが合ったのか、ますます知りたくなってくる。

結局その日は詳しくは聞かなかったが、咲矢の心の中は立江と夢流とまたこうして夕食の席に座れる事が嬉しい事でいっぱいだった。


「ねぇねぇ、兄ーにの明日の予定は?」


「明日?」


「放課後、付き合ってほしい場所があるんだけど」


「放課後って…立江…ん? 明日って何日だっけ?」


「8月の10日…だけど」


「…し、しまった…」


「まさかアンタ…」


案の定、三崎 咲矢、夏休みの宿題に一切手をつけておりません。

東峰高校の夏休みには、全校登校日という日が1日だけあり、殆どの生徒がその日までに宿題を終わらせるのを目標に宿題を進めるのだが、その日までにある程度終わっていない生徒、まさしく今の咲矢のことを指すのだが、それらの生徒はその先の夏休み10日間、宿題地獄を余儀なくされる。

ちなみに、咲矢のレベルがマックス、通称・夏の螺旋地獄。


「…あ、明日から精進します」



夕食後、焦りながらも宿題を進めるも健闘虚しく。

咲矢が気がつけば日は登り、朝になっていた。

もはや一周回って眠くない。


「ふわぁ…あ…」


と思いつつも、流石に一睡もなしは体にくるものがある。

だるい体を無理やり動かして下のリビングへ向かう。


「…? あれ?」


「あ、おはよう。咲」


「おはよう、早いね」


リビングには先に起きてきていた夢流がいた。


「まぁ…せめてもの償いだよ…。私がいない間家事をやってくれたんでしょ?」


「まぁね。夢流姉に味では敵わなかったけど」


「そりゃあね。私だって意地があるからね。ていうか一睡もしてないの? 目に下にクマがあるけど」


「うん。でも大分進んだよ」


「そう。…少し寝たら?」


時刻は早朝5時。

学校に行くには早すぎる時間帯。


「…そうさせてもらおうかな…流石にキツイ…」


咲矢はそう言ってソファに横たわり、目を閉じた。


夢。

なんども見た夢。

最近はよく見る。

けど何か違う。

空白がある。

終わってない。

まだ、俺にはやる事がある。

背中を向いて去ってしまう君を追いかけて、追いかけ続けて…。

ずっと追いかけて。やっと追いついた。

なのに俺は…俺は…。


「…く…?」


俺を呼ぶ声がする。


「咲…」


だんだん近く…。


「起きろ!」


直後、咲矢の鼻先にフライパンが落とされる。


「んが!!」


鼻先に走る鈍痛はどこか懐かしく、咲矢の意識を呼び戻した。


「あ、起きた…」


「起きるわ!!」


咲矢はその後、いつもより余裕を持って家を出た。

天気は晴天。雲ひとつない晴空。

だが、そのせいで日光は直接大地を焼いている。


「暑いな…」


空からの熱と、それを帯びた地面からの熱で、自然の電子レンジが出来上がっている道を一人で歩く。

咲矢のすべき事、最後のケリをつけなければならない相手がいる。遅くなってすまないと、優柔不断でごめんと、謝りたい人がいる。

そして咲矢自身の思いも伝えたい。


学校につくなり、咲矢は巴を探しに廊下をうろつく。

巴のクラスは隣なので、とりあえず覗いてみるも、クラス内に巴がいる気配はしない。

次に当たるのは柔剣道場。

剣道部は毎朝欠かさずに朝練をしている部活なので真面目な巴はかなりの確率でいるはずだ。

7月の下旬から顔すら見ていないので、会えると思った咲矢の心は若干浮かれ気味だ。


「あ、あの」


咲矢は近くを通り過ぎようとした剣道部員に声をかける。


「はい! って、咲矢先輩?」


「その声は…小雨さん?」


面をつけていたので気がつかなかったが、声には聞き覚えがあった。

小雨は面を取って「すみません、一度持っててくれますか?」と言って咲矢に一度、渡してくる。

すると小雨はタオルを取り出して汗を拭いた。


「すみません。ありがとうございます。汗臭いと思って」


「き…」


「気にならない」といいかけたが、中々の変態発言だったのでそっとしまい込む。

後輩にセクハラしたりづれば、『学生戦争』以上の話題になってしまう。


「き?」


「いや、なんでもない。別に大丈夫だよ」


「え、あ、はい。どうしたんですか? こんな朝早くに」


変な気を遣っていて本題を忘れかけていた。


「あぁ、そうそう。巴いる?」


「え、あぁ先輩は今日来てませんよ?」


「え?」


「サボるからそのつもりでって言われて。初めてのことなので私も少し動揺しましたけど」


巴が部活をサボる…。

このことには小雨も困惑した表情だった。

