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2話

 

 詩帆は急いでいた。

 先ほどまで摘んでいた薬草は、収穫してから水に濡れると品質が下がる。

 幸い、この場所は小屋からそう離れていない。

 このペースで歩けば、雨が降る前に着けるだろう。






 足元の草に足が絡まないよう下を向いて歩いていると、鮮やかな赤色が草に付いていることに気がついた。

「なにこれ・・・血?」

 血が付いているほうへ歩いていくと、どうやら血は小屋のほうへと続いているようだ。




 一瞬、師匠が怪我をして帰ってきたのだと考えたが、それは違うだろうと思った。

 この森には獰猛な動物がたくさんいる。

 そのため、動物たちが嫌う匂いの薬草を混ぜたポプリの作り方をまず初めに教わった。

 それを持っていれば、まず動物たちは避けて通る代物だ。

 その教えた本人が、持っていない訳がない。

 さらに森の外で負った怪我がある場合は、治るまで森には入らないだろう。

 血を好む肉食系動物の標的になりやすいのは、わかりきったことだ。




 小屋に近づくにつれて、血が付いている量は増えてきているように思えた。

 




 小屋が見えてくると、唖然とした。

 ドアを背もたれにし、血まみれの男が座っていた。

 急いで駆けつけ、男の意識を確認した。

 意識はないようだが、呼吸はしている。死んではいないようだ。

 


 詩帆は男を引きずるように退かし、ドアを開けた。

 そしてまた、男を引きずり家の中へ入れた。

 ベッドに寝かそうとしたが、詩帆の力ではとてもベッドの上に上げられない。

 しかたなく、シーツを床に重ねてひき、その上に男を乗せた。



 「そうだ、薬!」

 この男に必要なのは、出血を止めるための止血剤、外に流れている血の量から考えて増血剤、傷口が膿んではいけないための化膿止め、あと傷口から熱がでるだろうから解熱剤が妥当だろう。


 とりあえず、傷口を消毒し、止血剤と化膿止めを布に染み込ませ、傷口に貼った。


「・・・ウッ!!!」

 薬がしみるのだろう。小さなうめき声が聞こえたが、意識は戻っていなかった。

 


 後は増血剤と解熱剤は飲ませなくてはならない。

 液体なので、飲みやすいだろうが今は意識がない。

 少しでも飲んでもらいたいので、背中にクッションを置き、体を起こすようにさせ、口元に薬を持っていった。


 「少しでもいいですから、飲んでください。」

 口の中に少し垂らしてみた。

 すると、すこし咳き込んだが喉仏が上下し、飲んだことが確認できた。

 


 コップ1杯分ぐらいの量を1時間ほどかけ、なんとか飲ませることができた。




 ホッと一息つき、詩帆はこの男を眺めた。

 

 年は20代後半から30代前半くらい、髪は白髪と思ったが光が当たると輝くので銀髪。体格はかなりいい。

 今は寝ている横に置いているが剣を腰に携えていた。

 鞘にはところどころ傷があるし、握るところはすこし剥げている。

 よく、この剣を使っている証拠だ。

 兵士だとしても剣に装飾があるので、国お抱えの兵士以上の身分だろう。

 地方の兵士や、自衛団だと剣にお金をかけるぐらいの給料はもらえないはず。



 服装は、青いシャツに白のズボン。この森に入るにしては、ずいぶんな軽装備だ。

 生地を触ってみると、すごく柔らかい。生地はいい物を使っている。


 

 荷物も失礼ながら勝手に見ることにした。

 背負っていたリュックを開けてみると、水、乾物、数着の着替え、そして破れた護符だ。

 護符は旅を安全に過ごせるように術士が念力を込めて作るものだ。効力はかなりある。これを持っていると人災、災害、それと凶暴な動物に出会うことはまずない。

 だが破れているので、効果が発揮できなくて森の動物たちに襲われてしまったのだろう。


 


 というか私が気にすべきところはそこではない。

 そもそも護符は、一般人には手が届かない代物だ。

 持っているとすれば、金で物を言わす大富豪、自分で作れる術士、そして術士を雇っている貴族だ。

 

 

 おそらく、この男は貴族だろう。大富豪はこんな所にわざわざ来ないし、術士にしては持ち物が少ない。貴族ならば、師匠が一応有名な薬師らしいので、王命で来た可能性がある。

 実際、この人とは違う人物だったが、2年前に一度貴族が来たことがある。





 非常にまずい。異世界人とバレるだけで、おそらく何らかの仕打ちを受けるだろう。

 そして、アザの持ち主の所に連れて行かれ、強制労働もしくは監禁。

 もちろん、師匠の言うことがすべて正しいとは思わない。

 だが可能性があるかぎり、できるだけ無難は選択をしたほうがいい。

 


 かといって、このまま外に放り投げるのも人としてどうかと思う。




 

「まあ、なんとかなるか・・・。」

 



 相手は貴族だろうと所詮怪我人だし、治れば即追い出せばいいのだ。

 それに自分と同じアザの持ち主以外は、見た目だけでは異世界人だとわからない。

 こちらの世界の常識など話されるとお手上げだが、それなりの知識は師匠から教わったので大丈夫なはず。

 念のため、会話は必要なこと以外は話さないようにしよう。



 詩帆は気合を入れるため立ち上がり、手にグッと力を入れた。







作者は薬の知識は、まったくありません。

おかしいところがあるとは思いますが、そこはスルーしてください。


意識のない人間に飲み物を飲ますのは危険だと思うので、マネしないでくださいね。

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