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1話

初投稿です。


不定期更新予定ですが、作者は飽き性のため、かなり間があいたりします。

できるだけ、続けたいと思います。

 「雨が降り出しそうだわ。そろそろ帰らなくちゃ。」


 詩帆は空を見上げ、今にも降り出しそうな雨雲を見つめ、そう呟いた。

 採っていた薬草を急いで籠に詰め込み、薬草を落とさないように肩に背負った。






 私がこの世界に来て、3年が経った。

 向こうの世界では、大学には行く気はなく早く自分で稼ぎたくて、地元の企業を中心に就職活動をしていた。

 ようやく、30社くらい受けたころ内定が決まり、自室で浮かれていた矢先、気がついたら森らしき場所に立っていた。




 最初は、何が起きたのかわからず、ただ呆然と立っていた。

 辺りを見回しても、木々が生い茂るだけで人っ子一人見当たらなかった。

 どうしたもんだと考えていたところ、あまり離れていないところから狼らしき遠吠えが聞こえ、慌てて逃げるように走りだした。

 

  

 普段から運動をしなかった体力のない現代人だ。

 当然、10分も走らないうちに息切れし、足が止まった。

 息を整えながら周りを見渡してみると、すこし離れたところに古い小家がポツンと建っていた。

 やっと、助けを求められると思い、足早に近づき、木でできたドアをノックした。


 これが、この世界で生きるためのノウハウを教えてくれた、師匠との出会いである。




 ほとんど私も理解できていないが、事情を説明し、助けを求めた。

 そして師匠からの説明をうけ、ようやくここが私のいた世界ではなく異世界だということがわかった。

 



 この世界では、時々異世界人が流れてくるらしい。

 流れてくる人々は、人種、性別、年齢など関係なくバラバラ、そして現れる場所、原理などもまったくわからないそうだ。


 

 ただ、こちらにきた異世界人は、部位は個人によって違うが、体の微妙な位置にアザが出る。

 実際、私にもアザがでていた。太ももの内側の上の辺に、桜の花のようなアザができていた。



 このアザは、この世界で同じアザをもっている人物の足りないものを補う異性である、という目印みたいなものだそうだ。

 足りないものというのは、知識、技術、精神力、体力など人それぞれらしい。



 補ってくれるのなら、お互いにいい関係を築けそうだが、そうではない。

 たとえば、同じアザの異世界人の知識、技術をひたすら使わせたり、限界ぎりぎりまで無茶な労働をさられたりする。もちろん、無償労働を強要される。

 精神面に関しては、異世界人に執着し、ひたすら依存する傾向がある。その場合は、主に監禁される。一生、外を出ることを許されないだろう。


 

 もちろん、悪いことばかりではない。

 いい関係を築けたら、お互い信頼し合える生涯のパートナーとなることだってある。



 だが問題は、こちらの世界のアザの持ち主だ。

 なぜか決まって身分の高い人間がもっている。

 特に貴族は、生家を気にする人が多い。こちらの世界の爵位を持っていない家の生まれの人々でも見下しているのに、どこから現れたかもわからない異界の人間を対等に接してくれる貴族はそうそういない。

 貴族側からしてみれば、衣食住を保障してやっているのだから感謝しろ、というところだろう。

 

 異世界人から見れば勝手な言い分だが、なんせここは身分社会。

 貴族の言い分に逆らえる人間は、王族のみ。

 王族も貴族をいちいち監視なんてしている暇はない。 

 よって、貴族は異世界人を使いたい放題らしい。

 

 

 


 なので、私は3年経った今でもこの森から出ていない。

 師匠から薬草の知識を教えてもらい、薬を作り、それを1ヶ月に1度来る行商人に売り、そのお金で食べ物などの生活必需品をその行商人から買っている。

 周りに村や町は一切なく、もちろんひと気はいっさいない。

 おまけに、3ヶ月前に師匠は旅に出た。

 今や会話できるのは、その行商人だけだ。

 寂しくはあるが、人がいる場所に出て行くのは大変危険だ。

 なんせ、こちらからはアザの持ち主はわからない。だが、この世界のアザの持ち主は何か反応らしきものがあり、自分と同じアザの人間がわかるらしい。

 見つかれば、すぐさま捕まえられて強制労働もしくは監禁。



 なにが起きても自分からはこの森を出る気はない。

 寂しさよりも安全を取る。

 私は一生、この森で生きていくと決めていた。



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