第三話 文化祭
そんな淡い恋心を抱いたまま
少しずつ速さを増す季節の移り変わり、いつの間にか、時は流れて
高校二年の秋を迎えていた。
この頃の学校行事と言えば、文化祭。どのクラスも急激に盛り上がり、団結が高まると言ってもおかしくない。
あたしも、そんな盛り上がりを肌で感じて、うずうずした。
あたしのクラスは縁日の出し物で、お祭りのイメージ、浴衣を着て
いつもと違う姿をアピールするチャンスでもあった。
女子も男子も気合い十分、もうテンションは半端なく、笑いが絶えなかった教室。
ワクワクしながら、クラスのみんなで文化祭を準備してる、この感じ。
どうしようもなく心が躍った。居残りなんて関係ない、もう楽しんだモン勝ちだと思った。
迎えた文化祭当日、予想以上に来賓が溢れ、忙しさに追われて、楽しんだ。
たくさん笑って、たくさん話して
ようやく客の足取りが緩んだ頃、あたしが片思いしてる彼が来て
あたしに
「ジュース終わっちゃった?」
と一言。
初めて彼と会話した瞬間だった。
『うん、終わっちゃったょ』
と返しただけ。
胸が熱くてドキドキ高鳴った。
神様ありがとうって心の中で絶叫した瞬間。倖せって思った。
隣にいた友達がニヤリと笑って
良かったね〜と肩をつつかれた。
きっとその時のあたしは顔が緩んで赤くなってたと思う。
今も覚えててる。この感じ。
文化祭の後はクラスで打ち上げ、学校から離れてファミレスへ。
ワイワイ親睦を深めて、あたしは友達伝いに君のアドレスを聞いた。
懐かしい、緊張感とこぼした笑顔。
ぐっと噛みしめた喜びを
いつも忘れたくなかった。
打ち上げの帰り道、君にメールをして、届いた返事。
「お疲れさま」
少しやり取りした日、あたしは寝るまで、そのメールを見つめてた。