服を脱ぐ準備をしておけ!!
恥の多い生涯を送って来ました。
俺には、人間の生活というものが、見当つかないのです。俺は何の変哲もない一般家庭で生まれたので、異世界をはじめて見たのは、大金持ちのベンツに轢かれてからでした。
死んで、行く場所といったら天国か地獄かだと思っていたけど、どうやらそうではなかったらしい。
どこまでも広がる草原。風のそよぐ音。動物たちの荒い呼吸と今にも泣き出そうな勢いの少女。そして何より、体が半透明な俺。
人は死んだらどこに行くのだろうと有名な大学の教授や胡散臭い白髪の老害どもが喚いているのをテレビで見たことがあったが、そんなに知りたきゃ死ねばいいのに……と思っていたら、まさか自分が死ぬとは思わなかった。
どうも、茅場裕太です。
あ、幽霊っす。
それと、目の前の少女がモンスターに集団リンチされる五秒前に立ち会ってます。
「ユ、ユータ! これどうにかしない! どうにかして! どうにかしてください!!」
「いやいや、無理だから。俺、幽霊だから」
「あとで何でもしてあげるから、なんとかしてぇぇぇぇぇぇぇ!!」
泣きべそかいて助けを乞うのはクズ、ザコ、天然の三拍子そろった残念美少女、ルイン。この世界で俺を認識できる数少ない人間だ。
なんでまた、ルインみたいな少女と一緒にいるのかと言えば……まあ、まず以ってあのたわわなお胸が狙いなのですが、幽霊になった俺が触れるには何個もの条件を満たさなければならない。
だけどまあ、一緒にいる理由はもう一つあるのだが、とりあえずは今夜の宿屋くらいは稼がないとルインの裸を見ても面白くない。なので……。
「よぉし! 服を脱ぐ準備をしておけ、ルイン!!」
これが、幽霊となって異界に送られた俺と、伝説の勇者を目指すルインとの日常の一抹である。