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再会と決戦と覗き

ひとまず俺は安堵の息を吐き出す。無事にアイテムを使えたことへのものだ。急いでいた理由が鍵の持ち主の安否を気遣ったわけだから、使用イコール無事、又は存在しているということになる。それと同時、少年の説明の条件も無事クリアしていたということになっている。


ここがどこで、目の前にその人らしき影が見えないのが気がかりではあるが、周りを探索してみるしかないだろう。あまり時間を掛けるとまた少年が来るかもしれないからできるだけ急いだ方が良い。


倒れている大木を跨ぎ、荒れている……おそらく元森林だったであろう場所を歩き始めてすぐの事だった。


「みつけたにゃー」


そんなふざけているとしか思えない語尾を付けた声が聴こえてきた。


その声がする方へと視線を送ると姿はない。それに声はどことなく上の方から聴こえた気がする。その正体を突き止めようと、ふいに障害物がなくなっている空へと俺は視線を向けた。すると、なにやら黒い点が降ってきているのが見える。


それはだんだん面積を増やし徐々に姿を現していく。点から丸へしだいに楕円に近づいていき、胴体、胴体から足と頭、それに尻尾まで――それはまるで猫のようだった。


「にゃっ!? 違ったにゃ他のプレイヤーだったにゃ!」


いや、間違いなく猫だった、それも人語を話す猫だ。俺は思わず降ってくる猫を、水を掬う要領で受け止めようと手を差し出す。


ところが、


「匂いを嗅ぎつけたハイエナにゃ、このまま一発かましてやるにゃ! 後から追撃するにゃ!」


敵対心剥き出しの爪剥き出しの牙剥き出し、これは受け止めたら引っ掻かれるは噛みつかれるはで生傷が絶えなそうだ。そう思ったら自然と手は引込められた。


「あ、こらそこを動くにゃ!?」


空から落ちてきている猫が顔面に落ちてくるのを避けるため少し移動すると、今度は文句の嵐だ。


「調子に乗るにゃよ! 例え避けられたとしても『冷たい博覧会(エンドレスタナトス)』が死の淵まで追いかけてやるにゃっ!」


そう言いつつ、黒ネコが目の前を通過していった。


「よっと」


さすがにそのまま落下は可哀想だと思い掬う形から摘まむ形で救出してやる。


「にゃぼんっ!」


新しい猫の苦しみ方を初めて聞いた。首元をとッ捕まえた形になったので、人間でいう所の襟を後ろから引っ張られたようになったのだろう。重力を逆らった反動で皮が首を絞めてしまった。


「悪い、大丈夫か?」


「ごふごふ、大丈夫にゃわけにゃいにゃ! 離すにゃあああ!」


「ああ、それでお前もプレイヤーなのか?」


「返事を返して離さにゃいとはどういうことにゃ!?」


「ん? 離すなって……」


なるほど……猫語で勘違いした。てっきり離さないでくれと頼んできていると聞き取ってしまった。勘違いだと分かったら下ろしてやろうと思ったのだが、爪を引っ掻き回し続けるので優しくは無理だ。摘まんでいた腕を伸ばしながら距離を開け倒れていた大木の上に優しめに投げる。


「ほら」


綺麗に着地した猫は爪痕を大木に残し、今にも飛びかかってきそうな勢いでこちらを睨む。


「で、質問の答えは?」


「初級プレイヤーにゃ、そういうことは自分で調べる世界にゃ! 撃つにゃ!」


少年よりは賢い猫相手に呆れた顔をしている暇はなかった。猫の合図で空の方から風切り音が聴こえ、見上げるよりも早く危険だと察知する。


俺は何を思ったか、猫の合図で撃たれたその攻撃に猫を庇うように前へと飛び出し抱え込んだまま転がった。


俺がいた場所が抉られるように吹き飛ぶ。


その風圧で俺もかなりの距離を飛ばされた。


「にゃ!? 巻き添えにする気にゃ!?」


弁解をする気はなかったけど本当に咄嗟のことで、猫を助けるつもりの行動だった。でも、猫からすればそう思われても仕方ない。そのおかげでもう一人いる空の誰かに交渉できることになったのも事実だ。


