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なにもないオレたちの、なにもかもがある英雄譚  作者: くーねるでぶる(戒め)


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026 新しい盾とオークキングの影響

 フーゴさんの存在は、オレたちには大きすぎた。


 ゲッツに釣られるようにみんなで存分に涙を流した。


 オレたちはフーゴさんの託してくれたお金を持って武器屋に行く。その道中はまるで葬式みたいに暗い沈黙が支配しており、道行く人々もオレたちの尋常じゃない様子にビックリしているようだった。


 重い足取りで武器屋に着くと、真っ先に盾のコーナーに行く。


「さあデニス、選んでちょうだい」

「うん……」


 敢えてだろう。明るい声で促すイザベルと相変わらず暗い表情で頷くデニス。


 デニスとしては罪悪感も感じているのだろう。


 だが、オレはデニスにそんなものを感じてほしくない。


 だから、無い知恵を絞って口を開く。


「デニス、これはフーゴさんからオレたちへのプレゼントだよ」

「プレゼント……」

「そうだ。フーゴさんはオレたちの未来を信じてくれた。その証だよ」

「うん」


 口下手なオレだけど、少しはデニスの心が前向きになればいいな。


 ふと後ろを見れば、ゲッツが複雑そうな顔をしているのが目に入った。フーゴさんによく懐いていたゲッツにはやっぱりフーゴさんのお金を使うことに抵抗があるのだろう。今はザシャに背中を撫でられて大人しくしているが、いつまた爆発するかわからない。


「これにしようかな……」


 デニスが小さい盾を手に取る。


 見れば、一番安い盾だった。たぶん、デニスもフーゴさんの残してくれた金貨を使いたくないんだ。


 その気持ちは痛いほどわかる。


 でも――――。


「デニス、そんな盾でオークの棍棒を受け止められるわけないでしょう? こっちの大きな盾から選んでくれると嬉しいのだけど?」

「でも……」


 イザベルに言われても小さな盾を手放さないデニス。


 デニスでも頭ではわかっているのだろう。でも、感情がそれを否定する。


「おいデニス!」


 その時、ゲッツが大声を上げる。


 ここでゲッツまで大きな盾を買うことに反対されると厄介だ。


「中途半端なことしてんじゃねえよ! そんなことしてると、そんなことしてたら……フーゴ兄に叱られるぜ!」


 ゲッツが涙を流しながら懸命に言葉を紡ぐ。


「ゲッツ……」


 ゲッツも懸命にフーゴさんの死を乗り越えようとしている。そのことをデニスも感じたのだろう。デニスは持っていた小さな盾を戻すと、イザベルが示した大きな盾の方に足を向ける。


 デニスもゲッツもこのままフーゴさんの死を乗り越えられたらいい。


 他人事のような感想が頭に浮かぶが、フーゴさんの死を乗り越えなくてはいけないのはオレも同じだ。


 たぶん、この先もずっと悩み続けることになるんだろう。そんな気がした。



 ◇



 デニスが起き、フーゴさんの死を告げられた次の日。


 オレたちは久しぶりに森にやってきた。もちろんオーク狩りに来たのだ。


 だが……。


「ゴブ五匹!」


 ザシャが森の中から飛び出してくる。相手はゴブリンが五匹。オークはいないらしい。


 またオークがいない。最初はそんなこともあるかと思っていたけど、ここまでオークがいないのはおかしい。


 だが、考えるのは後だ。まずはゴブリンを片付けないと。


 オレは木の裏に隠れると、そっとゴブリンたちの背後に回る。


「うおおおおおおおおおおおおお!」


 戦いの始まりを告げるデニスのウォークライ。


「どりゃああああああああ!」


 デニスに続くようにゴブリンに突撃するゲッツ。


 オレたちがオークの相手をしている間、ずっとゴブリンの相手をしていたゲッツ。そんなゲッツのゴブリン戦は圧巻の一言だった。


 大剣の一振りで二匹のゴブリンの首を刎ねる。そのまま返す大剣でゴブリンの上半身の斬り飛ばした。


 一瞬で三匹のゴブリンを片付けたゲッツ。だが、その代償に大剣に振り回されて体勢を崩してしまった。


「はああああああああああああ!」


 体勢を崩したゲッツを庇うように前に出て、ゲッツを襲おうとしていたゴブリンに新しいピカピカの盾でシールドバッシュをお見舞いするデニス。


 しばらく別々で戦っていたが、まだ二人の中で連携は息づいているみたいだ。


「当たってー!」


 ザシャの矢がゴブリンの胸を貫き、残るゴブリンは一匹。


 オレは残ったゴブリンの首を背後から掻っ切る。これで終わりだ。


「おつかれさま。もうゴブリンは私たちの敵ではないわね」


 イザベルが魔術を使うことがなくても、オレたちは五匹のゴブリンを相手に圧勝できた。それだけオレたちも成長したということだろう。


「今日はオークを見ないわね。ザシャ、オークを見かけた?」

「うーうん。今日はオークいないみたい」

「変ね……」


 少し前までなら、ゴブリンとオークは一緒に行動していることが多かった。まるでゴブリンの用心棒をオークがしていると思ったほどだ。


 だが、今はそれがない。


「狩りが終わったら、冒険者ギルドに報告しましょうか」

「そこまですることか?」


 ゲッツが不思議そうな顔をしていた。


「少し前に『バルムンク』がオークキングを倒したでしょう? もしかしたらその影響かもしれないわ」

「ケッ」


 『バルムンク』と聞いただけでゲッツが悪態を付く。


 でも、たしかにその影響は否定できないか。

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