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黒と灰色

作者: ラスト

ここは、どこだろうか。

わからない。けどここを私は歩き続けなければいけない。

この、黒と灰色の世界を…。



見渡す限り黒と灰色が広がるこの世界。

いや、そもそもここは世界なのだろうか。どうでもいいことだけど、ふとそんなことが気になった。

左に広がる黒。

右に広がる灰色。

そして私はその世界の狭間をさまよう。目的もなく。

そしてその狭間をさまよう私を包み込むようにして、そこにある無数の幻。


無数のうちの一つ。


母親と子供の幻。

母親は子供を愛し子供は母親にひっつく。

まさに幸せとしか言いようのない光景。

『おかーしゃん!あっちにね、どんぐりがね、たくしゃん落ちてたの!』

『たくさん落ちてたの?見てみたいなぁ。連れてってくれる?』 『うん!』

言葉足らずでも初めて見た感動を一所懸命に伝える子供。そしてそれを受け止める母親。

それは、温かく光に満ち溢れていてとても眩しかった。

だけど、なぜ、この幻は私を不安と嫉妬の海に私を引きずり込むのだろうか。

なぜ、私の心はネンマリとした痛みにつつまれるのだろうか。

無意識に伸ばした手は宙を切る。

幻は消えない。けど、手は届かない。


次の幻は私を殴る母親の姿だった。


何故私は殴られてるの?そうか、私が悪い子だから。私は生きていちゃいけない子だから。

理由なんていらないの。

だって私だから。

そうだ。死ななくちゃ。

これ以上お母さんを苦しませないために。


それは、そんな思いで溢れていた。

ただひたすら恐怖と闘い、罪悪感に責められ、今にもオーバーヒートしそうな心。



それはあまりにも見ていられないものだった。

なのに、何故だろう。

初めて見るものじゃない。

初めて経験するものじゃない。


怖い。


そんな思いにかられて、怖くてその幻をかき消そうとするが消えない。それどころかさらにまとわりついてくる。



そして私は不意に思い出した。


そうだ。私は飛んだんじゃない。

そうよ、そうよ、そうよ。

自由になるために。

もう迷惑をかけないために。

そうか…。

あの幻は私の希望と絶望なんだ…。

この幻達もそうなのかな。

ごめんね。

せっかく在るのに私にはあなた達を受け止めることはできない。

こんな私でごめんなさい。

そして、ここは、多分、生と死の狭間。


だったら…私は………死の世界に行かなくちゃ。


止まるところを知らない思考を抱えて私はそのまま黒の世界へと踏み出した。







『…午前1時13分。ご愁傷様です』

『…』

読んでくださりありがとうございました。

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