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俺の姉妹は問題あり  作者: とぅるすけ
2/22

2話

こんばんは。

最近、ワープロの速度部門で一気に急成長を遂げました。多分こうやって文字を打ち続けていることにあるかもです笑笑


今日もお付き合い頂けたら幸いです。



夢を見た。

自分の妹がただひたすらに泣いているのに何もできない兄の姿を見ている夢。

悔しくて、情けなくて、どこか切ない。

悩みを聞き入れ、力になりたかった。



朝、珍しく咲矢を起こしたのは鼻を強打する痛みではなく何かが体まとわりつくような違和感だった。


「ん…?」


何か柔らかい物。

それと自分とは異なる人の香り。


「なんだ…これ」


目の前でゆらゆら揺れている銀色の一本のアホ毛。


「んー…」


「り、立江? な、なんでここに…?」


「さくぅぅーー?」


「…はぁっ!!??」


その時、背後からおぞましい声音で威圧をかけてくる人物の存在に気がつく。


「め、夢流姉…? こ、これは」


その朝、夢流は咲矢を起こすのと、別の意味でフライパンを振った。




「ううぅぅぅ…。痛いーー」


脳天を抑えている立江は涙目で嘆く。


「……」


咲矢も脳天を抑えて、そんな立江の姿を

見ていた。

壁一枚の向こうの台所にいる夢流はご立腹な様子で、先ほどからずっと黙り込んでいる。


立江と夢流はお互いがお互いで、咲矢に告白したことを知っているのか定かではないが、立江の素の反応を見て、おそらく知らないのだろう。

だとすると、朝の夢流の暴力は単なるヤキモチ。

立江の夜の行動は単なる求愛行動だろう。

間違っても咲矢を取り合って喧嘩しているわけではないようだ


「はぁ…」


なんだか朝から理不尽な事態に巻き込まれている咲矢はとても深いため息を吐く。


「兄ーに?」


「ん?」


「姉ーね、なんで怒ってるの?」


自分の胸に聞いてください。

と、言いたくなるが、ここは抑えて、


「さ、さあ?」


と、適当に流しておく。

その時、「バンッ」と、強く朝のサラダがテーブルの真ん中に置かれる。


「っ!!」


「…」


そのまま無言で席につく夢流。


なんだかこの空気はやだな…。


咲矢は昔の経験以来ケンカは嫌いだ。特に家族ケンカは、嫌い中の嫌い。


朝食を終え、いつもの手順で朝支度を済ませていく。

その際も夢流は一言も喋らなかった。

咲矢も自分の仕事を済ませ、いつもなら出る時間になる。

だが、咲矢はカバンを持たずに、台所へ向かった。

そこには朝食で使った食器を洗っている夢流の姿が。


「手伝うよ」


「っ? さく? 何やって…遅れちゃうよ?」


「それは夢流姉も一緒でしょ?」


「…」


「それに二人やれば早く終わるし。…それと、朝のやつは立江が勝手に潜り込んできただけだよ」


「そう、別に何も思ってないけど」


「そう? 俺にはヤキモチ妬いてるようにしか見えなかったけど?」


「なっ!?」


夢流の顔が一瞬で赤くなる。

どうやら図星だったようだ。わかりやすい。


「や、妬いてない! 妹相手に!」


今更遅すぎる弁解。

必死になってブツブツ言い訳をしている夢流はどこか可愛い。


「そんなに俺のこと好きかよ…あ」


咲矢は調子に乗りすぎて禁句に近い言葉を発してしまう。


「…」


…この発言は今はダメだったか…。


「…うん…。そう…だよ…。だから返事は?」


弱々しくはあるが、信念がこもった瞳で咲矢を見つめている。


「っ!」


…しまった…。こうなればこのまま押し切られそうだ。


それだけはさせない……。


「?」


「さ、さぁ、洗い物終わったし、出よう! 俺、先に外にいるから」


咲矢には逃げることしかできなかった。

だが、機嫌を取るというノルマは達成することができた。


その朝は夢流と一緒に登校した。予想してはいたが、割と遅刻ギリギリで、門の前にいた先生に丸い目をされてしまった。



「はあぁーー」


自分の机に座った時、気が抜けてしまい、とてもでかいため息が出てしまい、クラス内が静まり返る。

