3 雨が降らない
メルは、従妹のアンナが女の子達を紹介してくれたので、沢山の友だちもできて、学校にも馴染んでいきました。
「あれ? 男の子が少ないわ」
「夏が近づくと、畑仕事と乾し草作りを手伝わなきゃいけないもの。男の子達は学校を休むのよ」
アンナに教えて貰って、メルは村の生活を全く知らないことに気づきました。
「何時も、学校が終わったら、すぐに森へ帰るものね」
アンナや他の女の子も、家のお手伝いはしなくてはいけませんが、少しは遊んだりもします。
「森の家は遠いから、早く帰らないといけないもの。
それに、おばあちゃんの手伝いをしなきゃ、駄目だから」
友だちになった女の子達は、森まで一人で歩いて帰るだなんて、嫌だなぁと同情しました。
メルは、森の中の小路は村より涼しいし、カラスのカーも出迎えてくれ、学校の事などを話ながら帰るので、そんな同情をされているとは思いもよりませんでした。
「それにしても、暑いわよねぇ! 早く夏休みにならないかなぁ」
アンナの言葉で、女の子達は夏休みの計画を、それぞれ一気に話し出したので、メルは驚いて話を聞きます。
『へぇ、みんな夏休みには、親戚の家に行ったりするんだ……
下の兄弟を面倒みたり、家のお手伝いも大変そうだわ……でも、賑やかで楽しそう……』
おばあちゃんと二人暮らしのメルは、妹や弟の話を聞くと、少し羨ましく思いました。
黒猫のルーも拾った子猫の頃は、遊んでくれましたが、今は寝てばかりだからです。
「ねぇ、メルも少しは遊べるんでしょ?」
メルは、学校に通いだして、菜園や家畜の世話を少ししか手伝ってないので、夏休みは頑張って働こうと思ってました。
「ううん、多分、あまり遊べないよ」
それと、これは友だちにも内緒ですが、夏休みには魔女の修行もしなくてはいけないのです。
子ども達は、呑気に夏休みの話をしていましたが、村の大人達は雲一つ見えない青空を、恨めしく眺めていました。
「雨が全く降らない……このままでは……」
学校を休んだ男の子達は、乾し草を作るんだから、雨なんか降ったら困るんじゃないかと、父親の言葉に首を捻りました。
「それにしても、暑いなぁ」
ロビンも、お父さんが刈った草を、フォークで広げながら、顔から流れ落ちる汗を、少し手を休めて首から下げているタオルで拭きました。
かんかんのお日様が、広げた草を見ている間にも乾し草にしていきます。
「乾し草作りは、もう充分だ!」
お父さんの言葉に、ロビンはよろこびましたが、お母さんが作ってる菜園に水やりを言い付けられました。
雨が全く降らないので、普段は菜園にはたまに水やりをするだけなのに、毎日しなくてはいけないのです。
男の子達は、難しい顔をしている親を見て、何か悪いことが起こっているのではないかと、気づきました。
ある朝、メルが教室に入ると、小さな女の子しかいませんでした。
「みんな、どうしちゃったの?」
小さな女の子に尋ねたら、川から水を汲んで、畑に水をまいていると教えてくれました。
「皆さん、少し早いけど、夏休みにします」
キンバリー先生は、これでは授業にならないと、夏休みにしました。
メルは、アンナに会いたいと思い、教えて貰っていた家に寄りました。
「キンバリー先生が、今日から夏休みにされたの」
家の周りの菜園に水をやってたアンナに、夏休みになったと教えます。
「夏休みかぁ……今年は、ずっと水やりを手伝わされるかも」
まだアンナは、事の重大さに気づいていませんでした。
メルは、新学期に遊ぶ約束をして、森の家に帰りました。