第8話 答えを出す者
04:32
新宿地下が、低く唸りを上げている。
壁の奥、見えない場所で何か巨大な機構が目覚めつつある気配。
東京BOMB側。
天城迅は、静かに爆弾の前に立った。
天城「……こちらから仕掛ける」
白旗が目を見開く。
白旗「おい、正気か?
それ、“向こうの期待通り”じゃない?」
久賀は否定も肯定もしなかった。ただ一言。
久賀「違う。
期待通り“に見せる”だけだ」
天城は頷き、爆弾の外装に触れず、周囲の空間へ手を伸ばす。
天城「爆弾そのものじゃない。
“問いを投げている回路”を探す」
隔壁の向こう。
黒川は通信装置を叩いていた。
黒川「くそ……まだ繋がらないか」
八木沢が、ふと気づいた。
八木沢「黒川さん。
これ……“遮断”じゃない。
周波数を“ずらされてる”」
三島が即座に反応する。
三島「合わせればいいってことか?」
八木沢は頷いた。
八木沢「理論上は。
でも……東京BOMBと“同じ発想”をしないと」
黒川は一瞬、目を閉じた。
黒川「……やるしかない」
02:10
東京BOMB側。
白旗が化学センサーを展開する。
白旗「これ、爆発性物質は最小限だ。
代わりに……“反応を伝える物質”が多すぎる」
久賀が続ける。
久賀「爆弾じゃない。
都市に“問いを流すアンテナ”だ」
天城は確信した。
天城「なら、答え方も一つ。
我々は“爆弾を解体しない”」
白旗が息を呑む。
白旗「じゃあ、どうする?」
天城は静かに言った。
天城「“書き換える”」
01:18
処理班側。
八木沢が調整を終え、通信装置を再起動させる。
八木沢「……繋がります!」
スピーカーから、天城の声が混じった。
天城(通信)「黒川。
これを解除するな」
一瞬の沈黙。
黒川「……理由を聞かせろ」
天城「解除は“敗北”だ。
これは爆弾じゃない。
“思想装置”だ」
八木沢が叫ぶ。
八木沢「残り時間が……!」
天城「時間切れを起こさせろ。
だが、“暴発”はさせない」
00:30
地下全体が震える。
爆弾の光が、最大出力に達する。
白旗が叫ぶ。
白旗「ジン!
これ、マジで危ないぞ!」
天城は迷わなかった。
天城「だからだ。
我々は“恐怖に屈しない”という答えを出す」
久賀が短く言う。
久賀「……始まるぞ」
00:00
カウントダウンが、ゼロになった。
——何も起きない。
振動は止まり、光はゆっくりと消えていく。
新宿地下は、静寂に包まれた。
スピーカーから、再び電子音が流れた。
???「……興味深い」
もはや、余裕は感じられない。
???「爆弾を解除せず、
なおかつ、爆発させなかった」
???「君たちは——
“都市側の進化”だ」
天城は答えた。
天城「次は、こちらが問う番だ」
電子音は、応答しなかった。




