ふたごの再会
それから10年の月日が流れた。
15の春、全寮制の女子高に合格したあたしは、入学式より一足早いこの日、大きなバッグを抱えて寮に向かっていた。
桜のつぼみがふくらみはじめた、3月の末のことだ。
寮に着くと、寮母さんが玄関で待ってくれていた。
「こんにちは」
「あら、1年生ね。お名前は?」
「原園翔子です」
寮母さんは名簿を見て、「ああ、原園さんね。お部屋は705号室よ」と鍵を渡してくれた。
「そこにエレベーターあるから、それ使うといいわ」
「はい、ありがとうございます」
あたしは寮母さんに頭を下げて、歩き出す。7階へ上がり、廊下を進むと、705号室の扉の前で、あたしは立ち尽くした。
「・・・は」
扉に付いているネームプレートには、こう書かれていたのだ。
〈705 原園翔子 原園優子〉
原園優子。子どもの頃から大嫌いだった、あたしのふたごのお姉ちゃん。お母さんとお父さんが離婚したあの日から、二度と会うはずのなかった人が、どうしてここにいるの?
「うそ・・・」
あたしが呆然としていると、中から扉がガチャッと開いた。
「きゃっ!」
「あっ」
目の前に表れた小柄な女子生徒は、あたしを見て、ハッとした顔になった。
「翔子・・・!」
「優・・・子・」
優子は微笑んで、「ひさしぶりね」とあたしの手を握った。
「ちょっと!」あたしは思わず、その手を振り払う。
「え・・・」
「何笑ってんのよ、あたしは全然そんな気分じゃないんだからね!」
あたしは怒っているというのに、優子は笑ったまま「また会えてよかったわ」と言った。
「なかよくしましょうね」
「嫌よ!」
あたしの怒りは、伝わっていないようだ。