プロローグ
「お前はこっち来んなよな!」
ここは険と魔法の世界。
だれにでも【異能】や【魔法】は発現する。はずなのだが…
「なんの異能も持っていないくせに!」
そう彼、アレン・ラッシャーただ一人を除いて…
◆
僕が悪いのか、天が悪いかは知らないが
15歳になった今でさえ異能は発現しない。
毎日のように無異能だかなんだか言われるのには、もうこりごりだ!!
だから決めた、俺は…
旅に出る!
◆
一般的にこの世界で発現する能力はその個々の力にもよるが、上から…
【異能】…スキルや魔法と違い、人間が進化し、
人間の一つの能力として出来上がった能力。
【スキル】…神々から与えられる称号や能力。
物理法則を無視するような能力が多い。
【魔法】…特定の血縁者、〔魔族〕に必ず発現する。
自分の〔魔力〕を放出、または変換することで、
様々な術を発動する。
と、この三つだ。
俺は両親共に【異能者】だった為に、【異能】を発現する可能性が高かった。
魔族のように必ずではないが、血縁による引継ぎの可能性は高くなる。
その他にも、
【異能強化】や【特殊スキル】、【特殊魔法】。など、細かくすれば
十数個ぐらいはある。
僕は、無異能のためその他の異能に関する勉強は人一倍知っている。
と、自負している。例えば眼の完全移植とか……
このたいしていらない知識がまさか役(?)に立つことになろうとは…
30分前 ラッシャー家にて
「もう、話さなければいけないね…ラッシャーに能力の事を…」
隣から妻の声がする。
妻は、アレン・バラサ。
私と同じく【異能者】で、【マジックキャンセル】という
まだ世界で発現が、二人しか確認されていない特殊な異能を持ち、
密かに【マジックキャンセラー】と呼ばれている。
呼んだら怒るので呼ばないが…
ちなみに私は、アレン・ガリサ。
妻と同じく【異能者】で、【能力察知】といった相手の能力が
分かる能力を持っている。
ラッシャーの能力が分かったのは、あいつが5歳のときだった。
幼児期は訳も分からず能力を使ってしまう事が多い。
私と妻で、アイツと遊んでいた時だったと思う。
突如、与えられたこともない殺気にも似たプレッシャーを感じた私たち夫婦は、
とっさに戦闘体制をとったが、わたしの能力は察知したのだ。
後方にいる、我が息子からその能力が使われていることを…
【重圧】…ここでは、物理的な重圧ではなく、精神的な面での、
プレッシャーのことを指し、相手に極度のプレッシャーや
ストレスを与える。
身動きが取れなくなり、息を吸うのでさえままならないほどの重圧など、
一般人にかけたら死んでしまう。だから二人で話し合い、
大人になるまで能力のことは秘密にしたのだ。
「あの子も15だ。もう話してもいいだろう」
「そう…ね…」
「ただいま!」
「おかえりなさい、ラッシャー」
「おかえり、ラッシャー」
この子に、話さなければならない…
自分の、隠された能力のことを…