第5話 異世界に来て初めての夜。
最近、元魔王改めジュノのせいでめちゃくちゃ心の中で突っ込んでいる。
一人の時は、そんなことあるわけなかったから正直疲れる。
あれから、とりあえず変な空間から出してもらってジュノに街を案内してもらった。
そして異世界に来て1日目の夜となった。
賃金なんて持ってるはずがないわけで、必然的に野宿となった。そして、ジュノは宣言通り二人きりになった途端、元の人間の姿に戻った。
やっぱり人間の姿になるのか…。まぁ、こんなやつのこと関係ないか。あたしはここで楽しむと決めたし。こいつならほっといても、女の子が寄ってきて世話してもらえそうだし。今夜のうちにでも一人になろう。
「きれいな街ですね。1000年前は、高尾も荒れていたのに。」
100年もたったら変わるでしょ。普通。ちなみにここは丘の上で、街が見渡せる。そして街にいるときに気づいたが、お城もあった。
「ねえ、ジュノ。」
呼びかけると、嬉しそうに「何ですか?」とコテンと首をかしげる。普通の女の子はこれが可愛かったりするのだろうか?そんなことを思いながら、気になっていたお城のことを聞く。
「あぁ、あの城ですね。あの城はここ『リセル帝国』の皇帝陛下たちが住んでいるところです。そして、今日歩いてたところは城下町の、セルフィです。」
丁寧に説明してくれる。魔王になったからと言って、知識が入ってくるわけじゃない。まぁ、魔法とかの知識なら入ってきたけど。
魔王とは、『魔法界の王』ということらしい。そして魔界とは、『魔法界』ということらしい。
あたしはてっきり魔物とかうじゃうじゃいる、あの魔界かと思ってた。あたし等の世界でいうようなあれ。それで、魔王は悪者。みたいな。でも、違うらしい。やっぱり世界が違うと言葉の意味も違ってくるのかぁ。なんて感心してる。
あたしにこの世界の言葉がわかる理由は、ジュノが魔王の時に何らかの魔法?か何か魔王の特権的なもので何かをしたかららしい。『何か』っていうのが曖昧だが、ジュノ自身もあまり理解していないらしい。
「僕は疲れたので、先に寝ますね。…逃げようとしても無駄ですよ?ユウラの位置はいつでもわかりますから。」
笑顔でさらりと言われた。
そうだった。忘れてた。あたしジュノに居場所が分かるようになってるんだ。噛まれたから…。くそっ!!絶対仕返ししてやる。覚えてろよ、ジュノめ。
とりあえず、無駄な抵抗はやめてあたしも寝よう。
まぶしい。そう思い目を開けるとふかふかのベッドの上だった。驚きながらも寝返りを打つとジュノの顔があった。…顔?!あたしは驚いて思わずジュノを叩き起こす。こんな時ぐらい年上なんだから、役に立ってもらわないと…。
「ぐぇ!!」
変な声を出したが気にしない。だって起きたらジュノと寝てるなんて、絶対嫌だ!!
ボンッ
と、音がしてジュノが猫の姿になる。
「痛い…。ですよ、ユウラ。」
「そんなこと言っている場合じゃない。ここどこよ?」
ジュノもあたりのことに気づいたようで、慌てている。
そんなジュノの姿にため息を吐きながらも、ジュノじゃないのか。と少しほっとした。あって1日もたってない人をこんなところに連れてくようなやつではないのか…。
ジュノを信じるわけではない。でも、今は少しでもジュノを頼らないとここでのことは何一つわからないから。
あたしたちが、言い争うこと数分。
コンコンコン
ドアをノックする音が聞こえた。