明らかに様子がおかしい。まだ勘違いの段階かもしれないが、避けられているかもしれない。


「そ、そうか。ありがとう」


結局、午前だけの時間で巴に会う事は出来ず、あっという間に放課後になってしまった。

いる気配はあるのに視界に納めることさえできない。

巴には忍者スキルでもあるのだろうか。

巴にこそ会えなかったが、咲矢の目的はもう一つある。

もう一人、決着をつけなければならない相手がいる。


「はぁ…」


「おーい。咲矢ぁ」


「あー?」


咲矢が帰ろうと靴を履いた時、馴染みの声に呼び止められる。


「なんだ新屋か」


「おっす。なんだよー。挨拶もしないで帰ろうとしやがって」


「…この前はありがとうな。姉と妹両方とも仲直りできたよ」


「そっか。それはよかった」


咲矢は靴を履き替え、新屋と一緒に昇降口から出てバス停へ向かう。


「今日、巴みたか?」


「いーや? 見てないけど? どうかしたのか?」


「休みかな?」


「いや、いるって言ってたぞ? 俺の友達は」


「まじか。避けられてんな」


バスに乗り、小田原駅へ出発した。

バスに揺られる車内には、咲矢と同じ高校の制服を着た生徒に加え、一般人も混じっていて少し混み合っている。

学生は一般客がいる事に気づいているのかいないのか、車内は程よくざわついていた。


「なぁ、新屋」


「ん?」


決着をつけなければならない相手、それは今、咲矢の隣に座っている高校唯一の男友達。

新屋 斗真だ。

彼は勝手な思い込みでなければ、巴に好意を寄せている。


「夏休みは満喫したかい?」


咲矢は普段通り他愛のない話から切り出す。


「俺に聞くかね…。まぁ、普通だよ、言っておくが満喫はしてない」


皮肉っぽく新屋は咲矢の肩を叩く。


「そうか、なんかすまないな」


「ほんとだぜ。海には行ったけどな」


「なんだ。割と遊んでるんだ」


「ほんとそれだけだけどな。お前こそ、何もしてないのか? 姉妹関係以外のこと」


「あぁ、何もしてない宿題すらも」


「おい」


「まぁ、あと少しの夏休みを自分なりに過ごすさ」


「そっか、宿題はやれよ?」


このままトントン拍子で会話を続けていても拉致があかない。

咲矢は半ば強引に話を切り出す。


「はいよ。…それより俺さ、お前に言えてないことあったわ」


「なんだよ改まって」


「…協力してくれてありがとう。それと、俺やっぱ巴のことが好きだ」


「…! …」


新屋に伝えたいことをそのまま伝えた。


「悪い隠してて」


「そっか、やっぱりか!」


新屋は一瞬表情を曇らせるも、すぐにまたいつもの目障りなほど明るい笑顔を向けてくる。

それに対して咲矢は面をくらってしまい、おそらく間抜けな顔をしているだろう。


「やっぱり?」


「隠せてねえよ」


「え?」


「神野さんが横通ると必ず振り向くし、神野さんの話題になると耳をよく立たせるし、何より神野さんといるお前はすごく楽しそうだ。以上が証拠」


まるで数学の証明のように根拠を突きつけてくる新屋。

どこか楽しそうだ。


「…お前、俺のストーカーか何かか?」


「友達だ」


「いやストーカーレベルだろ」


「いやでも目に入るっつーの」


「まじか…。なんか恥ずかしいな」


「…」


「…」


しばらくの間、沈黙が続いた。


『次は終点小田原駅、ご乗車の皆様、本日も箱根登山バスをご利用いただき誠にありがとうございます』


やがてバスは停車し、前にいた乗客が次々と降りていく。


「…そっか、咲矢は神野さんが好きかぁ…」


「…」


咲矢と新屋は結局、最後の乗客となった。


「まぁ、頑張れや」


「わかった。夏休み中には終わらせる」


「いや宿題もそうだけど」


「わかってる」


「ぷっ、くははっ…」


「ふふっ、はははっ…」


自然と笑いがこみ上げてきた。おかしくて、嬉しくて…。

新屋と出会って本当に良かったと思う。


二人は駅の中で別れ、それぞれの帰路に着いた。

咲矢は新屋が見えなくなってから小田急線のホームに向かい、ちょうど出発しそうだった電車に乗る。


「…」


車内は座っても空きがあるほどに空いており、バスとは違って静けさがあった。

足柄駅を過ぎ、ちょっとした谷を抜け、薄い緑色が特徴的の鉄道橋を通り、電車は螢田駅にたどり着く。

螢田駅で下車し、自分の家へ向かう。

3分ほど歩いた頃、前方に見覚えのある後ろ姿を見かける。

いつかと同じように提げたトートバッグからネギが飛び出していて、それを重そうに持っていた。


「…お、楓ー」