俺は転がった先で猫を摘まんで立ち上がり、声を天高く張り上げる。


「攻撃は止めてくれ! 話がしたい!」


説得力は欠けるだろう。猫を持ち上げて盾にしているのだから。


しかし、


「聴こえるわけがにゃいにゃ! それに、バカだにゃ!」


その瞬間、俺の手の内にいた猫が突然姿を消した。


「――っ!?」


アイテムの存在が頭を掠めた。それよりも、次の攻撃がくることの方が危険。空を見上げながらどうするか考える。


逃げるにしてもまだ博士からの合図は来ていないからこの世界からの脱出はできない。他に手はないかと避けることを念頭に置きつついつでも飛び込んで避ける準備はしておく。


すると、ふいに新たな声がどこからか聴こえてきた。


「う……うぅ……」


次から次へと目まぐるしい展開の速さに思わず、イラつきが声に伝わる。


「今度はなんだ」


地上からのうめき声に視線を送る。と、そこに誰かが体半分埋まりながらいた。服がぼろぼろに破れ、土やら傷ついた頬から流れる血で汚れ、俺が探していたであろう人物。


緋衣月華と言う名の少女の姿だった。


「やっぱり……、そんなことより、なんでこんなっ」


言うまでもない。あの猫がいたことから空にいるであろうプレイヤーとの戦いで敗北の寸前まで追い込まれたのだ。


俺の声を頼りに緋衣の視線が俺を捉えた。


傷ついた顔が歪んだのが窺える。この世界にいるのはプレイヤーだけだと知っているからこその反応。逃げようと動こうとしているが、思うように動けないでいる。距離からして、さっきの俺を狙った攻撃の被害も受けているのかもしれない。


緋衣が思っているようなプレイヤーとしての行動を俺は取るつもりはないが、助けるにもプレイヤーに狙われたまま緋衣を抱え込んで逃げる真似は自殺行為に等しい。なにより、治療もせずに歩きまわせることなど無理だ。


助ける方法があるとすれば……。


「しまったにゃ!? 先に見つけられたにゃ――こうなったら確実に狙えるように降りてくるにゃ!」


再び地上に降りてきた猫がそんな声を上げた。


それに俺は危機感を覚える。空からの攻撃は俺が咄嗟の行動でも避けられるものだ。それが、目の前で撃たれることになったら、確実に終わる。それが俺一人であったとしてもだ。


俺はポケットにある白い鍵を掴む。この危機的状況を変える力は俺にはない。だが、緋衣がプレイヤーとして復活できれば好転するアイテムを持っている可能性は十分にあるはずだ。


俺は猫を背にして緋衣の側へと急いで近づいていく。その間にも地上に足を付けたプレイヤーの存在が感じられた。


いつ攻撃が来るのか、すでに狙いが定まってしまっているのか、存在の圧迫から掴み取った鍵が焦った拍子に地面へと落としてしまった。


「しまっ――」


「二匹まとめて撃つにゃああああああああああああ!」


攻撃の合図は一瞬の間も待ってはくれなかった。


――――ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッッ!


