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ナズナと桃  作者: 花夜
10/13

雄介と恭弥2


雄介さまが楽しそうに微笑みながら、私の説明を待っている。

 そうされると、余計、話しづらいんだけど・・・。


「エッと・・・村治家のことでいいんですよね?」


雄介さまは、聞き分けのいい子供のように「うん!」と言い、そのあと、あわてて「あと、河瀬家も」

と云った。


「村治家と河瀬家ですね?

 エエッと・・・じゃあ、簡単に。

 村治家はごらんの通り、恭弥さまが現在の24代目当主になります。

 村治家は戦国時代に一帯を治めていた暴君、久迩田(くにだ)氏を追い出し、村の人々の熱い支持によって村の代表となり、その状態が今も続いています。

 それに対して、河瀬家は江戸時代の初期に出来ました(・・・・・)

「ん?」


雄介さまが反応した。


「『出来ました(・・・・・)』? どういう意味?」


「・・説明が悪かったですね。すいません。

 河瀬家という家名がついた(・・・・・・)のは江戸時代からという意味です。

 江戸時代の前から、河瀬家の先祖にあたる人々はいたんですが、その人達は、村の人々の奴隷――召使いとして生活していましたので、苗字は必要なかったのです。

 江戸時代の初期に、村治家専属の召使いを作ろうと長老が言い出したのをきっかけに、その当時、村治家の奥様と仲の良かった『ふさ』という女性――河瀬家の先祖です――が村治家専属の召使いとなりました。

 身分の高い人のお世話をするのですから、苗字が必要だろうということになりまして、『ふさ』が川の傍に住んでいたから『河瀬』という苗字を授かりました  

          ・・・・説明がへたくそですいません。細かいことは恭弥さまに聞いてください」


隣に座っている恭弥さまを見ると、恭弥さまは『よく出来ました』と言うかのように頷き、私の腕を掴み、自分の後ろに引っ張った。まるで、何かから私を隠すように。


「ほら、小夜が説明したぞ。雄介も説明しろ」


恭弥さまが雄介さまをせかす。

そういう交換条件だったとは・・。私がお菓子を買いに行っている間に話したのだろう。

 香里さまと兄さんは静かに、後ろでお茶をすすっていたが、雄介さまの説明が始まろうとしているのに気づき、少し、前に出てきた。


「分かってるよ。小夜ちゃんぐらい上手く説明できるかわからないけどね。俺、国語の成績2だから。

 エッと・・どっから話そうかなぁ。

  俺、母子家庭で育ったんだけど、この間――といっても、6か月ぐらい前だけどね――母親が死んじゃったんだ」

「・・・!!」


突然のカミングアウトに部屋の空気がガラリと変わった。涙もろい香里さまは、もう、涙目になっている。


「で、死ぬ間際に母さんから

 『死んだら、棚の中にある箱を燃やしちゃって。中は絶対にみちゃだめよ』って言われたから、 

 初めは、ちゃんと燃やそうとしたんだけど、好奇心が抑えられなくて・・・。中を見ちゃったんだ。

 その中身が・・・・・・これ」


雄介さまはポケットの中を探って、4通の手紙と1枚の写真をみんなの前に出した。

「見ていいよ」と言って、恭弥さまに投げる。

受け取った恭弥さまは、手紙を広げて、「姉さんたちにも聞こえるように読んで」と言いながら、こちらに渡した。

心の中で雄介さまのお母さまに謝りながら、文字を目で追い、読み上げる。


「前略。村治清(むらじきよし)さま・・・・」 



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