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ふたごの星  作者: よしだのあ
ふたごの再会
6/8

優子のひみつ

 それからしばらくは、かなり平和な日々が続いた。

 もちろん優子とは完全には離れられないし、むしろ名簿番号が近いから最初は何をするにも一緒だったけど、まあそれはしょうがないし。それに、萌ちゃんもいるしね。

 そんなあるとき、部屋で優子に「ねえ、翔子って、お父さんとずっと2人だったの?」と尋ねられた。

「え?そうだけど?」

「本当に?ずっと2人?」

 そこまで言われて、あっ、と思った。

 あたしは表情を変えないまま、「まあ、そりゃわからないけど」とベッドに腰掛ける。

「え?」

「離婚して10年もたってるんだから、女の人くらい作ってたっておかしくはないけど、ってことよ」

 違うの?と聞いてやると、優子はうつむいてしまった。

「お母さんだって、再婚したんでしょ」

「・・・なんで知ってるの?」

「昔、お母さんに会いに行ったときに見たのよ・・・お母さんが知らない男の人と歩いてるのをね」

 あのときのショックは、今でもハッキリと覚えている。


 あれは、ちょうどお父さんとお母さんが離婚して1年半ほどした頃だ。お父さんと一緒に電車でお母さんがいる街に行った。日曜日の午前中で、駅もすいていた。その駅の出口のところで、見たのだ。男の人と楽しそうに笑っているお母さんを。

『ねえおとうさん、あれって・・・』

『こら翔子、人を指さしちゃ・・・ん?』

 お父さんも、びっくりして言葉を失っていた。お父さんも、この時はまだお母さんから何も聞かされていなかったのだと、後から知った。

『・・・おかあさんだよね』

『ああ・・・』

『じゃあ、おかあさんのとなりにいるひとはだれ?』

 お父さんはしばらく黙っていたけど、やがて、『お母さんはね、お父さん以外に、すごく仲良しの男の人ができたんだよ』と困ったように笑った。

『なかよしの、おとこのひと・・・』

『そう。翔子も、小学校にいるだろ?仲良しの男の子が。それと一緒だよ』

 そう言われても、納得がいかなかった。お母さんが、あたしの知るお母さんではなくなってしまったような気がした。


 それ以来、お母さんには会いに行っていない。


「で、今はお母さんとは年賀状のやり取りくらいしかしてないんだけど・・・」

 優子はどうなの、と聞いてみると、優子は顔を上げて「えっと・・・小学一年生の冬にお母さんが再婚して・・・」と答えた。

「そのあと、妹が生まれて」

「えっ」

 あたしはおどろいて、思わず声を上げた。一応お母さんと年賀状のやり取りはしていたのに、あれからまた子どもを産んだのは知らなかった。


 意外と、優子も苦労してるのかもしれない。

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