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2  村の学校

「うわぁ! こんなランチボックスがあったんだ」


 目を輝かせるメルに、これはお前のお母さんが使っていたランチボックスだよと渡します。


 小さなランチボックスは、何個かに区切られていて、サンドイッチ、鶏の唐揚げ、ニンジンのバター煮、そしてデザートはチェリーパイが、きれいに詰められていました。


「おばあちゃん、ありがとう! でも、こんなには食べられないよ」


 おばあちゃんは、メルにチェリーパイは女の子どうしで、分けて食べるんだよと教えてやりました。


「お友だち、できるかな?」


 あれほど学校に行きたいと言ったメルでしたが、いざとなると、少し不安になってきます。


 不安をかきけしたくなり、眠っている黒猫のルーを抱き上げて、むぎゅとします。


「おや、行きたく無ければ、行かなくて良いんだよ」


 おばあちゃんは、メルが学校に行くのは反対でしたが、色々と準備をしているうちに、自分が死んだ後に一人っきりで森で生きるのは可哀想だとも考えたりしていたのです。


 黒猫のルーは、メルの腕から飛び降りて、迷惑そうにぺろぺろと体をなめました。


『ねてるところを、何するんだ!』


『ルー、ごめんね!』


 メルの友だちは、黒猫のルーしかいません。


 でも、友だちと思っているのはメルだけで、ルーは子どもが嫌いなのです。


「おばあちゃん、私は学校へ行きたい! そして、友だちをつくりたいの!」


 メルは、そう自分に言い聞かせるように宣言すると、お母さんのお古のランチボックスと石板を持って、村へと歩いて行きました。


『やっと、ゆっくりと眠れる』


 黒猫のルーは、メルに育てて貰ったのには、ほんの少し感謝していましたが、寝ているところを抱き上げたりされるのは嫌いなのです。


『ルーは当てにできないねぇ。

 カラスのカーや! メルを送っておくれ』


 おばあちゃんは、さっそく眠ってしまった黒猫のルーに呆れて、カラスのカーに森の外にまで送るように、頼みました。




 メルは、村に何回か来たことがあります。


 でも、何時もはおばあちゃんと一緒に、薬草を売って、小麦を買って帰るだけでした。


『多分、あそこが学校だわ……子どもが集まっているもの』


 ほんの少し、学校に行くと言ったのを、後悔しましたが、勇気を振り絞って門をくぐります。


 校庭では、男の子達がボールを投げて、遊んでいました。


「やぁ! メル、学校に通うんだね」


 森で道に迷っていたロビンは、メルに村に出る道を教えて貰い、その時に学校に通わないのかと尋ねたのです。


「ええ、今日から通うの……どうしたら、良いのかしら」


 ロビンは、森の魔女はついて来なかったんだと、少し呆れたましたが、畑仕事が忙がしい家では、近所の子どもに連れていって貰う事も多いので、メルを先生の部屋に連れていきます。


「今日から通うメルです」


 先生は、この村の産まれではありませんが、下宿している家のおかみさんに、森の魔女については聞いていました。


「キンバリーと言います、メルよろしくね。

 ところで、メルは何歳ですか? それと、字が読めますか?」


 背の低いメルだけど、しっかりしているので、先生の質問にもはきはき答えます。


「今度の夏に9歳になります。字はおばあちゃんから習っています」


 そのおばあちゃんとは、森の魔女のことなのだと、先生は田舎の村の人達は迷信深いから、メルが虐められたりしないように気をつけようと考えました。


 キンバリー先生は、9歳なら三年生か四年生だと思い、教科書を出して読ませてみました。


「メルのお祖母さんは、教えるのが上手いのね。

 これだったら、四年生でも大丈夫だわ」


 三年生より、四年生の方が女の子も多いので、メルも友達を作りやすいだろうと考えて、先生は教室に案内します。


「もう、授業を始めますよ!」


 キンバリー先生が校舎の入り口で、大きな鐘をガランガランと鳴らすと、ドタバタと校庭で遊んでいた男の子達も教室に駆け込みました。


 教室には、6歳から13歳までの子ども達が席についていて、先生と一緒に入ってきたメルに注目します。


「今日から、一緒に勉強するメルです。

 四年生になるから、アンナの隣に座りなさい」


 メルは、先生に指名されて、手をあげた金髪の女の子の横に座りました。


「ねぇ、もしかしてメルは、森の魔女の孫なの?」


 小さな声で話かけられて、メルはどう答えようか迷います。


「ええ、私のおばあちゃんは、村の人達からはそう呼ばれているわ。

 でも、悪い魔女なんかじゃないわよ」


 嘘をついても、小さな村ではバレるだけだと、メルは正直に答えました。


 アンナは少しばつの悪そうな顔をして、誤解だと言います。


「アンナ、メル! お喋りは、休憩時間にしなさい。

 二人とも、黒板の計算を、石板にしなさい」


 メルは叱られて、ドキンとしたが、アンナが休憩時間にねと、ウィンクしてきたので、嬉しくなりました。

 



「メルって、計算が得意なんだね」


 アンナは計算が苦手なので、一時間目が終わるまで掛かって、やっと黒板のを終えました。


 羨ましいなぁと、溜め息をつきます。


「それより、誤解って……」


 メルが尋ねると、アンナはそうだったと思い出して、話し始めました。


「メルのお父さんは、私のお母さんの兄さんなのよ!

 だから、メルと私は従妹なんだわ!」


 メルは村に親戚がいるとは知らなかったので、びっくりしました。


「へぇ~! じゃあ、メルは僕のハトコだね」


 ロビンも声をかけてきて、他にも何人か親戚がいるとわかりました。


 メルは、おばあちゃんが森で一人で暮らす理由を何度も聞いて育ちましたが、少し、寂しい時もあったので、こうして同じ年頃の子ども達と話すのはとても楽しく感じました。

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