第12話 あたしは人間?
夢…誰かが語りかけてた。
誰だろう?あたしの頭の中に、直接語り掛けるように響いてきた。
頭が痛い。思い出そうとすると、鈍く痛む。
でも大事なことを知らせるような、そんな夢のような気がする。それでも思い出せないなんて、なんでだろう?…ま、めんどくさいからいいか。
あたしは思考を手放し、髪を整える。
自分のことに無頓着なあたしだが、これだけはしている。「髪は大事にしろ」と誰かに言われたから。
バンッ
突然ドアが開いたことにさほど驚きもせずに、あたしは大きくため息をつく。
「朝早くにごめんなさい。どうしても確かめたいことがあるんです。」
いつになく緊張した面持ちで、ジュノがあたしの部屋に入ってきた。
「何、どうかしたの?」
そっけなく答えると、今更言うかどうか迷ったかのようにぐずぐずし始めた。
はっきりと言わないジュノに、少し苛立ちを覚える。
「はっきり言って。何一つ始まらない。まだやらなくちゃいけないこと山ほどあるから。」
少しきつめに言うと、ジュノは決めたように大きく深呼吸する。
大げさだななんて思いながら、あくびをする。
「ユウラは、本当に人間ですか?」
・・・何を言ってるんだろうかこいつは?頭でもおかしくなったのか?
あたしは、物心がつくかつかないかぐらいで捨てられたのだ、人間の母親に。
だから、あたしは人間。そんなの当り前。今更確認する必要なんてない。
「当たり前でしょ。あたしは人間の母親に捨てられた。だから、人間。そうでしょ?」
ドアの向こうにアリアが隠れていたので「アリアもそう思うでしょ?」と話を振る。
すると、もじもじと「すみません。盗み聞きするつもりはなかったのですが…」と言って、部屋にはいてきた。
ジュノも気づいてたらしく、軽くため息をついていた。アリアに見つからない程度に。
「そうですね。変な質問をしてすみません。気を悪くしましたか?」
「別に。まぁ、そう思うのも不思議じゃないよね。魔王と勇者だし…。」
自分に言い聞かせるようにそう言うと、ジュノは「すみません。」ともう一度謝ってきた。
そんなに謝られるとなんだか、こっちが悪いことを言った気分になるからやめてほしい。
それから、しょぼんとしているジュノを慰め3人で朝食を食べた。
ここはアリアの家らしく、使用人がたくさんいた。シェフももちろんいる。
アリアは結構なお金持ちの家の子なのだそうだ。だから、朝食はすっごく豪華なものだった。
食べ終えたころにまた使用人がやってきて、お皿を下げた。
使用人は、なんでこういつもぴったりなタイミングで出てくるのか不思議だけど、今度聞いてみよう。
あたしはどうしてこの世界に来て、魔王と勇者になれるんだろう?この世界の住民というわけでもない。
この世界には、最近来たとは思えないほど体が本能的に馴染んでる。あたしはこの世界の人間じゃないはずなのに。魔族でも神族でも獣人でもない。ただの、高い知能も何もない、ただの人間。
もしあたしがこの世界の人間だと仮定して、なんで前にあたしがいた世界にいたのかがわからなくなる。
前の世界では「勇者召喚」「魔王召喚」なんてないんだから。
こっちの世界にいた人間が、あたしがいた世界に行けるわけない。
魔王とか神族長は知らないけど…。
でも、特に身体能力が高いわけでも、魔法のような説明のつかない力を使えるわけでもないからあたしは、あたしがいた世界の人間。
これに、間違いなんてない。
自分に言い聞かせるように、何度も何度も同じ言葉を繰り返した。