思わず声をかけてしまったが、その時にふと記憶が甦る。

理由はわかるようでわからないのだが、咲矢に少し冷たく当たって来るのだ。

無視を覚悟で後ろから駆け寄る。


「楓?」


「…さ、咲矢お兄ちゃん…?」


「あ、咲矢だー!」


咲矢は別の小学生達の声が聞こえ、そちらに目線を送る。

数人の夏休み満喫といった感じの男子児童が咲矢の周りを駆け回って騒いだ後にそのまま鬼ごっこの続きをして咲矢から離れていく。


「気をつけろよー。ったく元気だねぇ」


「…?」


楓は怪しげな顔をして咲矢を見上げる。


「あ、悪い。重そうだね、持とうか?」


「……お、お願いします」


楓は咲矢の予想を裏切って素直にお願いしてきた。

今までの冷たい対応は楓の気分だったのだろうか。

だとしたら安心なのだが、巴のことで、何か話したがっているようにも見える。

そう見えるのは別に、咲矢が鋭いからとかではない、いつも素直な心がうるさいほど伝えてくるのだ。話したいと。


「お、今日は素直だね」


「咲矢お兄ちゃん?」


咲矢は楓から荷物を受け取ると、歩き出した。


「ん? どうした?」


「お姉ちゃんの事、どうでもいいんですか?」


「……」


案の定、楓は咲矢が予想していた話を切り出した。

巴が一番信頼している相手に話さないわけがない。

楓の表情は半ば怒っているようにも見える。否、怒っている。


「俺は…」


ごまかしは効く。相手は楓だ。あのちょろ可愛い楓だ。

だけど、咲矢の気持ちはそんな小細工をする気分ではなかった。

もうこれ以上、巴への気持ちに邪念を混ぜたくない。

正直になって、まずは楓と、向き合う。それが、咲矢にとっての第一歩だと、咲矢は思った。


「巴の気持ちに答えたい。俺にその資格はあるのか?」


「いいえ、ありません! 私は怒っています」


「…」


始めてみせる楓の怒りをむき出しにした表情。


「咲矢お兄ちゃんは私には分からない事情を言い訳にしてお姉ちゃんから逃げていただけです!」


「!!」


鋭い。


「…俺は…」


「咲矢お兄ちゃんは何が言いたいのかわかりません! 話してくれないから! 逃げないでくださいよ!」


少しの間、夏の乾いた風が咲矢にぶつかる。

道路の脇で、年下の女の子に説教を受ける恥ずかしさ。そんなものよりも咲矢の心は衝撃を受けていた。

核心を何度も突かれ、反論も出来ない。

楓の言っていることは正しい。

咲矢は巴から言い訳を作り続けて逃げてきた。何度も。

ついには自身の覚悟の無さから、真正面からぶつかって来てくれた巴からも逃げた。

どうしようもないくらいに自分が情けない。

なんと言い訳ができただろう。


「俺は…巴にどうしても言いたいことがある」


「…咲矢お兄ちゃん…」


咲矢は膝を地面についた。


「頼む…巴に合わせてくれ…」


いわゆる土下座というやつだ。生まれて初めてやった。

しかも年下の女の子。


「え!? あ、ちょっ! 咲矢お兄ちゃん!?」


「頼む…この通りだ…」


楓は困惑の表情を隠しはしなかったが、無理もない反応だ。

急な土下座なんて大人でも困惑する。


「あ、え? ちょっ!? あわわ…」


楓が周りの目線を気にし始めた。流石に可哀想だ。

だが、やめるわけには行かない。


「…」


「…」


「…っはぁー!! …わかりました!! 咲矢お兄ちゃんには負けました! …だから顔をあげて下さい」


咲矢はゆっくり顔をあげる。

楓は羞恥に顔を赤らめてバツの悪そうな顔をしていた。


「…楓…?」


「そこまでするなら、本人に直接言ってあげて下さい。私ができるのはここまでです」


「…ははっ」


「な、何笑ってるんですかぁ…」


年下の女の子に説教された事、そして楓が見せた表情が成長を感じさせ、なぜか笑いがこみ上げた。


「なんか、成長してたんだなって」


咲矢は立ち上がって楓の頭を撫でた。


「むぅー…! 何ですかぁー」


楓は頰を膨らませるが、表情は先ほどの比べると緩くなり、笑顔が戻った。


「ありがとうな…楓」


「うん! …巴お姉ちゃんなら学校にいます」


「帰ってないのか…」


「はい。行ってあげてください」



22話を読んでいただきありがとうございます!

次回で最終回となりますので最後までお付き合いください!

よろしければブクマや評価、感想を書いていただけるとモチベが上がります!

よろしくお願いします!

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