それに遅れて博士からの合図が時計から発生される。だが、間に合わない。

時計に手を合わせる暇も、鍵を拾い上げる暇も、緋衣を庇ってやる暇も与えられなかった。


「……………………」


「……………………」


「……………………」


何秒何分の時が過ぎたのか、異変が起きない。


いや、何も起きていない事が、異変が起きている証拠だった。俺は事態の把握に振り向き、猫ともう一人のプレイヤーに何が起きているのか確認しようとした。


今更、戸惑いもない。攻撃されているなら振り向く以前にされているのだから、今からの行動は引き金にはならないはずだ。


「……なぜ撃たないにゃ?」


猫が疑問を投げかけている。


確かにそこにはプレイヤーはいた。


「何してるにゃっ、葵っ!」


知った名前に遅くゆっくりとした時間は急速に早回しへと変化し始める。


「……縁君」


呼ばれた俺の名で、俺もまた名前を言い返した。


「……てん……あおい……?」


マントを肩から掛け、先が折れたとんがり帽子を被り、相棒に黒猫を連れた、一番ポピュラーな魔女の姿をした天柚葵がそこにいた。


「……どうして?」


それに応えてやることはできない。


俺よりも早くこの世界にいる事が、緋衣を襲っている事が、なによりプレイヤーとしてここに居る事が、俺に想像以上の混乱を与えていた。


「その格好…………」


「私は…………」


「……恥ずかしくないか?」


その所為か俺は一番くだらないことを口に出していた。


「へ?」


一瞬呆けた葵が自分の姿を眺め思い出している。


恵まれた体型には似合うであろう肩から胸まで開いた上部分に、短すぎる気がするスカート。一見して露出が高い。葵も恵まれていれば似合ってはいただろう。


確認を終えた葵が視線を俺に戻し、瞬きを数回する。


しだいに顔を真っ赤に染めた後、


「きゃっ」


身を縮こませた。


口に出してから思う。幸一の影響が感染(うつ)った。


「……悪い」


緊迫していた空気から気まずい雰囲気が流れる。


そんな雰囲気を、猫の激が戻そうとした。


「ち、葵の知り合いだったかにゃ! だが、ここで甘えは許さないにゃ!」


だが、


「訊きたいことを色々あるんだけど訊いてもいいか? 答えられないのはいいから」


「はいっ、なんでも訊いてください。頑張ります!」


俺にも葵にも戦う意思はなかった。


「にゃ~~~~~っ! 言うこと聞くにゃ葵っ!」


「クロッ、静かにしてて!」


「にゃにっ!?」


二人の上下関係のやり取りは置いといて先に済ませなければいけないことがある。俺の本来の目的だ。


「その前に緋衣に返すもの返してからでいいか?」


「鍵……」


「にゃにょ!?」


猫も噛むんだな、と思いつつどういう原理で喋っているのか不思議に思う。


「あの……やっぱり返すために来たんですよね?」


神妙な面持ちで葵が確かめるように尋ねてくるが、その返答は口に出すまでもない。学園でこの話を葵にしてからずっとそう言ってきたからだ。


「あの…………縁君も願いがあるからこの世界に呼ばれた。それなのに返してしまっていいんですか?」


さっきまでの葵が醸し出す柔らかい雰囲気はない。そこにあるのは決意を表面に出しているクラスメイトとしてではなくプレイヤーとしての葵。


そこでようやく俺は気が付いた。


……この状況に。


「あー、そういうことか」


俺が鍵を返しに来たことで緋衣と出会うのは必然的なものだが葵と会うのは偶然とは言い難い。それならなぜここに葵がいるのか。


「プレイヤーはプレイヤーを減らしてこそ意味があるにゃ。願いを叶える為に他のプレイヤーの願いを喪失させるにゃ。葵はお前からの情報でそこにいるプレイヤーを消すにゃ!」


