第3話 渋谷地下・最初の接触
六人を乗せた特別車両が、渋谷駅前の再開発エリアへと到着した。
周囲は警察車両と自衛隊の装甲車両で封鎖され、地下への工事用エレベーターには分厚い防護シートが掛けられている。
一般人には「ガス漏れの可能性」と説明しているが、真実は誰も知らない。
黒川が隊員章を示しながらゲートを通過し、六人を導く。
天城たち東京BOMBは、久々に見る都会の混沌を、ただ冷ややかに眺めていた。
暗い工事エレベーターが軋む音を立てながら降りていく。
中では、処理班3人と東京BOMB3人が対面する形で立っていたが、会話はない。
互いへの不信感が重く沈殿している。
そんななか、白旗がふいに口を開いた。
白旗「ねぇ。こうやって一緒にエレベーター乗るの、変な感じだねぇ。
前は爆弾仕掛けて逃げてる時に、よく追われたもんだよ」
八木沢は目を細めて返す。
八木沢「その“よく追われた”側に、私はいたのよ」
白旗は楽しそうに笑った。
白旗「あ、やっぱり? あの時のビルの火薬臭、君の顔忘れられないよ」
三島が小さく舌打ちした。
黒川は静かに言う。
黒川「いいか。今日だけは、お互いプロとして振る舞え」
天城がすぐに返す。
天城「互いに裏切らなければ、問題ない」
そのやり取りの裏で、久賀だけは目を閉じてじっと息を整えていた。
まるで何かを“測っている”ように。
地下31メートル地点。
照明が最低限に落とされ、空気は湿り、静寂が妙に冷たい。
その中心に、問題の「無刻印のミサイル状物体」が横たわっていた。
全長4メートル。
艶のない黒い外装。
継ぎ目らしい継ぎ目もない滑らかな筒。
その異様な存在感だけで、誰もが本能的に“危険”を感じた。
白旗が無意識に息を呑む。
白旗「……これ、爆弾って呼んでいいのかな」
八木沢が解析用装置を広げながら答える。
八木沢「前回触れたとき、内部の反応が一瞬だけ起きたの。それ以降は沈黙。
しかし中に何が入っているか、まったく見えない」
三島が補足する。
三島「通常のX線も、γ線も、電磁波もほぼ反応しない。
まるで“内部を隠すために作られた殻”のようだった」
天城がひざまずき、指で外装に触れずに数センチの距離で手を動かす。
天城「冷えている…普通こんな密閉構造なら内部の熱がこもるはずだ。
これは…自律型冷却システムか?」
久賀も横に来て、低くつぶやいた。
久賀「いや、違う。もっと…深い何かだ。
この素材……俺でも見たことがない」
黒川が周囲を警戒しながら天城たちを見る。
黒川「触れるな。まずは観察だけだ」
天城は微笑む。
天城「わかっている。ただし、これは“爆弾”である前に“作品”だ。
作り手の思想を読まなければ、解けるものも解けない」
その言葉に、八木沢が眉をひそめた。
白旗は周囲の測定器を見て、首をかしげる。
白旗「あれ?これ……微量にだけど“上方向”に何か出てるよ?」
八木沢が計器を覗き込む。
八木沢「温度……違う、空気流……いや、これは……」
三島が険しい目つきで爆弾の上部を見上げる。
三島「おい。天井。換気口じゃない」
黒川も視線を上げた。
天井の奥。
そこだけ、微弱な空気の振動がある。
まるで——爆弾の上に“何かがある”ように。
天城が即座に声を出した。
天城「全員、後退しろ!」
その瞬間。
ゴォォォォォ……
地下の闇の奥から、鈍い音が響いた。
爆発物の上。
覗き穴のような隙間の向こうで“何かが動いた”。




