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なにもないオレたちの、なにもかもがある英雄譚  作者: くーねるでぶる(戒め)


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013 辛うじての勝利

「クルトは立てそう?」

「なんとかね」


 イザベルにそう答えると、オレは立ち上がる。オレもオークに刺したダガーを回収しないと。


 そうだ。途中で会ったゴブリンアサシン。あいつから短剣も回収しよう。使い勝手が良かったら、包丁の代わりに使うのもいいかもしれない。


「あ、どこに行くのよ?」

「向こうにも短剣を持ってるゴブリンがいたんだ。ちょっと耳のついでに回収してくる」

「私はデニスたちを見てくるけど、無理しないでね」

「ああ」


 オレはイザベルにそう答えると茂みの奥に向かう。


 青い血に沈んだゴブリンアサシンを発見すると、オレは短剣を回収して、短剣でゴブリンアサシンの右耳を切り取る。左腕が動かないし、短剣の切れ味も悪いし、大変だった。


 ついでにゴブリン袋も回収する。


 袋の中身を確認する間も惜しんでオレは次にオークの死体に近づいていく。オークの太ももに刺さっていたダガーも回収した。


「今日はここまでにしましょう」


 見上げればまだ日が高い。でも、イザベルの言葉に反対の意見は出なかった。


 オレたちは勝利したが、トボトボと疲れたように城塞都市ヘーネスへの道を歩く。


「そういえば、クルトが言っていたゴブリンアサシンって何だったのかしら?」


 帰り道。ふとイザベルが思い出したように尋ねてきた。


 そうだな。この情報はみんなに伝えた方がいい。


「オレがオークの後ろに回り込もうとした時、短剣を持ったゴブリンが同じように戦場を迂回しながら進んできたんだ。たぶん、イザベルとザシャを狙っていたんだと思う。一応、これが証拠の短剣だよ」


 オレが手に持っていた短剣を見せると、みんなが息を呑む。


「マジかよ!? それでオークの後ろに回るのが遅れたのか?」

「こっわ!」

「ゴブリンにも知恵が回る者がいると聞くわ。おそらくクルトの予想通り、アサシンのゴブリンに間違いないでしょう」

「魔法使いのゴブリンは聞いたことあるけど、アサシンのゴブリンもいるんだね」


 オレは頷くと言葉を続ける。


「今回は運よく同じルートを通ってたから見つけられたけど、これからはそうじゃない場合もあると思う。イザベルとザシャにはこれからはそういうのにも注意してほしい」

「マジかー」

「なるほど。注意しましょう」


 露骨に嫌そうな顔をするザシャと何か考えるような顔で頷くイザベル。二人には本当に気を付けてほしい。


「おっとっと」

「よっと」


 何かにつまずいたように歩調を乱すデニス。それを横から支えるゲッツ。


「肩貸せよ、兄弟」

「ありがとう、ゲッツ」

「いいってことよ」


 ゲッツがデニスに肩を貸して歩く。やっぱりデニスにはまだ脳震盪の影響があるようだ。早く良くなってくれるといいけど……。


「街に着いたらまずは冒険者ギルドで怪我を診てもらうわよ」

「えー、いいって。金かかるんだろ?」

「あなたはよくてもデニスとクルトはそうはいかないのよ。クルトなんて左肩が外れてるんだから」

「マジかよ!? よく平気そうな顔して歩いてるな」

「慣れた」

「慣れるものなの?」


 ザシャが心配そうに見てくるが、オレは意外と大丈夫だ。確かに動かそうと思えば痛むが、動かさなければそんなに痛くはない。


「見えてきたわよ」


 イザベルの言う通り、だんだんと城塞都市ヘーネスの立派な防壁が見えてきた。もうすぐ着くんだな。


 ヘーネスに着いたら、オレたちはまず冒険者ギルドに行く。


「最近ゴブリンどもがうるせえな」

「下っ端が間引くのを怠ってるんじゃないか?」

「聞いたかよ? 『鉄鼠』がトレントに襲われて大打撃を受けたらしいぜ?」

「あいつら森の木に紛れてるからなぁ……」

「っぱエールのお供はソーセージチーズカラメターノだよなあ!」

「そうだな! これぞ生きてるって感じだ!」


 冒険者ギルドは今日も盛況だね。冒険者は血の気が多い者が多いから、特に高級な飲食店では入店を断られることもある。だけど、冒険者ギルドに併設された食堂は別だ。ここならどんなに騒いでも怒られることはない。


 まぁ、冒険者同士の私闘は禁じられているが、それ以外なら許されるんじゃないだろうか。


 オレたちは騒がしい食堂の横を通ってカウンターへと行く。


「こんにちは。今日はどのようなご用件でしょうか?」

「ゴブリンとオークの耳の買い取り、それと仲間を診てもらえないかしら?」

「かしこまりました。今、係りの者を呼び出しますね」


 受付嬢さんが備え付けのハンドベルを鳴らすと、のっしのっしと男のギルド職員が現れる。


「買取と治療だそうです」

「わかった。治療が必要な者はこちらに」

「ゲッツ、一応診てもらいなさい」

「えー、俺はいいよ」

「これはお願いじゃないわ。命令よ」

「ったく、リーダーは俺なのに……」


 ゲッツ、まだリーダーの座を諦めてなかったのか。そのことにちょっと驚きだ。


 男のギルド職員に付いていくと、簡素なベッドが置かれた部屋に案内される。


「まずはキミから診ていこうか。ベッドに座ってもらえるかい?」

「お願いします……」


 デニスがふらふらとした足取りでベッドに座った。

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