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ルカが幸せになる時〜銀髪の魔法使いは学園で恋と自分を知る〜  作者: 波音叶
二年生

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15/17

15. 花の季・始(3月)1日〜15日


ついに花の季に入り、アストラ学園二年生としての日々が始まった。


事前に支給された教科書を見た時から思っていたことで、物語や古い文献の読解、学園があるハルモニア王国の地理歴史など、自分がいた世界の中学高校に近い授業も多い。一方で薬草学や魔法薬基礎、魔法実践などもあって、毎日が驚きと学びの連続だった。


レオン以外に親しい友人も出来た。気さくで率直な性格のテオと、落ち着いていて穏やかなセルジュ。ルカの容姿では予想通り人目を集めてしまうものの、レオンと二人がよく近くに居てくれるお陰で思っていたよりは気にならない。


それに、身の振り方も徐々に掴めてきた。


肩肘を張らずに自然体でいること。取り繕わずに変な遠慮もしない。背筋を伸ばして前を向く。そのうえで柔らかく応対していると、"いきなり現れた特別な人"から、"ルカという一人の男子生徒"として接してくれる人が増えてきていた。


ルカの居場所をちゃんと作りたい。その思いが自分を導いてくれている気がする。


ただ、一年生の授業に参加するのは未だに緊張する。異例の先輩の扱いには皆戸惑うようで、距離を縮めるのは難しそうだ。無理もないよね。一年生の授業にはアリシアもいたけれど、異性というのもあって特に交流はなかった。


ただ頭のなかに、アリシアとの小さな約束は残っていた。


図書館で出会ったあの日、彼女が借りた物語。約束というほどのものではないかもしれないけれど、「僕も読もうかな」の言葉を覚えてくれているような気がする。


だから15日になった放課後、テオ達の誘いを断って一人図書館へと向かった。


**

図書館は今日も静かだった。


休暇中よりは人が多いものの、この静寂は暗黙の了解で守られている。何度来ても居心地が良いな。人目を避けるように棚を巡りながら、広い館内をゆっくりと歩いた。


そうして――アリシアはそこにいた。


柔らかな金色の髪が揺れる。ローズピンクの瞳にふわりと光がさして、その可憐さに思わず息を呑んだ。


「……ルカくん。」


控えめに発された声には嬉しさが滲み出ている。


「えっと……話すのは、久しぶりだね。」


そう答えると少し困ったように笑った。手に持っているのはあの時の紺色の本だ。


「授業では見かけていたけど、なかなか……。ねえ、良かったら外で話さない?」

「……うん、いいよ。」


頷くとほっとしたような様子を見せる。素直な子だな。


向かったのは図書館の外に設置されたベンチだ。学園を囲む森に面していて、今の時期は気温もちょうどよく心地いい。それでいて学食やカフェテリア、寮の談話室よりも静かな穴場だった。


身体が触れないように気を付けつつ、並んでベンチに腰掛ける。


「………。」

「………。」


二人して次の言葉を探した。アリシアの方が先に口を開く。


「……あの、ね。この本を借りた後で、こんなものが挟まってたの。」

「ん……紙?」


差し出された一枚の用紙を受け取って眺める。そこには簡略的に文字が並んでいた。


==============================

本を愛する生徒へ

学生アルバイトを募集しています


授業前の朝の時間帯、 

図書館で働きませんか?

毎日でなくても問題ありません


興味のある方は

司書までお声がけください

==============================


「ええ……。」


小さく声が出る。まさかの求人だった。


「募集……しているのかな?」


問いかけるアリシアの声は少し弾んでいる。期待してしまうのは自分もそうだ。でも、本当なのかな。


「変わった募集の仕方だ。悪戯の可能性も……。」

「そうだよね……。」

「………。」


二人で顔を見合わせる。"本を愛する生徒"同士、考えていることは多分同じだった。


「聞いてみる分には……良いよ、ね?」


上目遣いで見上げられてドキッとする。彼女は無意識だろうから、平静を装って頷いた。


「聞いてみよう。……一緒にいいかな?」

「うん、もちろん。」


そうしてベンチから立ち上がり、図書館のなかのカウンターを目指す。内心ワクワクもしていた。


もしもこの求人が本当なのだとしたら、応募しない手はない。ちょうどアルバイトはしたいと思っていて、それが好きな場所での仕事でなら最高だ。


早足で少し先を歩くアリシアもきっと、それを望むだろうと思った。

次回更新は水曜を予定しております!

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