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なにもないオレたちの、なにもかもがある英雄譚  作者: くーねるでぶる(戒め)


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004 フーゴと稽古

 その後もオレたちはゴブリンを狩り、オークから逃げる日々を送っていた。


 ザシャやゲッツの報告によると、オークとゴブリンが争う様子はなく、一緒に行動していることが多いらしい。さながらオークはゴブリンにとっての用心棒みたいだ。


 ゴブリンだけが相手なら、オレたちも倒すことには慣れてきた。最近は怪我もなく倒せている。


 だが、相手がオークとなると……。


 しかし、そんなことも言ってられなくなってきた。最近狩り過ぎたのか、ゴブリンの数が少なくなり、残っているゴブリンにはだいたいオークの護衛が付くようになってしまったのだ。


 当然、ゴブリンだけを狙っているオレたちの収入は減少の一途をたどっていた。


 昨日、一昨日と赤字が続いている。


 覚悟を決める時なのかもしれない。


「なあ、やっぱりオークも狩ろうぜ? このままじゃパン粥も食べられなくなるぞ!」


 冒険者ギルドのクエストボードの前でゲッツがイライラした様子を隠さずに言う。


「それはわかっているんだけどね……」


 わかってはいる。でも、なかなか重い選択だ。


「そうね……」


 これまで一貫してオークとの戦闘を避けてきたイザベルも考え込むような仕草を見せた。


「オークの討伐報酬は銀貨五枚だぜ? もう狩るしかねえだろ!」

「何騒いでるんだ?」


 ゲッツが叫ぶように言うと、背後から声をかけられた。


 振り向くと、真っ赤な髪をモヒカンという変わった髪型にしている男がいた。肩に棘の付いたパッドを着け、反対側の方には太い鎖を巻きつけている特徴的な男だ。


「フーゴさん!」

「よっ!」


 フーゴさんは軽く手を上げて挨拶する。


 フーゴさんは、オレたちと同じ孤児院出身の冒険者だ。オレたちにとっては先輩にあたる。


「フーゴ兄! ひっさしぶりだな!」

「おうゲッツ、いい子にしてたか?」


 フーゴさんがゲッツの頭をガシガシと撫でる。


「やめろよ! もうそんな歳じゃねえ!」

「はっはっはっは!」


 相変わらずフーゴさんとゲッツは仲がいいなぁ。


「それで? 何を騒いでたんだよ?」

「オークと戦うかどうか、かな?」

「オークと?」


 デニスが言うと、フーゴさんの目付きが鋭くなる。


「オークは動きは鈍いが、その代わりに力が強いぞ? まともに攻撃が当たったら怪我じゃ済まねえ。だいたい新人冒険者の死因の二割がオークだ」


 知らず知らずのうちに喉がゴクリと鳴った。


 やっぱり現場を知る先輩冒険者の言葉は重みがある。


「問題はオークを倒すための火力と、オークの攻撃を凌ぐ盾だな。火力はイザベルの嬢ちゃんがいるからいいとして、問題は盾か……」


 フーゴさんの視線がデニスの持っている盾へと向かう。


「俺はべつにお前らがオークを倒せねえとは思ってねえ」

「そうだよな!」


 フーゴさんの言葉に被せるようにゲッツが乗っかる。


「でも、問題があるのでしょう?」

「そうだ」


 イザベルの言葉に頷くフーゴさん。その視線はやっぱりデニスに向かう。


「デニスの強化が必須だな。俺が稽古をつけてやるよ」

「あの、稽古って何するの?」


 フーゴの言葉に恐々とデニスが問いかける。


「なに、遅かれ早かれ覚えなきゃいけねえ技術だ。ちょっとデニスを借りるぜ」

「あ、ちょっと、フーゴさん!?」


 そのままフーゴさんに連れていかれるデニス。まぁ、フーゴさんだし、悪いようにはしないだろう。デニスがこれで強くなってくれるなら万々歳だ。


「まったく、いつも強引な人ね」


 イザベルは呆れたようにフーゴさんの背中を見ていた。


「俺、フーゴ兄の稽古見てくる!」

「あたしも!」


 フーゴさんの後を追うようにゲッツとザシャが冒険者ギルドの外に駆けて行った。


「上手くいくかな?」

「わからないわね。でも、悪いことにはならないでしょう」


 オレの問いかけにそう答えるイザベル。その視線はクエストボードに向かっている。


「オークを倒すことができれば、私たちはホワイトウッド級になれるわ。そしたら、他のクエスト受けることができるようになる。リスクはあるけど、私たちにとって悪いことばかりではないはず……」


 イザベルにも迷いはあるのだろう。自分に言い聞かせているように言っていた。


 オレから見て、イザベルは決断力もあるし、判断能力もあると思う。でも、優しすぎるくらい優しい少女であることをオレは知っている。キツイ口調も相手を思えばこそだ。


 だから、オレは意識して明るい口調でおどけたように言う。


「きっと大丈夫さ。それより、ゲッツとかオークを倒したら絶対肉を食べたいって言うから阻止する方が大変かもね」


 オークは二本足で立つ豚みたいな恰好をしているが、その味は豚とは似つかないほど食えたものじゃないくらい不味いらしい。しかも、毒もあるんだとか。


 でも、きっとゲッツは試してみようとか言い出すはずだ。肉に飢えてるからね。


「ゲッツは……そうかもしれないわね……」


 イザベルが困ったことだと言わんばかりにおでこを手で覆っていた。

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