11話
こんにちは! 今日もよろしくお願いします!
たくさんの方に読んでいただけて幸せです!
夏休みまであと3日。
「咲矢、昨日、夢流様を見たって人がいたぞ」
今日も連日と同じようにファミレスで作戦会議。
新屋は開口一番、夢流の情報を提供してくれた。
「まじか」
「場所は…近くの海岸だな…何をしてたか聞いたら何もしてなかったって言ってた」
「なんだそれ…」
「ただ一人でぼーっと水平線を見つめていたらしい。…他にも目撃情報があってだな」
新屋が報告してくれた夢流の現れた場所はどこも共通点はなく、場所もバラバラで、鎌倉での目撃例もあった。
元々、自由人な夢流が解き放たれたのだ。割とありえる話なのかもしれない。
とはいえ、いつまでもこうやって放浪されても心配だ。
一刻も早く彩葉からの許可をもらわなければならない。
「咲矢…」
次に口を開いたのは巴だった。
「ん? どうした?」
「あのさ…少し心配なんだけど…」
巴は浮かない顔で話す。何やら含んでいる顔だ。
夢流の目撃情報で何か心配なことでもあるのだろうか。
「何が?」
「…ううん…なんでもない」
咲矢が尋ねてみても巴は首を横に振って何かを隠した。たしかに毎日のように自分の家に訪れては自分の親にボコボコにされて帰っていく咲矢を見れば心配になるのも仕方がないことかもしれない。
「?」
巴に意味ありげな発言を最後に、その日の集まりはこれで解散。日に日に情報量が減って来ている。
特に今日はいつもより圧倒的に会話が少なかった。
大きい要因と言ったらおそらく、巴の口数だろう。今日の巴はおとなしいというか、無口というか、元気がなかった。
咲矢はその日、バイトがあるため、立江の夕食を準備してから家を出た。
バイトがあるからと言って稽古を休むわけには行かない。
一刻も早く、夢流を連れ戻し、立江を引っ張りださなければならない。
そんな日の稽古中、彩葉はある言葉を投げかけて来た。
「まだ、集中してないな…」
「え? …ゲバラッシュ!!」
お馴染みの掌底を顎にもらってしまう。毎度のことすぎて段々慣れてきている自分がいるのが少し怖い。
「いちいち、面白い声をあげるな、君は」
やっている当人はなんだか面白がっているように見えるが。
「す、すみません」
「そんなにお姉ちゃんが愛おしいか? 痛い思いをしてまで」
これも毎度お馴染みになりつつある問いかけだ。彩葉は試してきている。咲矢の心を。
「…ええ。すごく…。今すぐ会いたいです」
「…目だけは一丁前に真面目だな。…わかった、一ついいことを教えてやろう」
「それって…」
彩葉が助言をしようとしたその時。
「パパぁ…一緒に寝よぉ」
楓がパジャマ姿で眠たい目をこすりながら修練場に入ってきた。
その姿に2人の目線はそちらへ向かう。
「っ!!」
咲矢はその天使のように可愛い楓に見とれてしまった。
同じく、彩葉も親バカモードになってしまい、助言を聞くことが出来ず、咲矢自身の集中力も途切れてしまう。
「…悪いな、咲矢君。また明日にしよう。巴を呼ぶから待っていなさい。ほーら、楓、一緒にお寝んねしようなぁ」
そう言って彩葉は懐から取り出したスマホをなんだか慣れないと言った手つきで操作し始めた。
「は、はぁ…」
本当に、彩葉は幾つの人格を持っている人だと、改めて実感する。
楓の手を引いて出て行った彩葉とすれ違うように救急箱を持った巴が入ってきた。
「おつかれ、咲矢」
「いつも夜遅くに悪いな、巴」
「…うん大丈夫」
ファミレスにいた時からそうだが、今日の巴は心なしか、覇気がないというか、元気がない。終始下を向いている。
巴は慣れた手つきで咲矢の痣や傷付いた箇所に包帯を巻いていく。
「つーか今日、お前体調でも悪いのか?」
「え? …いや、別に大丈夫だけど」
「ホントに? 無理はするなよ」
「…に言われたくない」
巴は声にならない声で何か呟いた。