流石は三崎。ため息だけで大人数を黙らせてしまう。


「…」


だが、そんな静寂を物ともせずに新屋は近寄って来て丸くなった背中に肘を置いてくる。


「どうしたー? 遅刻ギリギリじゃん」


「ちょっとな、姉とトラブってな」


「お前の姉さんって、あぁ、三崎 夢流さんか、三年の…」


「しってんのか?」


「知ってるも何も、超美人で有名人だぞ? 姉さん」


「気安く姉さんと呼ぶな。夢流様と呼べ」


「なんでだよ」


なんだか、初めて知った夢流の周りからの印象。何か使えるかもしれないと、とりあえずマネージャーみたいな位置に着こうとする咲矢。


「で? なにをケンカしたんだ?」


「くだらないことだよ。話すことでもない。特にお前には」


「そうかい。…でさ、話変わるけど、神野さんって彼氏いないのかな」


「俺が知るわけないだろ…」


たしかに、巴のことが好きなのは良い。これは俺のことだ。

だが、巴はどうなのだろうか、すでに交際している人物がいる可能性は捨てきれない。



『あっ、咲矢、この人紹介するね? 私の彼、ジョニーよ』


『ハーイ、ジョニーデス』


『…ノ…No,destiny!!!!』


『…き…崎』


「三崎、起きろ、テスト近いんだから授業くらいは聞いとけよ」


「え、あ、はい」


どうやら寝てしまていたらしい。

英語教員はそう言って咲矢の横を通り過ぎていく。


「はぁ」


ついには居眠りをしてしまった。

これはいよいよまずい。

勉強に気が入らない。


その時、さらなる雑念が咲矢の頭を過ぎる。


そーいえや、なんで新屋はあんなこと聞いて来たんだ…?


気になる。



その後、放課後まで人気者の新屋と話すタイミングを見つけられず、一人で帰路に着いた。


「まさか、ね…?」


可能性としては新屋も巴に気がある…のだろうか。


「んーー」


「さーくや」


その時、咲矢の後頭部に軽い衝撃が走る。


「ん? なんだ巴か…」


「何だとは何よ」


「なんか用か?」


危ねぇ…。考え事してる時に来るんじゃねぇよ。


「いや? 別に、寂しそうだから一緒に帰ってあげようかなって」


「別に良いよ」


「なんだよ素っ気ないなぁ。一緒に帰りたいくせにーホラホラ!」


肘で突いてくる巴。


「うぜぇうぜぇ」


そんなことを言っても巴は何も言わずに咲矢の後をついてくるので、とある質問をぶつけてみる。


「なぁ、お前、新屋 斗真って知ってるか? 俺と同じクラスの」


「え、あぁ、知ってるよ? 割と有名だよね顔は見たことないけど…。特に女子にウケが良いよ」


巴は「それがどうした?」と言いながら右側に躍り出る。


「いや、なんとなくだ。数少ない友達だからな」


「ってことはあの毎朝話してるイケメン君が新屋君なんだ」


「どうかしたか?」


「別にー? 何でもない」


ノリがうざいとは言え、咲矢にとっては割と至福の時間でもある巴との帰り道。


だが、その時間はあっという間に終わってしまう。

家の前、巴は咲矢を引き止めた。


「そうそう、今日はよろしくね」


「え、あぁ、今日か…」


巴はそれだけを言い残して、立派な門を潜って家へと帰ってしまった。


咲矢もお隣の豪邸のせいで見劣りする我が家に帰り、制服を脱いでジャージ姿になる。

どうやらまだ誰も帰ってはいないようで、家の中は静かだった。

だが、その静寂は一つのインターホンで破られた。


「来た来た」


玄関を開けると、そこには赤いランドセルを背負った可愛らしい女の子が立っていた。


「こんにちは! 咲矢お兄ちゃん!」


元気いっぱいな挨拶をしてくれた彼女は神野 楓。

言わずもがな巴の妹だ。


「うっす、楓。上がりな?」


「はい! お邪魔します」


淡い夜色の髪の毛の小学四年生。咲矢は楓のことを心の中で天使と呼んでいる。

天真爛漫な性格で、曲がった事が嫌い。

だが、勉強が少し苦手で、彼女の母親から楓の勉強を見てくれと、無償アルバイトを頼まれているのだ。

巴の言っていた「よろしく」というのは、楓に勉強を教えるという事。


そんな事関係なしに、楓はマジで可愛い。尊い。ずっと一緒にいたい!


