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ルカが幸せになる時〜銀髪の魔法使いは学園で恋と自分を知る〜  作者: 波音叶
入学前

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2/17

2. 雪の季・終(2月)20日②


二つ折りになっていたその紙を開くと、まるで待ち侘びていたかのように形を戻す。ついていた折り目が音もなくすっと消えた。


――そうだ、ここは魔法が息づく世界。


疑う余地もなく自然とそう思った。そして記された文字も見たことがない言語のはずなのに、不思議と意味を理解することが出来る。


==============================

入学許可証

名:ルカ

共通歴1716年 花の季・始の1日より

上記の者の入学を許可します

アストラ魔法学園

学園長 ロゼッタ・ミラー

==============================


ルカ。シンプルだけれど柔らかいそのニ音が、"彼"の名前。


一瞬だけ愛おしそうに呼んでくれた誰かの声が頭に浮かび、ぎゅっと胸が締め付けられるような思いがした。これはルカの記憶?掴みきれずにすぐ消えてしまう。


けれどこの書類は重要な手掛かりだ。深呼吸をしてもう一度目を通した。入学許可証……アストラ魔法学園。このアストラ魔法学園に入学予定で、そこに向かっている途中だった?


文字が読めたり"共通歴1716年"や"花の季・始の1日"という呼び方に違和感を覚えないのは、ルカにとっての常識は自分にも共有されているということなのかな。


そこまで考えて、机の端に置かれたこの世界のカレンダーを確認した。木製の台座に丈夫な紙が挟まれていて、年と季の横に30までの数字が並んでいる。1716年、雪の季・終。ということは……。


「過ぎてる……?」


思わず声に出してしまう。1年の始まりが花の季・始で終わりが雪の季・終。自然と頭に浮かぶこれが本当なのだとしたら、今年の始めにルカはアストラ魔法学園に入学しているはずだ。


それともちゃんと入学はしていて、戻る途中だったとか……?ただ学生証や生徒手帳ではなくて、入学許可証しか持っていないのが引っ掛かった。


優れない体調、少なすぎる荷物。服装だってアイボリーの長袖シャツに濃茶の細身ズボンと質素で、ボロボロではないけれど裕福でもなさそうだ。


ルカの事情も考えていたことも分からない。でも今"自分"に出来そうなことは一つだった。少なくとも学園に行けばルカを知る人がいるはずだし、色々な大人もいるだろうから、何かしらの情報は得られるに違いない。


入学許可証の末尾にある校章らしき印を、そっと指でなぞる。インクではなく恐らく魔法で刻み込まれたようなそれは歓迎するかのように優しい煌めきを放ち、それで決心がついた。


――行こう、アストラ魔法学園に。


**

「……ふう。」


あれから数十分後。困ったことに未だ出発が出来ていなくて、ベッドの縁に腰掛けていた。


気持ちはすぐにでも出発したい。ただ、体調が意識すればするほどによろしくなかった。頭を使ったせいか熱も上がってきているような気がする。


いっそもう一度眠ってしまった方が良さそうだけど、恐らく宿だと思われるこの場所には何時まで居て良いんだろう……それに次に目覚めてもこの意識のままとは限らない。なら尚の事寝てみた方がいい?


ぐるぐると思考を巡らせるうちに、部屋の扉がノックされた。


「……はい。」


少し迷ってから返事をする。ルカ個人の記憶を持たない状態で怪しまれない会話が出来るのかが不安だ。


開いた扉から姿を見せたのは、面倒みの良さそうな母親世代の女性だった。宿屋の人……かな。こちらの顔を確認すると気遣うような表情を見せた。


「ごめんねぇ。なかなか起きてこないから、心配しちゃって。大丈夫?昨日も相当疲れていたみたいだったけど。」

「あ、ええっと……。」


ああ、昨日どんなやりとりがあったんだろう。ルカってどんな風に話す子なのかな。何も知らない。


「すみません……もう、出たほうが良いですか?」


なるべく余計なことは喋らない。それがいい気がする。顔色を窺うと人の良い笑みを浮かべてくれた。


「そんなことはね、気にしないでいいのさ。一泊分の代金は頂いているんだし。ただねぇ、ここには治療が出来る人がいないから……。」

「………。」


「アストラ学園に行くんだったね?学園のほうがちゃんと診てもらえると思うよ。」

「そう、ですね……。」


歯切れの悪い答えをどう受け取ったのか、女性は少し考えてから再び口を開く。


「ちょうどいいことにね、昨日、学園の生徒が一人うちに泊まっているんだ。まだ出ていないから、一緒に行ってもらったらどうだい?」

「えっ。」

「先生を呼ばれるより恥ずかしくないだろう。一人で送り出すには心配だし、ね、連れてきてあげるよ。」


提案しているうちに、是非そうすべきだという結論に至ったらしい。こちらが答えを出す前にそそくさと部屋を出ていってしまった。


その背中を見送りながら重い頭で考える。土地勘もないし、学園まで連れて行ってもらえるのは有難い……けど、相手はどんな人なんだろう?

※気になる方のみ

【この世界の暦について】

・共通歴=西暦のような感覚です(ここはざっくり)。


基礎は現実と同じで

・1日は24時間

・1ヶ月は30日間

・1年は12ヶ月


・季節は春夏秋冬の感覚で

春=花の季

夏=陽の季

秋=彩の季

冬=雪の季です。


・各季は3カ月構成で、それぞれ始/中/終があります。

よって

3月(入学など物事の始まり)=花の季・始

4月=花の季・中

5月=花の季・終

6月=陽の季・始

7月=陽の季・中

8月=陽の季・終

9月=彩の季・始

10月=彩の季・中

11月=彩の季・終

12月=雪の季・始

1月=雪の季・中

2月(卒業など物事の区切り)=雪の季・終

の感覚で書いています。


・ですので例えば「今日は共通歴1716年 冬の季・終の20日」という形になります。


作者は世界観設定に強くありませんので、もし疑問や矛盾があっても大目に見ていただけると嬉しいです⋯!

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