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ルカが幸せになる時〜銀髪の魔法使いは学園で恋と自分を知る〜  作者: 波音叶
入学前

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13/20

13. 雪の季・終(2月)25日②


図書館で出会った彼女はアリシアと名乗った。


人けの少ないこの場所に訪れた本好き同士、お互いに親近感を抱いてるのか会話が続く。図書館を探検していたと言ったら、アリシアは嬉しそうな笑みを浮かべながら応えた。


「私も、ルカくんと同じ。こんなに沢山の本に囲まれたことはなくて……そうしたらこの棚で、ずっと読んでみたかった本を見つけて。」


敬語はいいよ、と言ったけれど、この子に"ルカくん"と呼ばれるのはなんだかくすぐったい。どの本なのかと聞くと棚の少し上の方に視線を向けた。


「あの、紺色の背表紙の……護りたい人、っていうタイトルなんだけど。」

「惹かれるタイトルだね。……取ろうか?」


アリシアが背伸びして手を伸ばして、届くかどうかくらいの位置にある。館内で何回か踏台を見かけたから、高い位置にあるものはそれで取ってということなんだろう。


頷くのを確認してすっと手を伸ばす。指先が簡単に背表紙に触れて、それでふと思った。


――ああそうか、自分は男なのだと。


頭ではずっと分かっているけれど、こんな風に実感するのは初めてだ。こちらを見上げる形で話すアリシアを、異性として意識してしまう自分がいた。本を渡す時も手が触れないように気を付ける。


「……ありがとう。」


お礼を言った彼女の声は少し緊張しているようにも聞こえた。この空気はなんだろう。胸がソワソワして慌てて次の言葉を探す。


「それ、どんな話?」

「えっと……強く在りたいヒロインと、彼女を護りたいヒーローの話、かな。すれ違いが切なくて、でも繊細で優しいストーリーみたい。」


教えてくれた声と表情は物語を愛する人のそれだった。すごく共感ができる。


「僕も……読んでみようかな。」


そう言うとパッと表情を輝かせた。分かるよ、語り合う相手がいると楽しいよね。


「嬉しい。そうしたら先に借りて、次の15日頃には返却するね。」

「うん、でも慌てないで。」

「ありがとう……。」


ローズピンクの瞳がじっとこちらを見つめた。戸惑うような期待するような、そんな煌めきを宿している気がする。それから小さな唇で独り言のように呟いた。


「なんだか……。」

「ん?」

「ううん、なんでもないっ。」


視線を逸らして背を向ける。それからゆっくりと振り返った。


「これを借りて、今日は寮に戻るね。また一年生の授業で……なのかな。」

「そうだね、よろしく。」


くすぐったそうに笑うアリシアはやっぱり可愛らしかった。胸のうちにふわりと優しいものが灯る。


去っていく後ろ姿を見送りながら考えたことは――これが、男である"ルカ"の感情なのかということ。それとも"自分"が自然と感じたもの?


今の気持ちに名前をつけるのは難しい。ルカは関係なく、"自分"がアリシアの感性へ抱く共感や親しみのようにも思えた。


ルカとしての学生生活……これから色々な気持ちに出会いそうだ。


**

寮の自室に戻るとレオンもいた。こちらの姿を認めるとふっと表情を和らげる。


「……どうだった。」

「思った以上に、本がいっぱいで。楽しかった。」

「そうか。さっきフィル先生が来て、制服が届いたぞ。」


レオンに言われて壁を見ると、フックに真新しい制服が掛かっていた。


採寸の時にも目にしていたけれど、魔法学園感があって心が躍るデザインだ。特に目を引くのが濃紺のケープ型ジャケットで、肩から羽織り金色の留め具で軽く留める形になっている。


その下に着るのはシンプルな白色のシャツ。ネクタイは学年別で色が決められているらしく、二年生は深みのある赤色だった。細身のズボンはグレーをベースにしたチェック柄で、控えめな銀のラインがおしゃれに見える。


「着てみようかな……。」


思わず口に出してしまう。"ルカ"が着たところをちゃんと見たかった。


「良いんじゃないか。」


レオンの頷きが後押しになって脱衣所へ向かう。


相手の着替えが視界に入るのには慣れても、自分の着替えを見られるのは未だに恥ずかしかった。……同い年の男の子同士にしては、気にしすぎに映るかもしれないけど。今のところ指摘されたことはない。


ズボンを履き替えて白シャツに腕を通す。ボタンも留めてネクタイを手に取り、そこで気がついた。


ネクタイって……どうやって結ぶんだっけ。OLにそんな機会はないし、ルカの身体も覚えていないみたいだ。学園に通うのが初めてだったら無理もないか。


とはいえこれから毎日身につけるものだ。ネット検索なんてものはないし、人に教えてもらって覚えるしかない。ひと呼吸おいて部屋へ戻り、レオンへと助けを求めた。


「あの……ネクタイって、どう結ぶのかな。」

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