それがこのアウグーリデセオのルール。


「それはお前も同じはずにゃ!」


言われてピーターとのやり取りを思い出す。でも、あの時と同様俺には叶えたい願いがない。少なくとも今はまだ。


「残念だけどその願いはまだ見つけていない。だから、俺は緋衣に鍵を返す」


「バカにゃ! その時の為に敵を消しておくのは当然のことにゃ!」


「なら、願い事は俺には無いままかもしれないな。俺がここに来たのは偶然に近かった。だからこそこの世界のルールがそうだったとしても俺がそれに従う理由はない」


「ふざけたことをにゃ……」


そう言われても俺の意思は変わらない。


「にゃら、お前はここで消えるべきにゃ。葵構えろにゃ」


「嫌。私は縁君を敵として認めない」


「なぜにゃ!? まさか葵!?」


「ちちち違うっ!」


「それにゃあ、プレイヤーとしての立場を放棄するのにゃか!」


「しない。私は助けたい人がいる。それが願い。それがある限り私はこの世界にいなきゃいけない」


葵も揺るがない。葵が決めたことは葵自身が覚悟して決めたこと。仮に俺の行動が正しかったとしても葵は決めたことの為に進む。


そして、俺もやるべきことをする。


落ちた鍵を探すために言い合いをしている二人から離れた。


鍵は近くに落ちていたはずだ。葵と話し始めてからほとんどその場を動いていないし、木の葉の上に落ちていた白い鍵は目立ち辛い場所にあったわけでもない。


「あれ?」


――だったはずなのだが、その鍵が見当たらない。勘違いかと辺り一面を見渡しても、緑と茶の色の中に白がぽつんとあれば簡単に見つかるはずだ。それでもないものはない。


もう少し屈んで地面との距離を縮めた時だった。


「縁君っ!?」


葵が後ろで叫んだ。


俺はその声に反応して中腰のまま振り返る。


猫が葵の側まで跳躍し、葵は手の平を俺に向けている。


猫が笑う。


ようやく、俺は何かがおかしいことに気付かされた。


「まとめて撃つにゃあああああああああああああああ!」


猫の攻撃指示にそれは確信へと変わった。


狙われているのは俺じゃない。葵が俺を消すタイミングはいくらでもあった。それに、狙うなら俺が後ろ向きの時にでも狙い撃てばいい。それならば、考えられるのはたった一つ。


もう一人のプレイヤーがいるということだ!


しかも、狙いを俺に絞って、


「『氷壁(アイスバーグ)』」


俺の後ろに巨大な氷の壁がそびえ立つ。


その奥で見知った武器を持ってそのプレイヤーはいた。そして、俺が氷の壁との距離をバックステップで飛び退いた次の瞬間、黒刀が壁を切り裂いていた。


「なっ!?」


林檎と喧嘩していた時と同様に髪を結び、袴を軽量化したような姿で、プレイヤー緋衣月華はそこにいた。


唖然と何が起きたのか驚いている最中、傷ついた氷の裂け目から氷の壁が崩れ始めた。次々に地面に崩れ落ちていく氷の塊が破片も残さず消えていく。


「くっ、どうしてっ!? 縁君はあなたの鍵を返すために!」


俺よりも先に声を荒げて葵が攻撃姿勢をとっている。


「理由は一つだけだ。お前が私を狙ったのと同じ。まさか鍵が戻ってくるとは思っていなかったが、それには礼を言う。でもそいつはこの世界にいる私をバカにしている!」


この世界のルールを考えれば筋は通っている。所詮俺のしたことは自己満足でしかないということだ。


「だから言ったにゃ! 二人とも撃てば問題なかったにょに、そいつを守るだにゃんて。しかも、あのかたにゃを持っているのは『七番目の流転(ブルージーミラージュ)』に間違いにゃいにゃ」


「二つ名持ち……」


「また分からない単語が出てきたな……」


知らないことがまだまだ多そうだが質問をしている暇はなさそうだ。緋衣は刀を構え直し、臨戦態勢を解こうとする気配はない。


「葵! 奴のプレイヤー名を調べて一旦退くにゃ!」


「『プラティカ・調査』!」


なにやらアイテムを使い、すぐに葵は行動を変えている。


「プレイヤー名『緋月』です! 縁君一旦元の世界に戻ります! 私に捕まってください!」


「何してるにゃ!? そんな奴ほっとくにゃ!」


「遅い!」


葵が俺に手を伸ばしたところで緋衣――ここでは緋月という名のプレイヤーが飛び込んできた。


鍵の経緯からしても倒れている間に緋月は俺が初心者(ルーキー)だということに感づいている。その証拠に葵に警戒していても俺には全くの注意を払っていない。まるで通り過ぎるついでに消すと言わんばかりの行動だ。


