夢中
私は今日、人が死ぬ夢を見た。
正確には、人――それも両親を殺す夢だ。
私は夢の中で、包丁を振り回していた――――
……駄目だ、考えては。
私は悪い夢を掻き消す為に、頭を軽く振った。
忘れよう。
所詮夢なんだから。
私は手早く着替えをし、二階の部屋から出た。
キッチンは一階だ。
ゆっくりと階段を下り、階下へと向かう。
大丈夫。
また今日はいつも通り始まり、まず母と父が明るく笑いかけてくれる。
私達は挨拶を交わし、ご飯を食べ、一日を開始する――
ああ。
そういえば。
私が夢の中で両親を殺害したのは。
キッチンだったな――――――
キッチンのドアを通り抜ける。
死んでた。
二人が。
血塗れ。
倒れて。
包丁が。
刺さって。
……あれ?
なんで?
嘘だ。
いや、現実だったのか?
解らない、解らない。
何も。
私、殺してなんてない。
そんな理由、ないもの。
ないはずだ。
格別に変わった事なんか。
……ただ昨日。
母が。
私と彼の仲を引き裂いた。
父が。
成績の落ちた私の顔を殴った。
それだけで。
別に恨みなんて。
いつもと同じ事じゃないか。
いつも、いつも、いつも、いつも、いつも、いつも、いつも、いつだって。
そうだったじゃないか。私はずっと、家族と過ごす毎日が楽しくて――――――
そんなわけない。
私の邪魔ばかりする母が好きなわけない。
私に暴力を振るうばかりの父が尊敬できるわけない。
なら、私はずっと、
殺したいと、思ってたんだ。
積もりに積もった私の本当の願いを。
私は果たしたのだ。
首から多量の血液を流す母。
心臓にまるで杭のように包丁を突き立てている父。
動かない。
ぴくりとも。
何も感じられないその姿。
もう私に何も出来ない。
動かない両親。
ああ――――
私は自分の願いを叶えたのか。
それが、私の夢だったのか。
今も私は、夢の中に沈んでいるのだろうか――――
目を覚ました私は、自らが望んだ新たな夢の中で、
溺れている。




