この白い世界で君に送る
ぼく達家族は、この白い世界にすんでいます。正確にはこの白い世界には僕一人だけがいて、他の人たちは幽霊みたいに透明な状態で漂っているんだ。だから、ぼくはちっとも寂しくないよ。触れないし、においも感じないし、音も聞こえないけど、家族はいつも僕の傍にいてくれているのが見えるんだからね。ぼくが何かをすると、家族たちは精一杯反応を返してくれるから、ぼくはそれがたのしくてたのしくてしょうがないんだ。
僕たち家族は、この白い世界で唯一存在を認識できる群体です。他の人たち?知らないよ。僕は気が付いたらここにいて、気が付いたら、家族がいたんだから。あちらの世界でも家族はいたけど、ぼくに話しかけてくれる人はいなかったよ。僕も話そう......話そうと努力するんだけど、みんな反応を返してくれないんだ。みんな無視するんだよ。まるで、ぼくが見えないみたいなんだ。この世界の住民みたいにね。透明は透明でも、この世界の透明君たちはいいよ。透明ちゃんたちもいたかな。反応を返してくれるし、僕にとってそれはとても刺激的で楽しいんだ。みんな僕の家族なんだ。
あちらの世界にいる君はどうだい?僕はこの通りみんなのおかげで楽しく過ごせてるよ。君もたまにはこっちにおいでよ。そしたら、君も僕の家族になるよ。僕は君が家族になってくれたらとてもうれしいんだ。僕は君には一番傍にいてほしいし、君も僕と一緒にいたいよね?そうだよね?そうじゃなきゃ、僕は君を嫌いになってしまうよ。僕はそれが一番嫌なんだ。ぼくのしあわせの為に、君の幸福のために、こっちに来ておくれよ。
僕は、ぼくに対するあちらの世界にいる君の思いは分かっているつもりさ。でも、よく考えてみて。君は、ぼくに君のもとへ戻ってきてほしいというけれど、この白い世界に僕を送ったのは君じゃないか。君は一体僕をどうしたいんだい?君はあっちの時のぼくの家族だからね。何か理由があることぐらいは僕にだってわかっているつもりだよ。でも、でもさ。僕をこんな世界に送っておいて、いまさら戻ってきてほしいなんて調子がいいにもほどがあると思わないかい?勘違いしてもらっちゃ困るけど、僕は君の家族じゃないんだ。僕は君の所有物じゃないんだよ。これをよく覚えておいて。
君は僕の家族なんだ。君が君でいるためには僕の家族になるしかない、それは、あちらの世界もこっちの白い世界にも、この僕がいる限りそれは変わらない。変わらないんだよ。君の言葉に従うのは僕じゃない、君だよ。あちらの世界の君自身の言葉でしか君は動けないんだから、そんなところでじっとしていないで早くこっちにおいでよ。
ほら......ほら......君は君自身にこういうんだ。『私は私であるために、私であることを証明するために、ぼくのところに行きます。いままでおかあさんおとうさんお世話になりました。大丈夫。心配しないでお母さん。私はあっちにいても僕と一緒にいるから寂しくないよ。あっちの世界にいてもお母さんたちの事は、あっちのぼくと一緒に見てるから』ってね
いらっしゃい、フフフ......これで君もこの僕の世界の住民だ。
ずっと一緒にいようね......。
お読みいただきありがとうございました
はたして、この子はただの盲障碍者なんでしょうか?と
書きながら、いろいろ思うところありましたが、技能が足りず書き尽くすことは無理でした。精進します
ありがとうございました。