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5話


 ギルがここに来て、3ヶ月が経った。



 はっきりいって、この男は使える。

 重労働だった薪割りはもちろんのこと、毎朝1キロぐらい先にある岩場から出ている湧き水を汲みに行くことや、大きい籠に入れると結構な重さになる薬草運び、さらには小屋の修理まで自ら率先してやってくれた。



 最初の頃は私のことについて、いろいろ聞いてきた。

 もちろん適当にはぐらかしていたら、しばらくして聞いてこなくなった。

 そして、元々口数は少ない方なのだろう。

 最近は必要なことしか会話をしていない。



 そして、とても紳士だ。

 ベッドは一つしかないので、ギルは貴族だし譲ろうと思っていた。

 そもそも、師匠が居たころは床に厚めの毛布を敷き、そこで寝ていたので師匠が居た頃だと思えばなんてことはない。

 だが、ギルは頑として私を床で寝させないと言った。

 私としては柔らかいベッドの方が断然いいのでありがたい申し出だ。

 自意識過剰ながら襲われるかもと思っていた夜も、まったく何もない。




 私にはかなり有益な方向になっている。






 だが、やりにくいことも多々ある。

 ギルはなにかと私の後をついてくる。

 薬草摘みはもちろんのこと、小屋のすぐ近くで採る食事用の野草摘みまで。

 さらには、川で水浴びをする時もついて来た。

 猛獣が危ないから見張るとかなんとか言ってきたので、毎回大丈夫だったと言っても聞いてもらえず仕方なくだ。もちろん、水浴びの最中は後ろを向いてもらっていた。


 そこまではまだ妥協するが、さすがにトイレまでついてこようとした時は怒った。

 ここには、トイレいわゆる便所がない。その辺の草むらでする。

 いくら草がボウボウに生えていても近くにいると見えるのだ、用を足しているところが。

 


 その時はかなり怒鳴ったので、さすがの温厚な貴族様でもキレるかな?と思ったが、肩を落としたのみで何も言い返してこなかった。

 





 おそらく、私が師匠に連絡もしくは逢ったりするのではないかと、監視しているのだろう。

 この間は一ヶ月に一回きてくれる行商人に殺気だっていた。

 私と行商人が話をしていると、後ろからやってきて会話の妨害をするのだ。

 気にせず会話を続けていると、行商人に剣を抜き、切りかかろうとしていた。

 おそらく、行商人を脅して師匠の居場所を聞きだそうとしていたのだろう。

 あの時は本当に怖かった。

 だが、それがギルの本性なのだろう。


 

 なので、この働きぶりも私を信用させて油断させるものだと思っている。

 まあ、私も愛想を振りまいて信用させようとしているので、どっちもどっちだ。


 

 そして、疑問なのがギルは一切城に連絡をいれていない。

 ギルが私に張り付いている分、こちらもギルを監視しているのだからよくわかる。

 王命で来ているのならば、王に細かく報告を入れると思っていたのだが、まったくその素振りが見られない。

 荷物をチェックした時持っていなかったと思うが、何か携帯ような瞬時に通信できる器具がこちらにもあるのだろうか。

 なら、その器具で師匠と連絡を取ることができるかもしれない。

 なんとか、ギルの隙を作りたい。


 





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