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ナズナと桃  作者: 花夜
9/13

雄介と恭弥

 

 上手(かみて)に雄介、下手(しもて)に自分と小夜、その後ろに姉さんと兄さんが正座している。

 本当なら、こんな野郎――こんな小夜を見てニヤニヤしてる奴なんかを、上手(かみて)になんてやりたくなかったが、事情を聞くまではお客様なのだから仕方がない。


「・・あの、恭弥さま」


 小夜が控えめに言ってきた。誰も口を開かず、部屋は静寂に包まれていたので、小夜の声がよく響く。

 雄介の顔が嬉しそうに、小夜を見つめながら笑っているのに気づき、


「ん?」


と言いながら、少し小夜の前に体をずらす。これなら、雄介の場所から小夜の姿は見えないはずだ。 


「なに?小夜」

「あの・・・手を、放していただけませんか?」


 手を!?!

 思わず、振り返ると小夜が怒られると思ったのか、体をこわばらせた。


「どうして?」


と小さく尋ねる。

 初めに、触ってきたのは小夜じゃないか!小夜から積極的にきたことが、今まで一度も無かったから、どんなにうれしかったか・・思い出しただけで、飛び跳ねたくなる。


「あ・・あの・・お茶を、お出ししなければ。お客様に」

「あっ・・・・ああ、そうか。そうだな。

あと、茶菓子も・・無ければ、菅田(かんだ)さんのところで買ってきてくれ。何か適当に」

「わかりました」


 手を放すと、小夜は間髪入れずに「失礼します」と言って、部屋を出て行った。

あからさまに雄介は、がっかりしている。


「お茶なんかいいのに・・・。小夜ちゃんが隣に座っていれば、それだけで、十分なんだけどなぁ」


 雄介の口から出てきた言葉に、いつでも殴れるように拳を固める。

 これを見たのか、後ろに控えていた姉さんと兄さんが、慌てたように前に出てくる。


「きょ、恭弥は今、来たばっかりで話が何も分かってないから、もう一度、説明してくれる?

 私たちも、もう一度冷静に聞きたいし。ねぇ?誠二さん」


 ブルンブルンと千切れそうなぐらい首を縦に振る兄さん。

 雄介は、面倒だなというように頭をかいた。


「説明するからさぁ、そっちのことも教えてくれない?正直、よく分からないのよ、あんた達の関係性。  町の人に、村治家の場所を訊くと、どんな用で訪ねるのか、すごい形相で聞かれるし、

  小夜ちゃんと恭弥は夫婦だって事は分かったけど、そこのお姉さんとお兄さんの関係性は、全然、教えてもらえないし。

 そっちから、先に教えて。ああ、もちろん。小夜ちゃんのことを詳しくね。俺、あの子が気に入ったから」


 気に入った!!?

 立ち上がりかけた自分を、兄さんが懸命に後ろを引っ張って止め、姉さんが「深呼吸、深呼吸」と、何とか落ち着かせようと頑張っている。

 目の前の雄介は何食わぬ顔で座っているのが気に入らないが・・・しょうがない。我慢しよう。


         *             *            *



「村治家と河瀬家について聞いたことはあるか?」


尋ねると、雄介は首をひねった。


「村治家はわかるけど、河瀬家は聞いたことないなぁ。

  あの、俺のいとこの近所にある神社の境内に住んでる川瀬(かわせ)さんの事じゃないだろ?」

「誰だ、それ!!」


雄介の目が驚いたように見開く。


「知らないの!?あの有名人を

  川瀬さんはね、今はホームレスなんだけど、国立大学を出て、アメリカの大学から『うちに来てくれ!』って頼まれた事があるぐらいスゴイ人なんだよ!

  だから、そこら辺一帯の学生は、みんな、川瀬さんに勉強を教えてもらいに行くんだ。俺もね・・」

「・・・その話、長くなる?」


 雄介は、一切、話を止めずにうなづいた。流暢に『川瀬さん』について語っている。

 お前は、どんだけ『川瀬さん』に思い入れがあるんだ!!


       *            *             *


 『川瀬さん』が神社に来た野良犬から、勉強を教えてもらいに来た田口さん(大学受験3浪)を守ろうとして、代わりに腕を噛まれた話をした直後、小夜が戻ってきた。


「失礼します。お茶とお菓子です。

  お菓子が無かったので、菅田さんの所に・・・タイミング、悪かったですか?」


 申し訳なさそうに謝る小夜に、慌てて、そんなこと無いと言うと、安心したように微笑み、お茶とお菓子をみんなの前に配り始めた。雄介の前に置く時に、雄介が、変なアドバイスをした。

 

「小夜ちゃん。こういう時は『馬鹿な私を踏んでください』って言うんだよ」

「馬鹿な私を・・・?どういうときに使うんですか?」

「誠意を見せるとき。

  それで、その後、踏まれながら『ありがとうございます』って言うんだよ」


雄介が一生、使うことは無いと思われる言葉を小夜に教えようとする。

 

「雄介!!変な知識を小夜に教えるな!」

「いいじゃん。過保護に育てすぎると、変な男に騙されるよ」

「変な男はお前だろ!!」

「ほらほら、あんまり怒鳴ると顔が崩れちゃうよ。今より崩れたら、嫌だろ?」

「同じような顔の奴に言われたくない!!」

「あっ、やっぱり恭弥もそう思ってたんだ。俺もそう思ってたんだ。顔、似てるなぁって」

「残念なことにな」

「・・残念ってどういう意味?」

「そのまんまの意味」

 

クスクスと可愛らしい笑い声が聞こえた。

声のする方を見ると、小夜が小さな口を小さな手で隠して、控えめに笑っていた。


「・・・小夜?」


ハッと気が付いたように、小夜は小さく


「・・お二人の会話が面白くて、つい。」


とはにかみながら言った。頬がかすかに赤くなっている。見ているこっちの頬が思わず緩んだ。

 

「面白かった?じゃあ、恭弥。後でコンビ組んでM‐1狙おうぜ」


小夜の言葉が嬉しかったのか、言いながら、星が飛びそうなウインク。


「なんでだよ」

「小夜ちゃんにも認められたし・・狙えるんじゃね?

 言っとくけど、俺がクールでかっこいいツッコミで、お前がドジでバカなボケだからね」

「はいはい。 

  小夜。雄介に説明してあげて。村治家と河瀬家について」

「あっ、はい」


 突然、指名された小夜は戸惑いながらも、雄介の顔を見ながら、少し考えてから話し出した。

 自分の話を無視されたので、少し雄介は不満そうだ。




話が、なかなか進まなくてすいません!><

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