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ルカが幸せになる時〜銀髪の魔法使いは学園で恋と自分を知る〜  作者: 波音叶
入学前

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8. 雪の季・終(2月)21日④


昼下がりの医務室、一人先生の戻りを待つ。室内は静かで、休暇中のためか外にも人の気配はない。窓から差し込む光も柔らかく穏やかな時間だった。


そんななかで思ったのは――魔法を、使ってみたいということ。派手じゃなくていい。誰にも見せなくていい。ただそっと扱ってみたかった。


魔法を使うな、とは言われていない。むしろ適度な魔力の放出は大事だという話だったし、一度そう思ったら好奇心を抑えられなかった。


ルカが使えるのは、氷の魔法と闇の魔法。闇よりは氷の方がイメージがつきやすそうだ。体調も気持ちも今は安定しているから、出力を誤るようなこともないと思う。だから……少しだけ。


念のためもう一度確認しておこう。魔法は、自らの想像を具現化するもの。想像なら得意だ。"自分"は兼業のイラストレーターとして、頭のなかにあるものを沢山描き出してきた。


今ならそれを、実際に形にすることが出来る。この胸は期待で満ちていた。


「よし……。」


そっと手のひらを見つめる。頭のなかで冷たく繊細な氷の粒を思い浮かべながら、手元に意識を集中させた。


静かで優しくて美しい。ルカにはきっとそういう魔法が似合う。


その想いに呼応するかのように、この手のなかでふわりと冷気が生まれた。それから空気中に細やかな粒子が舞い上がり、キラキラと光を反射しながら形づいていく。


思い描いたのは、氷で出来た一輪の蓮華の花。透ける花びらを重ねてゆっくりと開花する。そのまま浮力を得たように宙に浮かんだ。


「わ……。」


小さく感嘆の声を上げた。なんて綺麗なんだろう。魔法が使えた、という事実とその幻想的な美しさが心を躍らせる。


もう少し、試してみたいな……そう考えて再び想像を巡らせたその刹那、医務室の扉がノックされた。咄嗟のことで返事に躊躇するけれど、ガラガラと扉が開かれる音が続く。


「……ルカ?」

「レオン?」


聞き覚えのある落ち着いた声に、反射的に彼の名前が出た。レオンだ。学園まで連れてきてくれた。


足音が近付いてくる。影が揺らめいて、「入るぞ。」の声とともにカーテンが引かれた。


「あっ……。」

「………。」


琥珀色の瞳がこちらを真っ直ぐに捉え、次に氷の花へと向けられる。彼は言葉を探すかのようにしばらく花を見つめて、やがて視線を戻した。


「……すごいな、これ。」

「そう……かな。」


誰かに見せるつもりはなかったから、なんだか恥ずかしい。素直な称賛もくすぐったかった。


魔法を解除する意味を込めそっと両手を握ると、氷の花は静かにほどけていく。細やかな粒も空気中に溶けて、あとに残るのは澄んだ空気……指先はひんやりとしているけれど、それはどこか優しい余韻だった。


「ルカは、氷の魔法が使えるんだな。」

「うん。レオンは?」


座ったまま下から見つめると、少し面食らったような顔をする。


「どうしたの?」

「……なんでもない。」


ぶっきらぼうに答えてから少し間が空いた。それから教えてくれる。


「俺が使うのは、光の魔法だ。結界とか……守ることに特化してる。」

「……レオンらしい。」


本気でそう思った。彼は出会った時から守ってくれたから。


「昨日は……ありがとう。」


そう言って微笑みかけると、またさっきと同じ表情が返ってきた。戸惑うような躊躇うような……けれどこちらから視線は逸らさない。照れているのかな?少し困って見つめ返すとすっと目を伏せた。


「大したことはしてない。それより……体調は大丈夫なのか?」

「うん、だいぶ。これからのことは明日、学園長と話すよ。」

「……そうか。」


もう少し聞きたそうな様子だ。レオンのなかで興味と遠慮が戦っているのがわかる。大人っぽく見えるけれど、そういうところもあるんだな。なんだか微笑ましく思えた。


「……記憶の、ことだけど。」


そう切り出すと瞳のなかの光が揺れる。やっぱり気にかけてくれているんだ。


「戻って、ないんだ。ただ、学園の入学試験は受けていたし、自分が……魔族との半血だってこともわかった。」


これを伝えて良いのかは少し迷った。


でも隠すことじゃない。後ろめたさを感じるのはルカに失礼だ。レオンも顔色を変えず静かに受け止めてくれる。


「そうなんだな。記憶がないのは、大変だと思う……出来ることがあったら言ってくれ。」

「……うん。」


優しさにふっと胸が温かくなる。


レオンは学園の一年生だと言っていた。ということは、次の新学期で二年生?無事に入学することが出来たら先輩になるのかな。


本当は同級生のはずだったのに……同じ空間にいられたらすごく心強いんだけどな。そんなことを考えた。

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