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ナズナと桃  作者: 花夜
11/13

手紙

前略。 村治清さま 


 お手紙、ありがとうございました。返事が遅れて申し訳ございません。こちらで、部屋を借りたり、職場を見つけたりで忙しく、なかなか、筆を取ることが出来ませんでした。

 清さまに、報告したいことがあります。

 生まれた子供の名前を雄介としました。笹寺雄介(ささでらゆうすけ)。姓名判断で、温かい心の持ち主で、人徳を備えています。と言われ、雄介に決めました。

 清さまのように、優しく頼りがいのある男性に育てたいと思います。         かしこ。

 

         *            *             * 


前略。 笹寺(かなで)さま


 お返事、ありがとうございます。忙しい時に手紙なんか送って迷惑だったかもと、郵便局にだした後に気付きました。後の祭りですね。笑ってください。

 実際に迷惑だったこと、謝ります。この手紙は、迷惑にならないよう、少し時間を空けてから出しました。 

 奏さまは、あの時代に珍しく名前に『子』が付かない事でからかわれたと以前、言っていましたね。だから、子供は普通の名前がいいと。

 雄介。いい名前だと思います。

 我が家にも、雄介くんの兄弟となる『恭弥』という男の子が生まれたことを知っていますよね?現在、4か月ですが、毎日、元気に過ごしています。最近、腹ばいになると、首をしっかりともち上げ胸もずいぶんもち上げるようになりました。

 近いうちに、雄介くんと恭弥を会わせたいものです。                草々 

 

          *              *            *


前略。 村治清さま。

 

 お手紙、ありがとうございます。全然、迷惑ではありません。むしろ、知り合い一人いないこの地で、私の心の支えとなっています。

 恭弥くん。もうそんなに大きくなったんですね。私も、早く会わせたいです。

 この間、雄介に「もう少ししたら、お兄さんに会いに行こうね」と言ったら、まだ、言葉も分からないはずなのにニコッと笑いかけてくれました。

 子供というのは、凄いですね。子供の笑顔、一つで一日の疲れが無くなってしまいます。

 また、清さまにご報告することが出来ました。

 今度、また引っ越しすることになったのです。理由はまだ、私の中で整理しきれていないので、説明することは難しいです。いつか、自分の中で整理できたら、ご報告したいと思います。

 落ち着いたら、向こうの住所でお手紙、書かせていただきます。           かしこ


         *              *             * 


前略。 笹寺奏さま。

 

 また、お引越しなさるのですね。もしかしたら、こちらが原因でしょうか。そうだとしたら、謝ります。

 雄介くんは良い子に育ちそうですね。奏さまに似た、優しく穏やかな人になってくれるでしょう。

 恭弥は日々、大きくなってきています。

 もう、体重なんて生まれたときの2倍以上になっています。

 妻が、動物と一緒に暮らすと優しい子になると聞いて、一昨日、子猫を花田(はなだ)さんから貰ってきました。三毛のしっぽがピンとした品のいい猫です。一昨日来たばっかりなのに、もう、我が物顔で日当たりのいい部屋の一画(いっかく)を占領しています。

 名前は、今、みんなで考えているのですが、いい名前が思い浮かびません。このままでは、夏目漱石のところの猫になってしまいそうです。いい名前候補がありましたら、教えてください。     草々

 

追伸。 奏さまの生活していた部屋は、誰も使っていません。空いていますので、辛くなったらいつでも帰ってきてください。


         




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