「縁君っ!?」


「ほっとくにゃ!」


俺の体を切り裂こうとする瞬間に葵が悲鳴に近い声で俺を呼んだ。


動じる必要はない、必要なのは確認するための度胸だけだ。それも、こんな状況になってみれば簡単になる。


「『プラティカ』」


「――ッ!?」


「――ッ!?」


「――ッ!?」


振り落された刀が忽然と消えたことで三者三様の驚きで俺の姿を見ていた。緋月にいたっては振るっていた得物が消えたことでバランスを失い着地に手まで使っている。


「な、なにをした?」


安堵していたことを悟られないように、手に移った刀を見ながら返事を返す。


「さぁ?」


この言葉には偽りはない。それでもいくつか分かったことはある。


「元の世界でなら説明できることがあるけど」


説明してもいいが、この世界で話をするには俺の立場はあまりに脆弱すぎた。


「『プラティカ・黒破』」


緋月の呪文で『黒破』という名の刀が持ち主に戻る。


刀を調べながら俺を睨みつけてきた。それでもさっきまでの好戦的な対応には移れない。なにせ、突然武器が俺の手に移るのに無暗に突進しては危険が付きまとうからだ。


「くそ」


悪態を吐いたうち緋月が二度目の呪文を唱えると、その場から姿を消した。

おそらく元の世界に戻ったのだろう。理由はどうあれ何が起きているのか調べる必要があると判断したはずだ。


「縁君……」


「ふー、俺も一旦元の世界に戻るよ。話は向こうでしよう。実はここに来る前に他のプレイヤーにも会っているから、もしかしたらここに来るかもしれない」


「……わかりました。あ、帰るためのアイテム持っていないですよね?」


「いや、俺にはこれがあるから」


「……時計ですか?」


「これも説明するよ。とりあえず、話は明日にしよう。さすがに疲れた」


「そうですね。私も整理が追い付かないです」


葵の疲れた表情を最後に俺は帰還用の時計が起動し始めた――。


その姿を見られているとも知らずに……。


             ◆


三人のプレイヤーが現実の世界に戻る少し前、我執と名乗った少年の目に交換で得るはずだった武器を捉えていた。


そしてその武器を持っているのは剣士……というよりは侍に近い格好のプレイヤーの手の中にある。


「どうなってるんだー? ラストプレイヤーのアイテムじゃないのか……、そういえば、あいつの初期装備は本だったはずだし……ああっ! もういいや使っちゃうよー、ほんと使い勝手の悪いアイテムしかないよー『プラティカ・盗聴』」


使用した反動で一瞬の間、音という音が遮断される。その後、まるでライフルで照準を定めたようにその三人の周りの音を拾い集めた。


『――――あのかたにゃを持っているのは『七番目の流転(ブルージーミラージュ)』に間違いにゃいにゃ』


「ぶっ!?」


突然入ってくる情報に、吹き出して少年は口を塞いだ。


「二つ名持ちー、それも『七番目の流転(ブルージミラージュ)』って」


少年がこの状況に首を突っ込むべきか考えている途中、なにやら争いが激化していた。


狙われているのはラストプレイヤーだったが、元々ラストプレイヤーを消したところで何かを得られるものはない。だからここで消えてしまうならそれで手間が省けるだけ、少年が狙ったのもライバルを増やさないためのものだ。


少年はそう思いラストプレイヤーが敗北するのを確認――するはずだったのだが、


「またっ!?」


少年がラストプレイヤーと対峙した時の不可思議な現象がまた起きていた。黒刀が突然ラストプレイヤーの手の中に現れる。


その光景は少年の脳裏にある計画を植え付けた。


その計画とは――、


①黒い刀の持ち主が『七番目の流転(ブルージーミラージュ)』であるということで、ラストプレイヤーは危険に反応して黒刀を自分の手元に移動させる。


②そのたびに、『七番目の流転(ブルージーミラージュ)』は自分の元へ黒刀を戻すはず。


③その一瞬の隙に、『盗賊の手袋』で黒刀を奪い取る。


④結果、黒刀は少年の物。(仮にラストプレイヤーの手に移動することがあっても、本来の持ち主事態は変わっていない)


「くくくっ」


ある種の幻想に近い計画は、あまりにおざなりな物だったがその可能性はゼロでもなかった。


「『プラティカ・情報』」


その計画の為に今度のアイテムは『七番目の流転(ブルージーミラージュ)』に使われた。それもあくまで間接的に、一切の存在の情報を与えないように。


「あの魔女は……敵対してるみたいだからきっとオールオーケーだよー」


その発言の中にラストプレイヤーの立場が組み込まれていないからこそ、この計画は穴だらけだった。


しかし、この計画は誰も知らないところで勝手に形を変えていく…………。



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