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ルカが幸せになる時〜銀髪の魔法使いは学園で恋と自分を知る〜  作者: 波音叶
二年生

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19/24

19. 花の季・中(4月)13日~19日①


花の季・始が終わり、中も中ごろとなった。以前の世界でいうと4月にあたり、学園を囲む自然も一段と生き生きしている。


そんな時期に、体調を崩した。


ついにと言うべきかもしれない。入学前に校内医のアルバート先生から受けた、この身体に関する注意事項。


膨大な魔力量ゆえに体調を崩しやすいことや、半血の影響で繊細な体質であることはちゃんと頭にあって、習慣に気を付けているつもりではいた。


でも、うっかりしていたことがあった。闇の魔法だ。


ルカは珍しい二属性持ちで、一つが氷。そしてもう一つが闇で、これは本来人間が授かることはない。それを扱うのは魔族のみで、半血であるがゆえこの属性なんだろう。


使えるはずだと分かってはいてもなかなかイメージが難しくて、事あるごとに氷の魔法ばかり選んでいた。多分怖かったんだ。暗く底知れない印象を抱いてしまう節がある。


健康診断でもどちらの魔力も適度に放出する必要があると言われていたのに、ここまで大丈夫だったからと後回しに……。


それで昨晩、真夜中に急に発熱してしまった。呼吸も上手く出来なくて焦って、同室のレオンがすぐ異常に気が付き先生を呼んでくれたことで助かった。


魔力過多の症状は想像以上だ。身体の内側で何かが暴れ回るような感覚で、痛くて苦しい。アルバート先生の光魔法のお陰もあって一番辛い時は過ぎたけれど、アルバイトにも授業にも出られなかった。


学園で目覚めた時と同じ保健室のベッドの上、一人小さく息を吐く。


――闇の魔法と、向き合わなければと。


そういうわけで体調が回復した数日後、授業を終えた後でレオンに声を掛けた。


「あのさ、レオン。この後……魔法の練習に、付き合ってほしい。」


その申し出にわずかに目を見開く。想定外だったらしい。


「……俺にか?」


低い声に問われて頷いた。彼は判断が的確だし守りの光魔法が使える。誰も危険な目に合わせたくない一方で一人は心細く、近くに居てくれるのであれば心強かった。


「なに?自主練すんの?」


テオが横からひょいと話に入ってくる。最初はこの距離の近さに戸惑ったけれど、今では肩を組まれるのにも慣れた。


「うん。でも、闇魔法の練習だから……。」

「俺も自分の身は守れるけどな。あー、でも……。」


オリーブグリーンの瞳がレオンの方を見る。つられて視線を向けようとすると、セルジュから声が掛かった。


「テオ、俺らはまた今度にしよう。人が増えるとルカも気を遣うだろ。」

「だな。んじゃ、先に寮戻るわ。」


そう言って二人であっさりと教室を出ていく。なんとなくその背を見送ってから、席に座ったままのルームメイトに再び話しかけた。


「えっと……どうかな。」


練習室の予約は済ませている。魔法練習の専用施設で、異常があった場合に知らせる装置も備えた場所だ。


こちらを見上げたレオンはふっと頬を緩め答えた。


「……俺で良いなら。」


**

二人で訪れた練習室は、本校舎から隔離された別棟にある。


広さは教室程度で天井が高く、魔法への耐久性に優れた特別な石で造られているらしい。足を踏み入れるとふっと空気が変わった。


目的別に分かれている部屋のうち、今回は魔法による防御の練習に特化しているのを選んだ。練習相手は無生物の固定された水晶だ。魔法陣に触れて起動すれば衝撃波で攻撃してくるけれど当たっても痛みは軽度で、危険がないように指示も組み込まれている。


「まずは起動せずに、形にする練習からだな。」


そう言ったレオンの右の(てのひら)から、ふっと光の球体が生まれる。宙に浮かんだそれは彼の手を離れると、ある程度の距離のところでぴたりと止まった。


「闇の魔法での防御は……弾くよりも、呑み込むイメージで合っているか?良ければこれを使ってくれ。」

「……うん。ありがとう。」


闇は魔族だけが扱うため、身近な魔法ではないはず……まるで予習していたみたい。でも段階を踏んで練習するべきなのは確かだし、対象があるのは有難かった。


一度ゆっくりと深呼吸をする。やっぱり緊張してしまうな。


そのまま意思を込めたつもりで手をかざしても、霧のように微かな闇が散るだけだった。


「………。」


それもそうだ。だって自分のなかでイメージが出来ていない。闇を形にするって、どういうことなんだろう?


もう一回、と再び腕を伸ばしても結果は同じ。


「……ルカ。」

「……ん。」


出来ないところを間近で見られるのは少し居心地が悪い。誘ったのは自分なのに。


一方のレオンの態度はいつもと変わらず、そのままの口調で静かに言った。


「俺は……夜が好きだ。」

「え?」


反射的に聞き返してしまう。真面目な彼はもう一度繰り返してくれた。


「俺は、夜が……好きなんだ。」

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