4話
朝食はいつも通り、固めの手作りパンとスープだ。
栄養をとらないと治るものも治らないので、一応男のぶんも作った。
皿に盛り、机に置こうと後ろのほうを向いた。
男は先ほど会話した所から動いておらず、どうやら詩帆が料理しているのを見ていたのだろう。
目が合ってしまった。
「よかったらどうぞ、食べてください。食後には薬を飲んでください。」
パンとスープの隣に緑色をした液体を器にいれて置いた。
「毒は入ってませんから。不安なら飲まなくていいですよ。」
「いや、頂こう。」
男はそう言い、椅子に座ってパンとスープを食べだした。
詩帆も男の向かいの椅子に座り、パンを手でちぎり、口に入れた。
詩帆が半分食べ終わる頃には、男はすべて食べおり薬を飲んでいた。
飲み終わると、席を立つわけでもなく、詩帆が食べているところをジッと見始めた。
見られていると、とても食べにくい・・・。
急いで口に入れ、飲み込むように食べた。
食べ終わる頃、男は話し出した。
「薬師が帰るまで、ここに滞在させてもらう。もちろん、滞在費は出す。構わないな?」
「迷惑です。怪我が治ったら帰ってください。」
「そもそもこの森は、我が国の領土だ。所有権は王にある。」
「・・・。」
それを言われると何も言い返せない。
この男が勝手にこの森に来ているのなら追い返せるが、王命で来ている。
嫌だといえば、私が出て行かなければならなくなる。
不満そうな表情が顔に出ていたのだろう、男は話を続けた。
「ここでの生活は大変だろう、私を自由に使ってくれ。」
確かに大変だ。特に薪割りは体力を使う。ありがたいとは思う。
というか問題はそこではなく、異世界人ということがバレる可能性大というところ。
だが、こちらには拒否権はない。
これはもう、しかたがないだろう。
「わかりました、よろしくお願いします。」
「お前に使われるなら、私もうれしい。役に立つよう、努力する。」
眩しい笑顔だ、・・・そして、気になるM発言。
気にはなるがこの男の性癖は置いといて、しばらくの間油断ができない。異世界人だとばれない様にしなければ・・・。
そして隙を見て、なんらかの方法で師匠に帰るなと伝えたい。
隙を作るにはまず相手に信用されないと・・・。
詩帆は精一杯の笑顔を作った。
「私はシルビアといいます。あなたのお名前は?」
「ギルバートだ。ギルと呼んでくれ。」
当然、本名は明かす気はない。前々から考えていた偽名を使った。
「では、ギル?これからよろしくお願いしますね。」
「こちらこそ、よろしく頼む。」
出だしは好調だ。
詩帆は騙しきってみせると心の中でほくそ笑んだ。