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なにもないオレたちの、なにもかもがある英雄譚  作者: くーねるでぶる(戒め)


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014 ソーセージチーズカケターノ

 冒険者ギルドの医務室。ベッドには脳震盪と診断されたデニスが転がっている。


 ちなみにゲッツは打ち身以外の怪我はなし。薬も必要ないみたいだ。


 そしてオレの番になったのだが……。


「これは見事に完全に外れているね」


 オレの左肩を触った男はすぐにオレの肩の異常に気が付いた。


「戻りますか?」

「戻るけど。痛いよ?」

「おねがいします……いぎッ!?」


 男がオレの肩を押すと、痺れるような痛みと共にガチリと填まった感覚がした。その後は肩を回しても痛みは感じない。人間の体って意外と丈夫だ。


「あとは右頬の傷かな。一応、消毒しておこう」

「いでで……」


 忘れていた右頬の傷が沁みる。なんでか涙が出そうだ。


「彼はもう少し寝かせた方がいいね。ベッドは自由に使っていいよ。じゃあ、私は次の仕事があるから」

「ありがとうございました」

「ありがとな」


 そう言って部屋から出て行く男と入れ違いで見慣れた男が入ってきた。


「フーゴさん!」

「フーゴ兄!」

「よお! 思ったより元気そうじゃねえか。デニスの奴は大丈夫かよ?」

「軽い脳震盪だって」

「じゃあ、大丈夫だな。ここのところ順調だったじゃねえか。誰にやられたんだ?」

「ちょっとオークにね……」

「聞いてくれよ、フーゴ兄。ゴブリンのアサシンが出たんだ」


 ゴブリンアサシンと聞いてフーゴさんの眉がピクリと動いた。


「ゴブリンアサシンか……。でも、イザベルもザシャも無事だったぞ?」

「オレがゴブリンアサシンと鉢合わせになったんだ。だから、オークにバレちゃって……」

「そういうことか」


 フーゴさんはオレの説明を聞いて大体のところを推察したようだ。


「ま、今回は運が良かったな」

「運が良かった? こんなにボロボロなのに?」


 珍しくフーゴさんに突っかかるように言うゲッツ。


 だが、フーゴさんはゲッツの頭に手を置くと、ニッと笑ってみせる。


「みんな生きてる。これより上等なんてねえよ」

「そうだけどよ……。なんか俺にも技教えてくれよ。オークとか一発で殺せるやつ!」

「ふーむ……」


 ゲッツにせがまれたフーゴさんは、ゲッツの体を上から下まで観察するように見た。


「ゲッツにはまだ早えな。筋肉が足りねえ。ちゃんと食ってるか?」

「聞いてくれよ。最近、パン粥にチキンが入る日もあるんだぜ?」


 そう自慢げに言うゲッツをかわいそうなものを見る目でフーゴさんは見ていた。


「まぁ、最初はそんなもんか。デニスは起きれるか?」

「なんとか……」

「んじゃちょっと来い。肉食わしてやるぜ」

「え!」


 肉と聞いてデニスが飛び起きる。


「いいのかよ!?」


 ゲッツも喜色を隠さないにへらとした笑みを浮かべていた。


「いいんですか? その、お肉は高いし……」

「たまにはいいだろ。今日はがんばったみたいだしな。俺からの生存祝いだ。イザベルとザシャにも声をかけて食いにいくぞ!」


 そのまま歩いていくフーゴさんに遅れないようにオレたちも医務室を飛び出す。


「デニスは大丈夫なの?」

「お肉って聞いちゃったらね。這ってでもいくよ」


 冗談みたいに言ってるけど、その目は本気に見えた。


「イザベル、ザシャ、肉食いに行くぞ!」

「はい?」

「やったー! お肉ー!」


 不思議そうな顔を浮かべたイザベルと全身で喜びを表現するザシャが対照的すぎてなんだか印象に残った。


「どういうことですか?」

「今日はお前ら大変だったみたいだからな。俺からの差し入れみたいなもんだ」

「それはありがたいですけど……」

「いいから年長者の好意は素直に受け取っておけって。ほら、行くぞ」

「はい!」


 フーゴさんに付いていくと、屋台が集まる東門広場へとやってきた。スパイシーな香りや肉の脂の弾けるおいしそうな音が聞こえてくる。いつもは買えないから足早に通り過ぎるだけだったけど、今日はフーゴさんの奢りだ。


「お前ら、ソーセージチーズカケターノって食ったことあるか?」

「ねえよ! なんだよ、そのおいしそうな名前! 卑怯すぎるだろ!」


 ゲッツがフーゴさんに噛み付くように答える。


 それにしても、そのまんますぎる名前だな。見なくてもどんな料理かわかるよ。


「そうか。あれがうまいんだ。今日はそれにしよう」

「おう!」

「やった!」


 ゲッツとザシャが全身で喜びを表現している。そうだね。ソーセージなんて年単位で食べてないから期待が高まっているのだ。しかも、チーズも付いているらしい。これは期待が上がる。


「ソーセージチーズカケターノを六つくれ」

「あいよ!」


 やがて、フーゴさんが一軒の屋台の前で止まると、店主に注文する。店主が元気いっぱいに返事をしていた。


 そして、店主はいつもオレたちが食べてる黒パンより上等なパンに切れ目を入れる。そして、長い熱々のソーセージを野菜の酢漬けと一緒にパンに挟みこんで、その上からチーズをこれでもかと削ってかける。


 できあがったのは、もう見た目はチーズの塊のような料理だった。


 ソーセージの熱で上にかけられたチーズがトロリと溶け、めちゃくちゃうまそうだ。

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