16話
こんにちは! 今日もよろしくお願いします!
最近展開に悩み気味ですが、頑張っていいものになる様にしていきますので、応援よろしくお願いします!
その後、咲矢は小雨と小田原駅で合流し、近くのファミレスで話すことにした。
「す、すみません。急に呼び出してしまって」
「いや、大丈夫。で? 立江はなんて言ってた?」
「は、はい…」
小雨は自分のスマホを咲矢の前に差し出す。
画面には小雨と立江のトーク画面が映し出されていた。
咲矢はそれを上から順に読み始める。
『急に追加してごめんなさい』
『どうしたの?』
『小雨さんに』
『謝りたくて』
『ごめんなさい』
『ひどい事を言って』
『気にしないで?』
『大丈夫だから』
『私は気にしないよ?』
『頭が上がらないのを重々承知しての
お願いなんだけどいいかな』
『いいよ?』
『なんでも言って?』
『ごめんなさい』
『大丈夫』
『私、兄さんに酷いこと言っちゃった』
『どうしよう』
『私、もう兄さんと仲良くできないのかな』
『もう嫌われたままなのかな』
『私、どうすればいいのかな』
『大丈夫だよ! 咲矢先輩、すごく優しいから!』
『それに、私がこうして立江さんと話していられるのも
咲矢先輩のおかげなんだよ?』
『咲矢先輩は立江さんの事をずっと思っていて、なんていうか
咲矢先輩、立江さんの事が大好きなんだと思う』
それから立江からの返信は途絶えた。
立江も立江なりに考えがあって、彼女自身のプライドが邪魔をし、結果素直になれずにいた様だ。
直接話すのは恥ずかしい。直接話せる自信がない、分からない。だから頼れる人を探した。
「ご、ごめんなさい…なんだか勝手な事言って…」
「いや、間違ったことは言ってないから構わないよ」
「さ、咲矢先輩…?」
小雨は気不味いと言った雰囲気で話しかけてくる。
咲矢自身も正直、驚いている。小雨も驚いただろう。立江の行動に。
「…俺は何してんだろうな…」
「え?」
「いや、なんだか情けなくて…。ありがとう、小雨さんには助けられてるよ」
「いえ…私、立江さんと友達になりたいだけですから!」
小雨はそう言って微笑んでくれた。
咲矢が思っていたよりも、小雨の心は強いものなのかもしれない。
そう思うと、小雨の存在はかなり心強く思えた。
ともあれ、立江の心情を知ることができた今、咲矢にできることは一つしかない。
咲矢は小雨と別れたあと、軽くなった気分で立江の部屋の前に訪れた。
「り、立江…!」
勇気を出してドアの向こうにいる立江に声をかけた。
どんなに冷たく当たられても、どんなに拒絶されても、咲矢の覚悟はできている。
もうこれで終わりにしよう。そう思った。
「俺の事、話させてくれ」
当然返事はない。覚悟していたことだ。咲矢が一人で話し続ける状況なんて今までと変わらない。
だが、どうしても伝えたいことがある。
「立江の言った通りだ。俺は自分の事ばっかで立江の気持ちに応えてやれなかった…謝る。……俺は…お前の事が、大好きなんだ…。不思議な話、自分で気付けなかった」
…そうだ。自分の気持ちを伝えるんだ。兄として、立江が恋をした相手として。
その時、部屋の中からガタッと言う物音が聞こえた。
「立江…?」
反応してくれたのか…。
「…? 立江?」
様子がおかしい。咲矢の直感が察知した。
その時。
「咲矢先輩ーー!!」
家の外から小雨の声が聞こえる。張り詰めた声。
「小雨さん?」
咲矢は急いで玄関に向かい、ドアを開け、外にいる小雨と目を合わせる。
「さ、咲矢…先輩…はぁ…はぁ」
走ってきたのか、汗だくで息も切らしている。
「小雨さん?」
「立江さんが!!」
「?」
「さっきメッセージがあって!」
小雨は慌てた様子でスマホの画面を見せてきた。
『たすけて』
そう、短いメッセージが送られてきていた。
咲矢は急いで立江の部屋の前に戻った。
立江の身に何かが起こった。
その時、昔も感じたことがある寒気が咲矢の体の中に走った。そう、それは父親が…。
「立江!! 返事をしろ!!」
ドアを叩いて必死に呼びかける。
「立江さん!! 大丈夫ですか!! 立江さん!!」
「立江!!」
2人はドアを叩き続けた。だが返事は無い。
「小雨さん! 離れて!」
咲矢は小雨をドアから遠ざけて助走をつける。
こんなところで彩葉から教えてもらった技が役立つ時が来るとは思いもしなかった。
「とりゃ!!」
咲矢は両足で踏切り、床から離れた両足でドアを勢いよく蹴破った。
いわゆるドロップキック。
「立江!!」
2人は立江の部屋に駆け込んだ。
そこにはベッドの脇に床に横たわる立江の姿。
「立江!?」
「り、立江さん!?」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
咲矢は立江の体を抱きかかえて額と額を触れさせる。
「…すごい熱だ…」
熱い。立江の額には汗が流れ、顔もかなり赤い。
咲矢は事態を察した。
「さ、咲矢先輩! き、救急車!」
その後、やってきた救急車に立江は運ばれる。
咲矢と小雨も連れ添いで救急車に同乗いた。
検査を受けた後、立江の体は病室に運ばれ、咲矢は立江の枕元でその時を待つ。
重度の熱中症。
エアコンの効いた部屋とはいえ、日差しに長時間当たっていたのが原因だそうだ。。
倒れてから数分足らずで、市内の病院の一室に立江は寝かされ、咲矢はここぞとばかりに日本に生まれたことを感謝した。
立江が寝かされているのは広さの割にベットが一つしかない部屋。清潔感に溢れていて病院独特の健康そうな匂いが漂っている。
「さ、咲矢先輩…立江さんは…」
病室にスポーツ飲料を持ってきた小雨が入ってきた。
「うん…大丈夫、さっきよりは呼吸が落ち着いてきた」
「そうですか…」
「…さっきはありがとう。助かった」
「いえ…」
なんだかんだで小雨には本当に助けてもらってばかりだ。
小雨がいなかったらと思うと考えたくもない。
時刻は午後8時を回っていた。
小雨の買い出しのおかげで腹は空いていない。
その後、小雨は咲矢が遅くなるといけないので半ば無理矢理に返すと、咲矢は立江の看病や起きた時に近くにいてやりたいことから、帰らずに病室に残った。
「…立江は無理しすぎなんだよ…」
立江と咲矢以外いない静かな病室に、咲矢の呟きはよく響く。
それを最後に、咲矢は目を閉じ、座ったまま寝てしまった。
16話を読んでいただきありがとうございます!
もうそろそろクライマックスに入ってまいりますので何卒、お付き合いください!
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