14. 雪の季・終(2月)25日③
いつもより少し短めです。
ネクタイの結び方を知らないことを申し出ると、レオンが隣で実演しながら教えてくれることになった。
ベッドの端に並んで腰掛ける。――思ったよりも近いな。肩が触れてしまいそうなほどの距離に戸惑った。
意識しているのは多分、自分だけ。彼は手を動かしながら淡々と説明してくれた。
「まずここを持つ。それからこう折って……そうだ。」
「えっと……。」
そんなに難しい動きではないはずなのに、途中で指の動きが分からなくなり止まってしまう。とけてくれない緊張のせい、なのかな。
次の瞬間、レオンの手がすっと伸ばされる。
「……こうだな。」
「……っ……。」
触れる指先。すぐ傍にある体温。ドキッとして勝手に鼓動が速くなる。でも、悟られちゃだめだ……なんとか平静を装って同じトーンで言った。
「……なるほど、わかった。」
「なら良かった。」
返ってくる声は変わらずに落ち着いている。ゆっくりと手が離れて、つられるようにその横顔へと視線を向けた。
綺麗だな、と素直に思う。骨格が整っていて鼻筋も綺麗だからよく映えるんだ。ずっと見ていられそうだけど目が合う前にそっと逸らした。
そうして無事に、自分の胸元でネクタイが完成する。
「覚えられたか?」
「大丈夫そうだ。……ありがとう。」
少し緩めて形を崩さずに残しておくことも出来るし、お陰で大体は分かった。笑いかけるとレオンは一瞬だけ言葉に詰まる様子を見せる。それから一拍置いて視線を落とした。
「……また、分からなくなったら言ってくれ。」
「……うん。」
彼の耳が少しだけ赤くなっているのは気のせいか、室温のせいか。深く考える前になんだか自分の方が恥ずかしくなり立ち上がった。傍に置いていたケープ型ジャケットを羽織って振り返る。
「どうかな?」
「………。」
しまった。空気を変えるつもりだったのに、まるで恋人に似合っているかを聞いているみたいに……。こちらが撤回するよりも早く、小さく息を吐いてから言った。
「似合ってる、と思う。」
それだけ言ってすぐに目を逸らされる。
「ありがとう……。」
ああ、このぎこちない雰囲気は完全に自分のせいだ。逃げるように脱衣所へと戻った。
全く意識しないのは、なかなか難しいな。まだ少しドキドキする胸を抑えてふうっと息をついてから、鏡を確認する。
――そこにいたのは、洗練された制服に身を包む、大人になりかけの美少年。
濃紺のケープに白い肌と銀髪がよく映える。夜空のようなナイトブルーの瞳色とも調和していて、身体の線に沿って仕立てられている為かスタイルの良さも際立っていた。
これまで簡単な服装でも十分に綺麗だったルカが、やっと完成されたかのようで……すごく似合っている。自分に見惚れるというよりは、ただルカの美しさを事実として教えられるような感覚だ。
この世界で目覚めたあの時と同じように、細く長い指先でそっと頬をなぞる。そこにある意識はやはりルカではなく"自分"のものだった。