「ん? なんか言ったか?」
「なんでもない!」
と、巴は咲矢の傷を思いっきり叩いた。
「っハグゥゥっ!!!!」
なんだか今日は明らかに体調が悪いというよりは機嫌が悪い。
「何すんだよ!」
「…別に!」
「何怒ってんだよ…」
「怒ってないし…」
明らかに言葉を吐き捨てていることから怒っている。
「いや、怒ってるだろ…」
「…いいから、帰りなよ」
その日は不機嫌な巴に追い出され、1日が終わった。
翌朝、咲矢は照りつける日差しの中を一人で登校した。
「なんなんだよ」
いつもなら巴が近くにいる通学路なので、どこか寂しい。
明日で学校は終わり。ということで、クラスは浮かれ気味。
咲矢は夏休み何をしようか考えることもできずに、否、一緒に考える仲間がいないので、クラスの楽しそうな雰囲気を横目に見ていた。
その日の放課後は巴と小雨は部室の後片付けのために集めることができなかった。
新屋だけは集まってくれたのだが、特に報告もなく、少しお茶をしただけでお開きとなってしまった。
夏休みまであと1日。
皆が学校に来なくなれば情報収集もできなくなってしまう。
おかしな話、自分の家族のことなのに自分が一番理解できていないのだ。
「ホント俺って、情けないよな」
螢田駅から、家までも間、目の前を歩く小学生に気がつく。
「…? 楓…」
「…ん? あっ! 咲矢お兄ちゃん! おかえりなさい!」
「ただいま…」
トコトコと駆け寄ってくる楓。いつもならここで咲矢の気分はよくなるのだが、今日はそう言う気分ではない。
「ん? 元気ないですね…。何かありましたか?」
楓に話しても余計な心配をさせてしまうだけだ。
「…?」
「楓…可愛いな」
「…ふぇ? い、いきなり何ですか!」
楓はあたふたして、咲矢へ向けていたあざと可愛い目線を下げてしまう。
そんな楓の髪の毛をクシャクシャに撫で回す。
「きゃああ…もぉー…どうしたんですかぁ…」
楓は頰をぷぅっと膨らませて可愛く睨んできた。
「楓には助けられてるよ」
嘘ではない。楓の可愛さは咲矢の疲れた心を癒している。
「え?」
「最近、巴と話すか?」
楓からなら巴の事、何か聞けるかもしれない。
夢流と立江の事も心配だが、巴の事も心配だ。なんせ、家族のようなものだから。だけど今はほかにやることがある。
「はい! 毎日話しています」
「そうか、じゃあ、何か変わりは無いか?」
「うーん…言われてみれば、最近、お姉ちゃんため息ばかりついてますね」
「そうか…」
「お姉ちゃんと何かあったんですか?」
「いや、なんだか最近俺に対してかわからないけど怒ってるみたいで」
「何かしたんですか?」
「心当たりは無いんだけど…」
「…そうですか。…そう言うことなら私に任せてください! 私が見事お姉ちゃんの機嫌をとって見せましょう!」
と、自信満々に胸を張る楓。
巴のことは楓に任せておいていいのかもしれない。
「頼んでもいいか?」
「…いいですけど、咲矢お兄ちゃんは何をするんですか?」
「俺はほかにやることがあって…」
「むぅ…」
「?」
「そのやることって…お姉ちゃんのことよりも大事なことなんですか?」
「っ!!」
急に鋭いところを突かれた咲矢の体に鳥肌が立つ。
巴のことは大切だ。
今まで関わってきた人間の中で一番信頼しているし、何より咲矢が今、恋をしている相手でもある。家族…そう、家族同然。
しかし…
「咲矢お兄ちゃん?」
「…あ、あぁ、巴より大切なことだ」
咲矢の口は当たり前のように思ってもいないことを口にした。
「そ、そうですか…頑張ってくださいね」
楓はそれを聞いても笑っていた。けど、どこか悲しい表情にも見えた。
「あぁ…ありがとうな、楓」
楓はぺこりと可愛くお辞儀をして大きな門の向こうに消えていった。
「…俺は何を言ってんだ…」
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