表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なにもないオレたちの、なにもかもがある英雄譚  作者: くーねるでぶる(戒め)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/37

023 デニスの目覚めと問題

「ふぁ~……。お腹空いちゃった……」


 デニスが目覚めたのは冒険者ギルドに行った翌日のお昼のことだった。


「デニス! てめ! やっと起きたのかよ!」

「おわ!?」

「心配させやがって、このやろー!」


 ベッドの上で目を覚ましたデニスは、突然ゲッツにダイブされて目を白黒させていた。


「オレはイザベルたちに知らせてくる!」


 オレは急いでイザベルたちの部屋のドア前まで行き、乱暴にノックする。


「イザベル! ザシャ! デニスが、デニスが起きた!」


 そう言った瞬間、ドアが急に開いてオレの顔と衝突した。めちゃくちゃ鼻が痛い。鼻の奥にトロリとした感覚があった。鼻血だ。


「デニス起きたの!?」


 ドアから顔を出したザシャがオレに謝ることなく、オレの服を掴んで問い詰めてくる。


「うん。起きたよ……」

「イザベル! デニスが起きたって!」


 オレが上を向いて鼻を押さえながら答えると、ザシャがすぐに叫ぶ。


「聞こえていたわ。すぐに行きましょう!」


 イザベルの声が聞こえると、またすぐにドアが大きく開いた。


 今度はドアを華麗に避けると、オレはザシャとイザベルに続いて部屋に戻る。


「てめー、このやろー!」

「ちょ、ちょっと、ゲッツ落ち着いて!」

「デニス起きてる!」

「もう心配させて!」

「ちょっと、見てないで助けてよ!」

「ゲッツ、落ち着いて!」


 部屋の中はもう混然としていた。ベッドの上でデニスに跨り、泣きながらポカポカとデニスを殴るゲッツとそれを涙を浮かべて見ているイザベルとザシャ。デニスの叫び声と、鼻血を垂らしながらゲッツを押さえるオレ。


 ひどい混乱だね。誰かオレの鼻血の心配してくれていいんだよ?



 ◇



「えッ!? 僕、四日も寝てたの!?」


 どうにか事態を収拾させ、デニスに近況を説明していると、デニスがひどく驚いていた。


 まぁ、デニスにしたら起きたら四日も経っていたとか驚きだと思うけど、事実だ。


「どおりでお腹が空いてると思ったんだ」

「そういう問題じゃねえぞ! どれだけ心配したと思ってんだ!」

「そうだ、そうだー!」


 デニスの頓珍漢な言葉にゲッツとザシャが叫ぶ。


「信じられないでしょうけど、本当なの。デニスが倒れたのはもう四日前よ。冒険者ギルドの専門医によると、過労じゃないかと言っていたわ」

「かろう、って何?」

「働ぎすぎという意味らしいわ。たしかに私たちは休みもなく狩りをしていた。デニスが倒れてしまうのも道理だわ」

「そうなんだ……」

「四日も寝てたし、もう大丈夫ってことじゃない? 体が軽くなった気がしない?」


 オレが問うと、デニスが肩を回したりしながら体を調子を確かめる。


「たしかにすごく軽いけど……」

「まぁ、それだけ疲れていたってことだね。みんなとも話したんだけど、これからは適度に休みを入れようかって」


 四日も気を失ってしまうなんて、過労というのは怖い。それに、過度に疲れていると、簡単なことでもミスをしてしまうかもしれない。簡単なミスで命を失ってしまうのが冒険者だ。命を守る意味でも休みは重要だということになった。


「そうなんだ……」

「デニスが起きたなら、明日からまた狩りに行かねえとな! 貯金やべえんだろ?」

「あるにはあるけど、装備を整えることを考えると……といったところね」

「デニスの新しい盾も買わないとねー」

「そうだね。前のは壊れちゃったし……」


 デニスの盾は壊れてしまった。一応、鍋の蓋部分は持ち帰ったけど、スクラップに出して売るくらいしかできなかった。


 新しくデニスの盾を買う必要があるが、そのための資金もない。


 デニスに盾なしでオークの相手をしろいうのも酷だし、状況はかなり悪い。


「また鍋の蓋で盾を作る?」

「いえ、鍋の蓋だとやっぱり強度に問題があるわ。ちゃんとした盾を買わないと」

「でもでも、お金ないしー!」


 結局はそこに行きつく。オレたちはお金がない。


 かといって、せっかくデニスが起きたのに、このままこうしていても始まらないのは確かだ。


「俺の大剣を売る!」


 突然、ゲッツが叫んだ。


「大剣を売る?」


 大剣を買ってあんなに喜んでいたのに、ゲッツはそれを手放そうとしていた。その顔はやはり苦渋の判断なのか悔しそうなに歪んでいる。


「元はといえば、デニスの盾じゃなくて、俺の大剣を買っちまったのが間違いだったんだ。だから、俺の大剣を売ってデニスの盾を買おう」


 ゲッツの顔が後悔の色を帯びていく。


「今回、一歩間違えたらデニスは死んじまってた。せっかくやり直せるチャンスがあるんだ。だから、今度は間違いたくねえ」


 ゲッツの言い分もわからないでもない。あの時、デニスの盾を買っておけば、今回の事件は起きなかったかもしれない。


 でも――――。


「ゲッツが大剣を持ったから、オレたちは安心してゲッツにゴブリンの相手を任せられるんだ。だから、オレもオークの相手に集中できる。売るならオレの短剣だな」


 オレはベッドの下段の物置になっているスペースから短剣を取り出した。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