7話
衣類、腐らない食べ物、水などの荷物を急いでリュックに詰め、準備した。
もともと、ここの世界に来てから物をあまり増やしていない。
持って行くものは、限られていた。
ただ、荷物になりそうな薬を調合する道具も持って行きたかったのだが、却下された。
兵士いわく、あちらに行って調合したければギルに道具を買わせればいいらしい。
ここにある年季の入ったものではなく、最新で新品の道具を一式揃えてくれるだろう、とのことだった。
・・・技術の無償労働?それとも知識になるのか?
本人、もしくは身内に病気の人がいるとか?
それとも、薬を売って金儲け?
麻薬系の薬は作ったことないから作り方わかりませんよ?
まさか、証拠の残らないような毒を作れとか?
作れなくはないけど、さすがにやりたくない・・・。
考え出したらキリがない、道中それとなく聞いてみよう。
「準備できました。」
外で待っていた二人に声をかけた。
「早いね、じゃあ行こうか。」
「・・・。」
ギルは私が持っていた荷物を自然に取った。
そのまま歩き始めたので、私は後ろを付いていった。
歩く速度は詩帆にあわせてくれているのか、とても歩きやすかった。
歩いている順番は、兵士、ギル、私だ。
兵士は少し離れたところを歩いているのだが、ギルは相変わらず私にベッタリついて離れない。
ちょうどいいので、先ほどまで疑問に思っていたことを聞いてみた。
「向こうについたら、私は何をすればいいですか?」
「好きなことをすればいい、金は私の資産なら好きなだけ使って構わない。ただ城から自由に出入りはしないでほしい。城から出かける場合は私に言ってくれ。」
「そうですか・・・。」
どうやら、金儲けではないようだ。
そりゃそうだ、どこかの隊を任される人が金に困ることはないよね。
少し疑問だが、屋敷ではなく城から出てはいけない口ぶりだ。
城で使われるということだろうか・・・。
まあどちらで使われようが、これからの未来は暗い・・・。
その会話を最後に三人は黙々と歩いていた。
5時間ぐらい歩いただろうか・・・。
日が少し傾いてきて、空が橙色にそまり始めていた。
二人は野営できるところまで早く行きたいのか、サクサク進んでいくのだが、詩帆の歩幅はだんだん縮んできた。
前を歩くギルが、生えっぱなしの草を足で倒して詩帆が歩きやすいようにしてくれていたにも関わらず、もうクタクタだった。
この世界に来て、以前より体力はついたのだが前を歩いている軍人二人はレベルが違う。
二人は何か小声で話をしていて、詩帆が遅れていることに気がついてないようで、速度を変えずに進んでいる。
・・・少し休憩して二人に追いつこう。
腰には猛獣よけのポプリをぶら下げてるから、襲われることもないし。
二人とも私がいないことに気がついたら、足を止めて休憩がてら待ってくれるだろうし。
気がつかなかったら、日が暮れてからはここを動かず、明け方になったら小屋に帰ろう。
ここは幸い温暖な気候のため、夜は少し肌寒いが寒さで死ぬことはないだろう。
いままで言うことを聞いてきたが、これが最初で最後の彼らに対する抵抗のつもりだ、微々たるものだが。
というか、捕まった後のことを考えると大それたことができないだけだが・・・。
ただ、リュックをギルに預けたのは、マズかったな。
食料も水もすべてあの中にいれてある。
だが、二人に追いつく体力は残っていないため、詩帆は大きい木の下で座って一息ついた。