「さて、楓? テストどうだった?」


「へ、へ? いきなりそれですか!?」


「うん、早く見せて」


「んえぇ…」


「ほら、もう早く見せて」


「恥ずかしいですよぉ」


「いいから早く」


若干、無理矢理気味に、楓のランドセルから一枚のプリントを引っ張り出す。

咲矢は気づいていないかもしれないが、側から見れば咲矢はいつ通報されてもおかしくない接し方をしている。


「60点…か」


「うぅ…」


算数のテストで、赤いペケ印が少々。


「言い訳は?」


「無いです」


「まぁ、回答を見る限り、ケアレスミスが多いかな…。練習あるのみだね」


楓はそう言われると少し落ち込んで様子でノートと教科書を机の上に広げる。


「元気だしな? 次がんばろ?」


「むー…」


それでも落ち込んでいる楓に対して咲矢はとある作戦に出る。


「いよーし、楓が今日のお勉強を頑張ったらピザを作ってあげようかなー(冷凍だけど)」


「え!? ほんとですか!? やったーー! 私、頑張ります!」


立ち直った。一瞬で。


本当に、楓はちょろ可愛いな。


3時間ほど楓は集中して勉強に勤しむと、疲れたと言わんばかりに伸びをして体制を逸らす。


「おつかれ、すごい集中力だったね」


「えへへ、咲矢お兄ちゃんが優しく教えてくれるから捗りました!」


「んーマッサージしてあげようか?」


「あ、お願いしてもいいですか?」


咲矢は楓の後ろに回って肩に両手をかける。

楓は少し擽ったそうに肩をすくめるが、揉み始めたら力を抜いてふにゃあっとなってしまった。


「うにゃぁー…気持ちいいです…」


「よかったよかった。痛かったら言ってくれよ?」


「ふぁい…んーちょっと痛いかもです」


「この位?」


「んにゃぁ…気持ちいいです」


楓はすごく気持ちいいと言った感じで脱力している。

咲矢はそのまま調子に乗って楓の全身をマッサージを始めて、楓を満足させた。


その後、楓は全身気持ち良くなったところで居眠りを始めてしまったが、今日はいつもより頑張っていたので目を瞑ることにした咲矢。


気づけば時刻は午後8時を過ぎ、いつもなら楓の母親が夜勤でなければ迎えにくる時刻なのだが、今日はいつもより遅いようだ。

楓の母親もそうだが、いつもより帰りが遅い人物がおり、咲矢は不審に思っていた。


「帰ってこないな…」


姉妹の帰りがいつもより遅い。遅すぎる。


そんなことを考えている間に、家のインターホンが響く。


「はーい、あ、翔さん」


「こんばんは咲矢」


玄関を開けるとそこには、黒髪ロングのいかにも大人、という容姿の綺麗な女性が立っていた。

彼女こそが、神野 翔。巴と楓の母親だ。


「今日は遅いんですね」


「うん、ごめんね、忙しくて。で、楓は?」


「今リビングで寝てます…。頑張ってましたよ」


「そう、良かった」


翔は楓を背中に回収すると、「ありがとうね」とだけ言って、静かに帰ってしまった。


「にしても。遅いな」


時刻は8時に迫っていた。

咲矢はスマホを取り出し、メッセージアプリで立江と夢流に「いつ帰ってくんの?」と文字を打ち込む。

すると、夢流の方は数秒で「今帰ってる」と返信が返ってくる。


「そうかい」


少しでも、姉妹の帰りが遅いと咲矢は昔のことを思い出してしまい、なんとも落ち着かなくなってしまう。

2年前、まだ咲矢が高校に入る前の受験という大切な時期。

夢流は喧嘩に明け暮れ、朝に帰ってくるのは毎日の事だった。

それも心配なのだが、それよりも一番、咲矢が冷や汗をかいた出来事が、立江の拉致事件だ。

別に警察が出動するほどの騒ぎでは無かったが、夢流と間違われて立江が絡まれてしまい、大変な騒ぎになってしまったことを咲矢はよく覚えている。

それも夢流が一人で解決してしまったのだが。


「大丈夫かな」


それから、夢流は十分足らずで帰ってきた。

叱ろうとは思ったが、そんなに許容範囲が狭い男になりたくはないので、グッとこらえた。

だが、立江は許容できなかった。

帰ってきたのが夜の9時。


「立江! 何やってんだこんな時間まで!」


「うぅ…いやぁ、やめられなくて…」


立江は制服も脱がずに、玄関に正座させられていた。


「お前、昔のこと、まだ懲りてないないのか!」


「懲りてるよぉ…」


弱々しい表情で見つめてくる立江。


「なら気をつけろよ」


「まあまあ、立江も帰ってきたし…」


怒る咲矢の後ろからエプロンを付けた夢流が咲矢の両肩を持って鎮めに来た。


「ご飯にしよ? ね?」


「はあ…。立江、次やったら小遣い減らすからな」


「げっ、それは、ちょっと…困る」


「なら用心しろ」


9時と、いつもよりかなり遅い時間に、夕食の時間になった。


2話を読んでいただきありがとうございます。

作者として、立江には少し思入れをしています。最近、虹6というゲームにはまっておりまして…。

Twitterの方も、フォロワーさんがたくさん増えて嬉しい限りです。フォローバックは確実にしますので遠慮なくフォローしてください。

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