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なにもないオレたちの、なにもかもがある英雄譚  作者: くーねるでぶる(戒め)


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019 反省会

 質素な夕食を食べたオレたちは、そのまま竈を囲うように座って待機していた。イザベルが話があると言い出したのだ。


「それじゃあ、今日の反省会を始めましょうか」


 イザベルが最期の一口を食べ終わると、さっそくとばかりに話し出す。


 イザベルの言葉にオレたちの雰囲気が変わる。ゆったりしていた雰囲気からピリッとした重い真剣な雰囲気へ。


 これまでにも反省会はしていたが、今日は少し意味合いが違う。


 デニスだ。今回、デニスは死んでもおかしくなかった。それこそ、打ち所が悪ければ死んでいただろう。


 死。


 冒険者という危険な仕事をしている以上、覚悟は必要だろう。


 だが今回、オレたちのしていた覚悟などまやかしなのだと叩きつけられた気分だ。


 仲間が死ぬ。ザシャが紛らわしいことをしたせいで、本当にデニスが死んでしまったと思った時、オレの胸に過ったのは虚無だった。なにも考えたくなかった。


 オレには自分が死ぬ覚悟も仲間の死を受け入れる覚悟もできていなかった。


 覚悟が足りないのだ。


「俺からいいか?」


 沈黙を突き破ったのは、珍しく真剣な顔をしたゲッツだった。


「みんなも見ただろ? デニスの盾が壊れたのを。デニスの盾は限界だった。あの時買うのは俺の大剣じゃなくて、デニスの盾だったんだ! デニスの優しさに甘えるべきじゃなかった! あの時、俺がわがままを言ったせいだ! そのせいで今回デニスは死にかけた! 悪いのは俺だ! 俺が悪いんだ! くそ! 上手くいかねえなあ! なんでこんなことになってんだよ! くそ!」


 最初は冷静に話していたゲッツだったが、だんだんヒートアップして自分を責め始める。拳を強く握り、憤りをぶつけるように自分の膝を叩いていた。


 思い出すのは、少し前にあったゲッツの大剣を買うのか、デニスの盾を新調するのかの会議だ。あの時、もしゲッツの大剣ではなく、デニスの盾を選んでいたら、もしかしたら今回のようなことは防げたかもしれない。ゲッツが自分を責める理由もわかる。


 でも、オレにはこれ以上ゲッツが自分を責めるのを見ていることができなかった。


 オレは、自分を殴ろうとするゲッツの拳を受け止める。


 ゲッツは本気で自分を殴っていた。鍛えているゲッツの拳を受け止めるのはとても痛かった。


 その痛さの分だけ、ゲッツの後悔が伝わってくるようだった。


「ゲッツのせいじゃないよ」

「放せよ! 綺麗事なんていらねえんだよ!」

「綺麗事なんかじゃないよ。みんなゲッツの優しさを知ってるから、ゲッツが大剣を買うことを認めたんだ。ゲッツのわがままなんかじゃない」

「俺の優しさだあ? そんなもんはねえよ!」


 そう言ってオレの掴んだ手を振りほどくゲッツ。


「あるよ。ゲッツが大剣を欲しがったのは、デニスの負担を減らすためだ。そうだろ?」

「ッ!?」


 目を白黒させるゲッツ。やっぱりオレの考えは当たっていたようだ。


「なんのことだよ?」

「しらばくれなくてもいいよ。ね? イザベル」

「そうよ。ゲッツ、あなたは天邪鬼だけど、決して悪人ではないわ。大剣を欲しがったのは、自分が強くなってデニスを守りたかったんでしょ? それくらいわかるわ。何年の付き合いだと思ってるのよ」

「えぇー!? そうだったのー!?」

「……ザシャ…………」


 イザベルが頭が痛いとばかりにおでこに手を当てていた。


 ザシャは気が付いていなかったみたいだけど、オレとイザベル、そしてたぶんデニスも気付いていたはずだ。だから、デニスもゲッツの大剣を買うのに賛成した。みんな、ゲッツのわかりにくい優しさに気付いていたんだ。


「それに、責められるべきはゲッツではなく私よ。私がもっと魔術でデニスを援護していればよかったのよ。デニスの盾が痛んでいるのを知っていたのだから、狩りを切り上げるという手もあったわ」

「イザベルのせいじゃないよ。デニスの盾がいつ壊れるなんてわかるわけがない」

「あなたたちも聞いていたでしょう? ギルドの専門医が言っていた言葉を」

「かろうってやつー?」


 ザシャがよくわかってなさそうな声でイザベルに問う。


「ええ。私はみんなを働かせすぎたのよ。狩りのペースが早すぎた。知らず知らずのうちにみんなに疲れを溜めさせていた。そんな状態ではミスも増えて当然よ。だから、私のせいなのよ」

「そんなことを言うなら、オレのせいでもあるよ。オレがもっと早くオークの後ろに回り込んでいたら、デニスの盾が壊される前に倒すことができたかもしれない」

「あたしだって! あたしがオークの顔に撃った矢を外しちゃったから!」

「待てよ! 俺のせいだって言ってるだろ! そもそも俺が大剣を欲しがらなければ――――」


 オレも含め、みんなが自分が悪いと言い始める。


 誰も他人のせいなんかにしない。オレはそのことは嬉しかった。


「じゃあ、みんな悪いってことで。自分だけを責めるのはやめようよ」

「そんなのでいいのかよ!?」

「そうよ。デニスが死にかけたのよ? それをそんななあなあで済ませられないわ」

「でも、このままじゃ自分を責めるばっかりで、誰も未来を見ないよ? とにかく、デニスは助かったんだ。まずはそれを喜ぼうよ。そして、反省すべきは反省して、次に活かそう」

「甘いわ……」


 最後にポツリとイザベルが呟く。


 オレの意見はたしかに甘いのかもしれない。でも、このままだとみんな一生自分を責めるだけになっちゃう気がした。


 今回はデニスは運よく助かった。オレはみんなに必要以上に自分を責めてほしくない。デニスだってそんなことを望まないだろう。


 だから、自分を責めるのではなく、反省して次に活かす。それでいい気がした。

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