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プロローグ
あのとき、あたしたちはまだ6歳だった。
玄関でお母さんに手を引かれる姉の後ろ姿を、今でもハッキリと覚えている。
「ほら優子、さっさとお靴履きなさい。ぐずぐずしないの」
お母さんに急かされながら靴を履いたあと、姉は一瞬だけ、こっちを振り向いた。
悲しい目だった。
でも、お父さんとお母さんがわかれると聞いたとき、真っ先に「優子とわかれたい」と言ったのはあたしだ。何の未練もない。ぐずで、のろまで、何かあるとすぐに泣き出す優子なんかとは、一緒にいるのはイヤだったから。
だから、あのときも、あたしは無表情のままシッシッと手で追い払うしぐさをした。
そして、お母さんはともかく、優子とはもう絶対に会わないと、心に誓ったのだ・・・。